非常に難解な設問であるが、シンプルに考えていこう。肝不全においてはタンパクの合成が障害されアルブミンが低下する。アルブミンの低下は膠質浸透圧(血管内に水分を引き付けておく力)の低下をまねき、血管内の水分は腹腔や間質に逃げ、腹水や浮腫が起こる。腹水や浮腫がなぜほっておくとよくないかは詳述しないが、本症例のような非代償性の肝硬変においては①塩分制限②利尿薬、腹腔穿刺③アルブミン補充などにより対応する。
① については塩分制限だけを行うよりも血管内脱水を輸液するなかで解消し ていく必要がある。
② 利尿薬も血管内脱水を輸液で解消するなかで行っていく必要がある。
③ 高アンモニア血症があるなかで、アルブミン補充を行うには輸液が必要と考えられる。
① ~③よりできるだけサードスペースに逃げない血管内にとどまりやすい、いいかえると細胞内にも一定の割合で分布する輸液組成を選ぶ。
生理的食塩水が細胞外液のみに分布するのに対し、5%グルコース液は細胞内・細胞外に均等に分布する。よって生食よりもできるだけ5%グルコース液の割合の高い輸液組成を選ぶ。
a 3号液である。生食と5%グルコースが1:3で混合されている。細胞外液をふやしすぎず、腹水や浮腫をできるだけ悪化させずに血管内脱水を解消することが期待できるため輸液として適切である。よってaが○。
b 2号液である。生食と5%グルコースが1:2で混合されている。3号液に比べると生食に近く細胞外液をふやしてしまうため腹水・浮腫の悪化防止と血管内脱水の解消において3号液に及ばないと考えられる。よってbは×。
c 1号液である。生食と5%グルコースが1:1で混合されている。細胞外液にとどまる量が多く、腹水・浮腫をさらに悪化させる一方、血管内脱水の解消はそこまで期待できないと考えられる。よってcは×。
d リンゲル液である。組成からほとんど細胞外液のみをふやすため腹水の悪化をきたすと考えられる。よって輸液としては不適切であり、病態のさらなる悪化をまねくと考えられる。ゆえにdは×。
e 生理的食塩水である。組成から細胞外液のみをふやすと考えられる。腹水悪化や浮腫の増大といったさらなる病態の重症化をきたすため輸液としては選ぶべきではない。(禁忌)ゆえにeは×。