初期研修インタビュー

2023-09-01

社会福祉法人三井記念病院(東京都) 指導医(初期研修) 堀内優先生 (2023年)

社会福祉法人三井記念病院(東京都)の指導医、堀内優先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

社会福祉法人三井記念病院

〒101-8643
東京都千代田区神田和泉町1
TEL:03-3862-9111
FAX:03-3862-9140
病院URL:https://www.mitsuihosp.or.jp/

堀内先生の写真

名前 堀内(ほりうち) 優(ゆう)
三井記念病院 循環器内科医長 指導医

職歴経歴 1984年に山梨県笛吹市で生まれる。2009年に新潟大学を卒業後、聖路加国際病院で初期研修を行う。
2011年に聖路加国際病院内科で後期研修を行う。2012年に三井記念病院循環器内科で後期研修を行い、後期研修終了後に三井記念病院に勤務する。
2017年にUniversity of California, San Diego, Division of Cardiovascular Medicineに留学する。
2019年に三井記念病院に勤務する。2020年に三井記念病院循環器内科医長に就任する。
日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医など。

三井記念病院の特徴をお聞かせください。

 当院はJR山手線の秋葉原駅のそばにあり、都心部の病院ではありますが、医療圏としては下町であり、都会の中のコモンディジーズや一般診療に幅広く対応しています。一方で、中規模から大規模の間の規模にしては専門科がかなり充実しており、先進的な医療にも積極的に取り組んでいます。東京の下町の患者さんに対し、先進的な医療をしっかり提供している病院です。

堀内先生がいらっしゃる循環器内科についてはいかがですか。

 アクティビティ高く活動しており、救急車や急な病気の患者さんの受け入れも多いです。スタッフ数、後期研修医数ともに多く、心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、不整脈といった領域ごとにスタッフが揃っていますので、かなり先進的な診療や治療を提供できています。

三井記念病院の初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

 ある程度決められているプログラムの中で学ぶわけですが、当院は指導医、中堅医師との距離が近いので、初期研修医が自分で考え、自分で行うことが推奨されています。病院の規模が大きいとポリクリの延長のようになりがちだと聞いたことがあるのですが、当院では初期研修医が自主性を持って取り組め、それを指導医が医療安全の面からサポートする形です。自分で積極的に勉強していきたいという初期研修医の希望に応えられるプログラムになっています。

プログラムの自由度についてはいかがですか。

 どのコースを選択しても、2年目に選択期間が2カ月あります。そこで興味のある診療科を回ったり、進む予定にしている診療科を選択する人もいますし、画像の勉強をしたいということで、放射線科を選択する人もいます。どの科を選んだとしても競合がなく、行きたい科に行くことができます。

初期研修医の人数は何人ですか。

 各学年10人ずつですので、教えやすいですね。あまりに少ないと初期研修医同士の関係や一体感が育ちにくいし、逆に多すぎると初期研修医それぞれの顔が見えなくなります。循環器内科を2、3カ月ずつ回ると顔なじみになりますし、一度回ってきた初期研修医であれば、他科を回っていても、顔を知っているだけに相談を受けやすいです。

最近の研修医をご覧になって、いかがですか。

 私たちの世代よりも根拠やエビデンスなどの情報にしっかりアクセスしますし、そういったものに基づいた医療を考えているなという印象があります。どうしても学年が上がってくると、それまでの慣習に縛られたり、「私たちは気分と根性でやっていたんだ」となりがちですが(笑)、そういったところとは少し変わってきていますね。

初期研修医の指導にあたって、心がけておられることをお聞かせください。

 初期研修医とは言っても、医師免許を持った医師ですので、基本的には自分で行ってもらうことを心がけています。いつかは研修が終わり、独り立ちをしなくてはいけませんので、いたずらにその機会を取り上げてしまうのは良くありません。自分で考え、自分で行ってもらう中で、もちろん大事な判断は一緒にしますし、患者さんへの説明など、必要なことがあれば一緒に行いますが、「こちらでするから、見ていてね」ということにはならないように気をつけています。

堀内先生の写真

研修医に「これだけは言いたい」というのはどのようなことですか。

 初期研修中は大変なこともありますが、逆に質問したり、教えてもらったりする権利がある期間も、長い医師人生の中では短いものです。初期研修は自由に質問して、胸を張って教えてもらえる貴重な期間ですから、メンタルバランスに気をつけて、楽しんで研修していただければと思っています。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

 私は新潟大学出身で、新潟はとても環境が良く、どこの病院にもOBや部活動の先輩の先生方、知り合いの先生方がいらして、よくしていただいていたのですが、色々なところから色々な先生が来る病院で研修したいと思い、聖路加国際病院で初期研修をしました。聖路加国際病院は当院と規模やバランスのほか、「初期研修医も医師なのだから、自分で頑張ろう」という自主性を重んじる雰囲気も似ており、非常に良い研修をすることができました。

先生はいつ循環器内科を専門にしようと決められたのですか。

 後期研修1年目でCCUを回ったときに面白いと思ったことがきっかけです。当時は今のようなかっちりしたシステムがなく、自由度が高くて、聖路加国際病院の研修は初期2年、後期2年となっていました。私は内科の後期研修1年目を聖路加国際病院で行い、2年目に聖路加に残るか、少し早めにほかの病院に移るかというところで、循環器内科が強い三井記念病院に来ました。

三井記念病院ではどのような後期研修をされたのですか。

 最初の2年間で循環器内科の一般診療をかなり重点的にトレーニングしました。研修の後半では手技の機会が非常に多かったので、学会の認定医を取得するレベルまで到達することができました。学術的にもスタッフの先生のご指導を得て論文を書き、そのあと留学もしましたので、充実した機会を与えていただいたと思います。

留学もされたのですね。

 私は心不全を勉強しているのですが、大きなデータベースを取り扱っている有名な先生がおられた病院に留学しました。留学先では2年間、患者さんから離れ、全く臨床をせず、学業や研究にしっかり取り組むことができました。それまで時間がなくて、なかなか調べられなかったことや勉強できなかったことに打ち込む時間ができたし、家族との時間が増えたという意味でも良い2年間でした。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

 とても熱心で、患者さんのもとによく行き、専門研修でないのに手技にも積極的だった初期研修医がいました。自分が担当している患者さんの手技に入らせてほしいと言ってきて、熱心に取り組んでいました。現在は外科医として活躍していますが、初期研修で前向きに努力していた姿は忘れられません。指導医は一見とっつきにくいかもしれませんが、「やってみたい」「もっと勉強したい」ということがあれば、それを積極的に受け入れてくれるはずです。その初期研修医は人の心を掴むのがうまかったですし、それだけに実力をつけていきました。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお聞かせください。

 色々な考え方がありますが、私はいきなり専門研修に入るよりもいいと思います。あくまでも制度ですので、研修を受ける側の研修医と運用する病院側次第でいかようにも変わっていきます。ただ初期研修医に積極性がないと、大学の実習の延長のようになってしまいます。自分とは関係ない診療科を回っていても、あとから役に立つこともありますし、分かっていなくても許される2年間を大手を振ってオープンな気持ちで過ごしてほしいです。

専門医制度についてのご意見もお願いします。

 循環器内科の専門医制度を統括する先生のお一人と話す機会がありました。現場からすると面倒で大変だという意見をよく聞きますが、専門医制度を作っている側もかなり苦心しており、国民の皆様に納得してもらえるような、皆に認められるような、良い資格認定制度にしていきたいと考えているのだなという印象を受けました。制度の面倒なところや大変さはありますが、一生していく仕事ですので、専攻医の皆さんには制度の煩雑さにとらわれず、専門医制度をクリアして、専門医資格を取得してほしいと思っています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

 当院は病院の規模や研修医数がちょうど良く、多数の初期研修医の一人として埋没せず、一人の医師として扱ってもらえる病院です。頑張って働いている実感を得ながら、いい研修ができますので、興味があれば見学にいらして、雰囲気を感じてください。勉強したい、積極的にやっていきたいという方に受験していただけたらと思います。やればやるほど周りが応えてくれる環境ですので、一緒に働けることを楽しみにしています。

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