全国で活躍する女性医師

2019-10-31

石巻赤十字病院

全国の赤十字病院の中から、宮城県の石巻赤十字病院にお伺いしました。研修のプログラム、1日のスケジュールなど、現場の声が聞けるインタビューです。

石巻赤十字病院
 田上 可桜先生 産婦人科
石巻赤十字病院 産婦人科 田上 可桜

田上 可桜 先生 プロフィール

2010年
高知大学卒業
2010年
東京大学医学部附属病院 初期臨床研修医
2012年
同院 麻酔科勤務
2013年
登米市民病院 麻酔科勤務
2015年
石巻赤十字病院 産婦人科勤務

現在に至る

加盟学会・専門分野など

日本産婦人科学会専門医
日本内科学会認定内科医
麻酔科標榜医
日本医師会認定産業医

現在の勤務内容

石巻赤十字病院の産婦人科医として活躍中!
これまでの勤務歴
大学を卒業後、実家のある関東に戻り初期研修を行いました。東日本大震災後、外科医をしていた主人がボランティアで関わらせて頂いた登米市(宮城県)で地方の医師不足を解決するために診療所を開設しました。そのご縁で私も一緒に宮城に移住し、登米市民病院での勤務を経て2015年から石巻赤十字病院に勤務しております。

田上先生のある一日

田上先生の診療方針

常に「自分の家族だったらどうするか」という気持ちで
昨年、父を癌で看取った経験からより患者さんやそのご家族の立場を考えるようになりました。厳しい予後を告げられる際の絶望感や、何か出来ることはないか藁にもすがる思いで病院や治療法を模索する焦燥感、大切な家族を失う喪失感、その時感じた様々な感情はこれからも決して忘れてはいけないと思っています。常に「自分の家族だったらどうするか」という気持ちで患者さんの想いに寄り添った診療を心掛けていきたいと思います。
産婦人科医を志した理由

女性の一生に寄り添い、幅広い分野の勉強ができることに無限の可能性を感じて

女性の一生に寄り添いながら周産期、婦人科腫瘍、生殖医療、女性医学と幅広い分野の勉強ができることに無限の可能性を感じました。
また主人の仕事で一緒に宮城に移住し地域医療に携わることが出来た時間も自分の将来を見つめ直すきっかけになりました。 地方では少子、高齢化が進んでいますがそんな中で地域をつくっていくことは、その場所の未来を作っていく人を育んでいくことであると感じています。
安心して出産できる環境があること、様々な場所で次世代へ繋いでいく手助けのできる産婦人科の仕事にとても魅了を感じました。


田上先生に直撃!
Q  &  A
Q1
医師として影響や刺激を受けた先生はいらっしゃいますか
A1
産婦人科になって最初に指導して下さったオーベンの先生です。患者さんに対して常に真摯で、困ったときは必ず私達後輩医師を助けて下さり守って下さる正に理想の上司でした。自分が後輩の先生達と手術に入らせて頂くようになって、その責任の重さや怖さを感じるようになり初めて分かるようになったことですが、当時何も出来なかった私にどんどん執刀の機会を下さり、一から指導して下さったオーベンの先生には本当に感謝しています。
Q2
日赤で実現した仕事やキャリアを教えてください
A2
東日本大震災時、災害医療の前線基地となった当院は、地域医療の最後の砦として現在も宮城県北東部の医療を支えるべく奮闘しています。私の産婦人科医としてのスタートは、ここ石巻赤十字病院で最初の2年は週末を含めると週2-3回の当直を行なっていました。大変だと感じることもありましたが、その分毎日毎日にドラマがあり濃密で楽しい時間でした。同時期に相談し合い、切磋琢磨しながら一緒に働いた同僚は今でも大切な戦友で時々近況報告しあっては励まされています。症例数に関しては、二人で分け合っても産婦人科専門医取得に必要な症例数を1年で十分集めることが出来る充実ぶりでした。
医師として自信をつけるためにはある程度の期間仕事に没頭し、経験を積むことも大切だと思います。産休、育休中と臨床を離れた間、不安になったこともありましたが、復帰後もあの時の時間が自信となって自分を助けてくれているように思います。
Q3
これまでの医師キャリアにおいて、一番印象に残っている出来事を教えてください
A3
産婦人科医になりたての頃、東日本大震災でお子さんを亡くされた家族のお産に関わらせて頂く機会がありました。無事に出産され、そのお母さんが『ただ元気で生きてくれていたらそれだけで嬉しい』と涙ながらにおっしゃっていた言葉がとても印象的でした。新しい希望をつなぐ場に立ち会うことができる産婦人科の仕事を改めて素晴らしいと思いました。
Q4
ご自身が女性医師という立場で苦労された経験などはございますか
A4
幸いありません。息子が産まれてからも仕事と育児の両立ができるように働きやすい環境を提供して下さっている職場の上司にはとても感謝しています。
Q5
福利厚生など、日赤の働きやすさはどのようなところにありますか
A5
当院の場合ですが、院内保育園の充実がとても有り難いです。院内保育園といっても、病院から少し離れた敷地にあり広い園舎に園庭もあります。病児保育もあり、よっぽど具合が悪い時以外はお願いすることができるので大変助かっています。また当院の小児科部長のご好意もあり、病児保育に預ける場合は就業時間前に特別枠で診察して頂くことができるので安心してお願いすることができます。こどもの具合が悪い時くらいは傍にいてあげたい気持ちもありますが、一度発熱すると中々本調子に戻るまで時間がかかり、その都度お休みを頂くわけにもいかないので当院の制度には本当に助けられています。こどもを安心して預けられる場所がある、働く母親にとっては何よりも有り難いことだと思います。
Q6
ワーク・ライフ・バランスをどのように実現していらっしゃいますか
A6
毎日が綱渡りでまだまだ手探りなので実現できているのか分からないのですが(笑)。
出産後、女性がワークライフバランスを実現するためには「職場の理解」、特に「一緒に働く人たちの理解」が必要だと思います。周囲に理解して頂くには甘え過ぎない姿勢も大切だと思っています。完全に実践できているかは自信がありませんが、時間的制約がある分、勤務時間は頼まれる仕事も含め、自分にできることを探して率先して行うように心がけています。頼ってばかりでは頼られる先生も疲弊してしまうと思うので、できる努力を最大限した上で、できない部分は素直に認めて助けて頂く、その際に感謝の気持ちを忘れないように、代わりに自分が出来ることは何か常に考える姿勢は大切にしたいと思います。
また出産後復職してからは隙間時間も意識するようになりました。パソコンは子どもにとっては格好の遊び道具のようで、息子は私が自宅でパソコンを開くとおもちゃを置いて一目散にやってきてキーパッドを叩くので自宅ではパソコンが開けません(笑)。以前は当直の待機時間や自宅に戻ってゆっくりやろうと思っていたことも、手術と手術の間、病棟業務の間など隙間時間を使って、書類仕事を終わらせたり、調べ物をしたり時間の使い方が少しは上手になったような気がします。
Q7
趣味などプライベートの楽しみについて、座右の銘などがありましたら教えてください
A7
平日は中々ゆっくり息子と遊ぶ時間がないので、その分休日は息子のリクエストに応え、べったり家族一緒に過ごすのが楽しみです。夫と息子が仲良く遊んでいる姿を見守っている時が一番の癒しです。毎週毎週出来ることがどんどん増えていくので成長を嬉しく感じています。
また職場の上司やスタッフ含め皆とても仲が良く、美味しいお店を開拓してはご飯に行くのが日常の楽しみです。
Q8
女性医師という立場でよく感じる、考えることなどはありますでしょうか
A8
自分がサポートしてもらって有り難かったことや嬉しかったことはこれから同じ経験をする後輩たちへ還元していきたいと思っています。
代わりにもっとこうなったら良いのにと思う部分については、今まで女性医師の諸先輩方が少しずつ道を切り開いて今働きやすい状況を作って下さっているように、自分たちの世代でも一歩前に進めていけたらと思います。

田上先生のこれからのチャレンジ!

ライフステージを最大限楽しみながら、そこでの学びを患者さんに還元していきたい

以前本で読んだ『最大の投資はどんな環境でも生き残っていけるように自分自身に投資すること』というフレーズがとても印象に残っています。組織で働く以上、制約がある中で貢献するにはプラスαの魅力が必要だと思います。産婦人科は周産期、腫瘍、生殖医療と分野も多岐に渡り、学べば学ぶほど興味が尽きることがありません。ゆっくりではありますが、これからも勉強を続け自分の強みとなるような専門性を高めていきたいと思います。

また産婦人科というのは、妊娠、出産、ヘルスケアなど女性のライフステージに寄り添う職業です。自分が女性として、そのライフステージを最大限楽しみながら、そこでの学びを患者さんに還元していきたいと思います。

医学生・若手医師にメッセージ

やりがいや喜びを感じる瞬間がたくさんあります

医師は大変な仕事ですが、偶然病院でお会いしたお母さんに「先生に取り上げて頂いた子がこんなに大きくなりました!」と声をかけて頂いたり、長期的に関わっている患者さんが元気になっていく姿がみられ「先生に診てもらって本当によかった」とおっしゃって頂いたり、この仕事をしていなかったらきっと知らなかったやりがいや喜びを感じる瞬間がたくさんあります。

私もまだまだ道半ばですが、真剣に向き合うからこそ得られる喜びもあると感じています。女性医師のみならず、医師全体が疲弊せずに常に患者さんのために尽力できる環境を模索し一緒に努力していきたいと思っています。

病院アピール

「世界一強く、そして優しい病院」を目指して

概要

名称 石巻赤十字病院
院長 石橋 悟
所在地 〒986-8522
宮城県石巻市蛇田字西道下71番地
敷地面積 84,066.86㎡
建築面積 53,759.26㎡
病床数 464床(一般420床、ICU・CCU10床、HCU6床、救命救急センター24床、感染4床)

診療科目

内科、神経内科、精神科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、腫瘍内科、外科、乳腺外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、整形外科、形成外科、小児外科、産婦人科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科、緩和医療科、放射線診断科、放射線治療科、救急科、消化器外科、歯科、歯科口腔外科、病理診断科

主な施設認定

労災保険指定医療機関
生活保護法指定医療機関
結核指定医療機関
原子爆弾被爆者一般疾病医療機関
救急告知病院
宮城県地域災害医療センター
第二種感染症指定医療機関
脳死に係る臓器提供施設
へき地医療拠点病院
臨床研修病院
宮城県地域周産期母子医療センター
がん診療連携拠点病院
地域医療支援病院
救命救急センター(24床)
日本医療機能評価機構認定病院 一般病院2、3rdG:Ver.1.1
母体保護法指定病院
JCI(Joint Commission International)認定病院
原子力災害拠点病院
遺伝性乳癌卵巣癌総合診療連携施設

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