初期研修インタビュー

2023-11-01

社会医療法人緑泉会 米盛病院(鹿児島県) 初期研修医 中夷黎先生、安田直嗣先生 (2023年)

社会医療法人緑泉会 米盛病院(鹿児島県)の初期研修医、中夷黎先生、安田直嗣先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

社会医療法人緑泉会 米盛病院

〒890-0062
鹿児島県鹿児島市与次郎1-7-1
TEL:099-230-0100
FAX:099-230-0101
病院URL:https://www.yonemorihp.jp/

中夷先生の近影

名前 中夷(なかえびす) 黎(れい)
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 鹿児島県鹿児島市・鹿児島大学 / 2022年

安田先生の近影

名前 安田 直嗣(なおつぐ)
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 鹿児島県鹿児島市・鹿児島大学 / 2023年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

中夷先生
 よく覚えていないのですが、幼稚園のときから人を助ける仕事は格好良いなと思っていて、医師になるのだと言っていました(笑)。
周囲に医師もいませんし、親から勧められたわけでもないので、家族も驚いたそうです。

安田先生
 高校1年生のときに祖父が亡くなったのですが、病院にお見舞いに行く機会が何度かありました。祖父の身体に色々なモニターが繋がれていても、祖父の身体に何が起こっているのかが全く分からず、自分が何もできないことを嫌に感じたのがきっかけで、人を助ける仕事に就きたいと医師を目指すようになりました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

中夷先生
 バドミントン部のほか、宇宙医学のサークルにも入っていました。コロナ禍になり、オンラインも普及したので、全国の人たちと繋がろうと宇宙医学のコミュニティに参加して、勉強会やウェビナーを企画・運営していました。医学部にいると、特に地方では狭いコミュニティになりがちですが、そういう機会があったことで、色々な人に出会うことができました。

安田先生
 部活動です。私は幼稚園の頃からサッカーをしており、大学でも続けました。3、4年生のときはキャプテンを務め、チームをどうまとめるのかを考えていたことが特に思い出になっています。ただ、キャプテンのときや5年生のときはコロナ禍で大会が中止になったのが残念でした。最後の年はサッカーをしたかったですね。

大学卒業後、研修先を米盛病院に決めた理由をお聞かせください。

中夷先生
 4年生のときに病院説明会で米盛病院を知り、そこで「君たちの代から初期研修を始めるよ」と聞いたんです。それで5年生のときに見学に行き、とてもいい印象を受けました。
当時は病院の設備や救急車の搬入件数などを見たり聞いたりしても、何を決め手に病院を選べばいいのか分かりませんでした。
でも米盛病院に見学に来たときにお話しした先生方が格好良く、こんな先生みたいになりたいなという先生にもお会いできたことがきっかけとなり、米盛病院に決めました。やはりメンターや憧れの先生がいることが決め手になると思います。

安田先生
 私はもともと救急に興味があったので、多くの救急患者さんを診られる病院で研修したいと思っていました。
鹿児島出身なので、米盛病院のことは以前から知っており、救急車での搬入件数が県内トップクラスであること、基幹型の臨床研修病院になったばかりだということも聞いていたので、多くの患者さんを診たいと考え、米盛病院を選びました。
見学では施設がとても綺麗で、明るい先生方が多いなという印象を受けました。
最初は見学生だけに明るく接していらっしゃるのかなとも思ったのですが、入ってからも全く変わらないです(笑)。
面白い先生方ばかりで、楽しい研修医生活を送れています。

米盛病院での初期研修はイメージ通りですか。

中夷先生
 イメージよりもいいですね。私は学生のとき、あまり働きたくないと思っていたんです(笑)。
でも米盛病院で働き始めてみて、「億劫だな」「今日も仕事なのか」と思ったことが一日もありません。それだけいい環境で研修できています。
安田くんも積極的に仕事をしているので、私と同じ気持ちでしょう。

安田先生
 そうですね。救急を回っているときに裁量権を持ったうえで身体診察を取ったり、治療方針を決めたりできるのはイメージ以上でした。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

中夷先生
 急性期がメインであることです。神経内科などの慢性期疾患を学ぶには少し弱いみたいですが、救急科での研修に重点を置かれているので、救急に関しては特に深い学びができています。

安田先生
 私も救急を回る期間が長いことが特徴だと思います。
また、初期研修医の数が少ないので、自分の好きなタイミングで当直、準夜当直、日直に入れることも特徴でしょうか。

院外での研修はありますか。

中夷先生
 1年目はありません。2年目は精神科、産婦人科、小児科、地域医療が院外での研修でした。
私は精神科はメンタルホスピタル鹿児島、産婦人科は産科婦人科のぼり病院、小児科は鹿児島こども病院で研修しました。
また地域医療では滋賀県の弓削メディカルクリニックと「Dr.コトー診療所」のモデルになった薩摩川内市下甑手打診療所に行きました。
弓削メディカルクリニックはクリニックながら常勤の先生方が何人もいらっしゃり、非常に教育熱心なところで、良い勉強ができました。
手打診療所では漁船搬送も経験しました。患者さんを漁船に乗せて搬送し、私も同乗したのですが、無事に助かって良かったです。

米盛病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

中夷先生
 学問的なことはもちろん、患者さんに対する姿勢に関しても見習いたい先生方ばかりです。
今、ICUで研修しているのですが、循環器内科を回ったときにお世話になった先生がICUに来て、エコーを教えてくださることがあります。
回っている診療科に関係なく教えていただける機会があるので、勉強になります。

安田先生
 週に1回、初期研修医向けの勉強会があり、「こういう患者さんが来たら、どうするか」という感じで、実際の現場と同じような勉強ができます。先日の救急科での勉強会では人形が準備され、「こういう症状があります。身体診察を取ってください」と言われ、身体診察を終えると、指導医の先生からはこういう情報を集めて、こういう検査をして、こういう診断をするといった指導をいただきました。かなり現場に即した勉強会でしたので、これから似た症例が来れば、実践に活かせそうです。

失敗談はありますか。

中夷先生
 失敗などはしていないつもりです(笑)。しているかもしれないのですが、叱られることがありません。丁寧にご指導いただいています。

安田先生
 私も思い当たることがありません(笑)。これはおそらく上の先生方が私たちが気づかないところでバックアップして、失敗が起きないようにしてくださっているからだと思います。

初期研修にあたって、どのような姿勢を心がけていますか。

中夷先生
 初期研修医という立場の最大のメリットは上の先生方に指導していただけることなので、知ったかぶりを絶対にしないように、とにかく先生方に質問しようと思っています。年数が上がるとプライドが出てきて、質問できなくなることもあるかもしれないので、今は初期研修医という立場を最大限に利用して、とにかく質問することを心がけています。

安田先生
 救急患者さんが来られたときに、よく知らない症状や経験したことのない症状だと消極的な気持ちになりますが、そういう気持ちが生まれたときはそれが自分の弱点だと思うので、そういうときこそ診に行こうという姿勢を心がけています。

当直の体制をお聞かせください。

中夷先生
 救急科以外の研修中は17時30分から22時までの準夜当直が週に1回入っています。人数の枠はありますが、希望すれば回数を増やすこともできますし、体調が悪ければその月の回数をゼロにすることもできます。私たちに合わせて、可能な限り調整をしていただいています。当直も準夜当直もERでの勤務で、救急科の専門医の先生が1人か2人、専攻医の先生が1人か2人、初期研修医が1人か2人で入ります。初期研修医の学年は被らないようになっています。

中夷先生・安田先生の写真 安田先生の写真

準夜当直で勉強になっていることはどのようなことですか。

中夷先生
 手技に関しても初期研修医優先で経験させてくださるので、手技の機会は多いです。日中よりも準夜当直帯の方が患者さんが多いので、色々な経験ができています。

安田先生
 日勤帯と比べると、患者さんの人数に対して医師数が少ないので、一人で大勢の患者さんを診ないといけない状況です。そういうときに、患者さんをどう並行して診るかということは勉強になっています。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

中夷先生
 最初は手技が全然できないので、隣について教えてくださるのですが、ある程度、慣れてきたら、少しずつ距離を置き、離れたところから見ていてくださいます。
指導医の先生が離れると、すぐに質問できないですし、自分でしないといけないという責任感も出てきました。
でも何かあれば駆けつけてくれるし、しっかりやっているのかどうかを離れたところから見ていてくださっています。先生方は初期研修医一人一人について、「ここまでは任せられる」という基準があり、それに合わせて指導していただいています。
3年目になると一人でできるようにならないといけないというゴールがあるので、それに向けて、しっかりとバックアップをしてくださっています。

安田先生
 非常にいいです。先生方が積極的に関わるようなことがないと言うと、放置されている感じですが、先生方からあれしろ、これしろと言われることがありません。
まず自分で身体診察を取って、どんな検査をするか決めてから相談をすると、「この身体診察は取ったか」「これが足りていないのでは」と、私たちができていないことを補填するような形で指導してくださっています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

中夷先生
 循環器内科では和気あいあいといった感じで、先生方の仲が良くて、楽しそうなカンファレンスでした。
今はICUを回っているのですが、ICUのカンファレンスには脳神経外科や循環器内科の先生もいらっしゃり、みっちりとした内容で、活発な雰囲気です。
私は回り始めたばかりなので、今週は見学するだけですが、来週からはプレゼンに参加する予定です。

安田先生
 私はまだ救急科のカンファレンスにしか参加したことがないのですが、救急科はカンファレンス中に患者さんが来院されることもあるので、どれだけ要点を押さえて話すのかを見られています。
先生方もてきぱきとされていますが、雰囲気は和やかです。

コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがですか。

中夷先生
 私は当院の初代の初期研修医で、当院は一昨年まで初期研修医がいない病院だったので、看護師さんたちは初期研修医の扱いがよく分からなかったようでした。
特にERの看護師さんは私たちがどこまでできるのかが分からないし、戸惑いもあったように思います。
でも1年半が経ち、看護師さんとも仲良くなれて、私に相談してくださったり、良い関係になっていると感じています。

安田先生
 看護師さんにはよくしていただいています。10年目ぐらいの看護師さんの方が初期研修医よりも経験豊富ですし、色々な知識もお持ちなので、私たちが検査を出すときも「先生、これもした方がいいんじゃないですか」と優しく助言してくださるので、助かっています。

病院に改善を望みたいことはありますか。

中夷先生
 思いつかないですね。とても快適に研修させていただいています。

安田先生
 私もいい環境の病院だと思います。

同期は何人ですか。

中夷先生
 1年目、2年目ともに2人ずつです。

研修医同士のコミュニケーションは活発ですか。

安田先生
 活発ですし、密だと思います(笑)。

中夷先生
 私たちは2年目の前半に外の病院に研修に出ていたので、その間は1年目の2人とたすきがけの人たちで仲良くやっていたようです。
今は4人が揃ったので、さらに仲良く過ごしています(笑)。
研修医室もあり、10人ぐらい入れるほどの広いスペースなので、快適です。特徴は1人1台のカルテがあることです。ほかの病院に見学に行ったときに、研修医がカルテを探しに行くのが大変だと聞いたことがあったので、1人1台のカルテがある環境は有り難いです。

お住まいは寮ですか。

中夷先生
 私は寮に住んでいます。病院から徒歩10分のところにありますが、私はバイク通勤なので、2、3分で着いてしまいます(笑)。アクセスも良く、家賃も安いので、とても気に入っています。ワンルームですが、相場より安くで住めています。基本的な設備が整っているし、綺麗な部屋です。寮に住むことは必須ではなく、実家から通っている人もいます。

安田先生
 私は実家が車で10分ぐらいのところにあるので、実家から通っていますが、そろそろ実家を出ようかなと思っています。

今後のご予定をお聞かせください。

中夷先生
 私は救急科に進むことに決めました。家族が倒れたときに救急車で運ばれ、救急科の先生にお世話になったことが私が医師という仕事に触れたきっかけでもあったし、
学生時代にかわいがってくださった先生が救急科の先生で、格好良いなと憧れていました。
そして米盛病院で初期研修をして、米盛病院の救急科の先生方も格好良い方ばかりなので、私も救急科を選びました。
専攻医研修先は指導医の先生が以前、勤務しておられた病院です。当院とは異なる病院で、色々なことを研修して、学んできたいと思っています。

安田先生
 私も救急科に進む予定で、専攻医研修先はこれから検討します。救急科を選んだのはもともと切羽詰まった状況が好きなことが大きいですね(笑)。
それから以前、父が救急医をしていて、格好良いと思っていたことも理由です。
中夷先生もおっしゃっていたように、米盛病院の救急科の先生方は格好良い方ばかりなので、私も憧れています。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

中夷先生
 色々なことに興味があるのですが、キャンプや旅行が好きです。旅行は県外にも国外にも行っています。

安田先生
 私は幼稚園のときからサッカーを続けています。最近は救急科の先生に「筋トレしないか」と誘われてジムに入れられ、まんまと筋トレが趣味になりました(笑)。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

中夷先生
 毎月、回る診療科が変わるので、「はじめまして」とイチからコミュニケーションをとるのは大変な部分がありますし、ようやく慣れてきた頃にほかの科に行くので、寂しいなという気持ちとまたイチからかという気持ちになります。
ただ、以前はいきなり入局するのが一般的だったので、今みたいに小児や妊婦さんを診る機会はなかったと思います。
今の制度は様々な診療科が回れ、そこで働いている先生方の仕事の様子や考え方に触れることができるので良いことだと感じています。

安田先生
 中夷先生が言われたように、以前は卒後1年目に医局に入ったら、ずっとそこに勤めるのが一般的でした。
今はスーパーローテートなので、興味がなかった分野に興味を持つことができたり、本当はこれに興味があるのだと気づくことができるのは良い点だと思います。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

安田先生
 勉強に関しては国家試験やOSCEなどを問題なく乗り越えるぐらいに頑張ったら、あとはしっかり遊んで、英気を養いましょう。それがいつか医療に役立つと思います。

中夷先生
 大学生のときはお金はないけれど、時間はあります。働き始めると、お金はあるのですが、時間がありません。
定年退職後は、お金と時間があっても体力がなかったりします。大学生のときは、貧乏旅行など、お金がなくても時間を使える楽しみを満喫してほしいなと思っています。
米盛病院は臨床研修病院として始まったばかりなので、「こんな研修をしたい」「これをやっていいですか」という積極的な人にお勧めです。自分らしい研修を作っていける病院です。

梅澤先生と研修医の写真

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