初期研修インタビュー

2023-08-01

洛和会音羽病院(京都府) 初期研修医 林知毅先生 / 福岡七海先生 (2023年)

洛和会音羽病院(京都府)の初期研修医、林知毅先生 / 福岡七海先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

洛和会音羽病院

〒607-8062
京都府京都市山科区音羽珍事町2
TEL:075-593-4111
FAX:075-593-4160
病院URL:http://www.rakuwa.or.jp/otowa/

林先生の近影

名前林 知毅(ともき) 研修医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 大阪府高槻市・滋賀医科大学 / 2023年

福岡先生の近影

名前福岡 七海(なつみ) 研修医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 京都府京都市・京都府立医科大学 / 2023年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 福岡:父が医師なので、医療の仕事は身近な存在でした。父が患者さんを助けている姿に憧れがあったのと、私も誰かの役に立てる職業に就きたいと考えていたので、一番身近な医師を選びました。医師として、患者さんを診断したり、治療したり、深く貢献していきたいと思いました。
 林:小さい頃から人の役に立ちたいと漠然と思っていたのですが、あるとき母が尿路結石になり、救急車で運ばれたことがありました。そのときの無力感が印象に残っていて、人の役に立つ仕事をするのであれば、医療の現場で人助けをしたい、医療職の中でも医師は目の前の人を救える仕事だと考え、医師を目指しました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

 福岡:3年生のときに大学祭の実行委員長を務めました。私はリーダーシップがある方ではないのですが、折角なら思い出作りをしようということで、実行委員長になりました。それがきっかけで、大学の先生方と仲良くさせていただくようになったり、同期と絆を深められ、リーダーシップをうまく発揮できなくても、周りの皆に支えてもらったことが思い出です。今、1年目で分からないことだらけですが、医師として働く中である程度はリーダーシップを発揮しないといけません。でも、この経験からコミュニケーションスキルを培うことができ、上の先生や看護師さんと相談したりするときに活かされているので、実行委員長を務めて良かったです。
 林:ドイツ語選択だったので、友人とドイツ旅行をしたことが思い出に残っています。日本では興味がなかった絵画や建造物を見たり、芸術に感動したり、こういう歴史があったのだなあと、違う文化や新しい世界に触れることができました。言葉が通じないながらも、身振り手振りや単語を繋げたりして会話をする面白さを感じましたし、そんなコミュニケーションを駆使して、ご当地のビールを飲み歩いたり、とても楽しかったです。

大学卒業後、研修先を洛和会音羽病院に決めた理由をお聞かせください。

 林:医師を目指したきっかけが「どんな場面でも手を差し伸べられる医師になりたい」ということだったので、救急への対応力を身につけられる病院を近畿圏内で探していました。それで当院に見学に来たときに、救急を実践しながら教育もしていただける環境だと分かったんです。インプットが豊富にある中でのアウトプットもでき、エビデンスや医学知識に基づいた医療が提供できることが実感でき、こういう病院で初期研修をして、何があっても対応できる力をつけたいと思い、当院を志望しました。
 福岡:私は京都市出身なので、京都周辺の病院を探していました。当院のことは教育熱心な先生方のもとで初期研修医が皆で勉強する病院なのだと以前から聞いており、私自身は良くも悪くも周りに流されやすいタイプなので、そういう病院で研修できたらと思い、実習も含めて、3回、当院に来ました。そのときに研修医の先生方が熱心に勉強していたり、医局で上の先生が研修医を気にかけて話しかけていたりする姿がとても印象的で、ここでなら怠けず、医学についてしっかり学べる環境だなと感じ、当院を選びました。

見学に来られたのはいつですか。

 林:5年生の10月です。そのときに、研修医の先生が「レクチャーで勉強したことを実践してみるわ」という感じで、救急の現場でエコーを当てたり、アセスメントをされたりと、習った通りに実践されることを心がけていらっしゃる姿がとても頼もしく、印象に残りました。私もこういう研修医になりたいなと思ったことが「音羽病院いいな」という決め手になりました。
 福岡:私はもともと受験する病院の候補にしていたので、初めて見学に来たのは4年生の3月です。大学での実習も始まったばかりで、何も分からない状態で来てしまったのですが、ついてくださった研修医の先生も指導医の先生も私が分かっていないという状況を分かったうえで、忙しい診療時間の中で、私でも分かるように親切に解説してくださったので、また見学に来たいなと思いました。それから6年生のときに実習先として当院を選べたので、受験も念頭に置いていましたし、見学も兼ねて救急の実習をしました。「できる範囲で問診や身体診察をしていいよ」と言っていただいていたので、私なりにできることを経験させていただきました。

洛和会音羽病院での初期研修はイメージ通りですか。

 福岡:忙しいながらも勉強することが多いです。当院に来たからにはほかの病院で研修している同級生よりも多くのことを身につけたいと思っているので、優秀な同期に置いてかれないように、毎日が必死です(笑)。
 林:イメージよりも医学的な知識に触れる機会が多く、自分の興味が薄かったり、関心がなかったことへの知識が別の視点から与えられています。そのため、学びがより深くなりますね。専攻医の先生がレクチャーしてくださるので、専門性も深まります。専攻医の先生は知識の幅や深さが違い、情報量の多さに圧倒されています。私も少しずつ学んだら、憧れの先輩に近づくのかなと思いつつ、毎日を楽しんでいます。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

 林:内科を2カ月ごとのローテートでしっかり学べるというのが特徴でしょうか。実際に2カ月を終えたところなのですが、これが1カ月であれば知識があまりないまま終わってしまいそうな場面がありましたし、2カ月あっても知らないことがまだ一杯ある状況なので、2カ月で深く学べるプログラムはいいですね。
 福岡:2年目の選択期間には同じ洛和会の丸太町病院にも行くことができ、違う病院での総合診療を学ぶことができます。丸太町病院の先生方とも親しくなれる機会があるのは面白いプログラムだなと思います。

院外での研修はありますか。

 林:精神科は醍醐病院での研修です。地域医療研修は北海道家庭医療学センター、青森県の東通村診療所、山科区内の診療所のほか、大津ファミリークリニックから選べます。

洛和会音羽病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

 福岡:私は今、救急を回っているのですが、今日も何台も救急車が来て、とても忙しかったです。研修医一人で救急車を見ないといけないのですが、自分なりに鑑別を挙げ、検査のオーダーを入れて、その状態になって、ようやく上の先生からフィードバックをもらいます。そのため、ほかの病院の研修医よりは色々なことを考えながら働けている気がしています。何か危なそうなことがあれば、上の先生も一緒に診てくださるし、いざというときのサポートがある環境なので、考える力が身についたと実感しています。
 林:救急の現場もそうですが、それをなぜするのかということを常に考えることの大切さを教えられています。分からないことはすぐに聞くのですが、上の先生がなぜそう思うのか、なぜその治療をしているのか、診察の場でもなぜその身体所見を取るのか、なぜ問診を取るのか、病棟の場でもなぜその指示を出すのかなど、「なぜ」に焦点を当てて、細かい疑問を持つことで、より多くのことを学べるのだと分かってきました。

2人の写真

失敗談はありますか。

 福岡:ERでは忙しい状況の中で、上の先生と検査や治療方針を相談しないといけないのですが、私は話を組み立てるのが苦手なので、何から話したらいいのか分からないことがよくあります。上の先生から「どうしたいの」と聞かれても、「そこまで考えていませんでした」ということもあり、短時間で鑑別を挙げて方針を考えることがまだできず、「きちんとまとめてから来て」と言われます。でも、まとめてから行くとなると、患者さんをお待たせすることにもなりかねないので、そのバランスが難しいです。
 林:事務作業的なことの相談や相談の先にあるアセスメントの確認、今後の方針への相談などの際、上の先生に報告することに集中してしまい、所見を集めるだけ集めて、だらだら話してしまうことがあります。自分が何も考えていない状態で、何を伝えたいのか分からないまま相談に行くと、何のために診察したのか分からないし、作業が目的となり、思考がなくなってしまうので、気をつけたいです。

初期研修にあたって、どのような姿勢を心がけていますか。

 林:色々な診療科を回るので、どの診療科でも何かを持って帰るというつもりで、全力で頑張ることを心がけています。この科には興味がないという姿勢にはならず、どの科でも自分の興味のある科に繋げられることやその科がどういうことを考えているのかを知ろうと努力しています。
 福岡:研修医は分からないことだらけの中で働いているのですが、名札に「医師」とあるので、患者さんには「この人には自分の症状を全部、相談してもいい」と思われています。そのため、患者さんの前では「分かりません」という自信のない態度や困っている表情を出さないようにすること、でも分からないことやその場ではっきりお伝えできないことは患者さんにきちんと伝えることを心がけています。研修医は分からなくて当然の立場ではありますので、分からないことがあれば、上の先生に必ず確認してからオーダーを入れたり、その日に分からなかったことを次の日に患者さんから聞かれたら自信を持って対応できるように振り返りや勉強をしています。

当直の体制をお聞かせください。

 福岡:月に4回あります。ERに常駐しているのは1年目の初期研修医1人、2年目の初期研修医1人、救急内科の上級医1人、救急外科の上級医1人の4人です。その他に小児、産婦、循環器、SCU、救急病棟など全員で11名の当直体制です。

当直で勉強になっていることはどのようなことですか。

 林:まずは上の先生への相談の仕方などのコンサルの仕方は勉強になっています。それから、救急には色々な主訴の患者さんが来られるので、まず何をするのかなど、最低限のことを即座に対応していくための考え方を学んでいます。
 福岡:当直帯は日勤帯よりも医師や看護師の数が少ないので、どの検査が必要なのか、治療がすぐに必要な症状なのかどうかを判断することが勉強になります。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

 林:優しい先生方ばかりです。
 福岡:私たちが分かっていないということを汲み取って、分かるように指導してくださいます。指導医の先生が専攻医の先生と関わっている様子と比べますと、コンサルトに来た研修医には力量に合わせた指導をしてくださっているんだなと感じます。分かりやすくて、ためになるご指導をいただいています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

 林:外科は賑やかです。先生方同士で「この術前検査だと、手術の方針はどうなる」「もし、ここに浸潤があったら、方針をどう変える」「血管の走行は大丈夫」といった会話が弾んでいて、活気のあるカンファレンスです。
 福岡:今はERなので、その都度フィードバックを頂けますし、消化しきれなかった症例は、週一回振り返りのカンファレンスを行っていただきます。その前に回った小児科では入院の患者さん全員について、先生方全員で前日からの症状の変化や退院時期などを話し合っていました。雰囲気は和やかでしたね。

コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがですか。

 林:とても取りやすいです。
 福岡:同期のコメディカルスタッフとは良い関係が築けています。入職のときにオリエンテーションがあり、できるだけ他職種と交流しましょうと言われたんです。そのお蔭で、同期と病院内で会ったときに困っていることを相談しやすいです。

病院に改善を望みたいことはありますか。

 福岡:昼食をバランス良く取りたいと思うと、食堂を利用したいのですが、食堂が14時で終わってしまうんです。勤務の都合で昼休みの時間に昼食が取れなくなると、選択肢が院内のコンビニエンスストアしかなくなってしまいます。
 林:そのコンビニエンスストアも22時迄ですので、当直の前に食事を買い忘れたときの絶望感は大きいです(笑)。

同期は何人ですか。

 福岡:9人です。研修医室はなく、医局の端に研修医用のデスクがあり、そこで皆とよく話しています。
 林:上の先生方もよく話しかけてくださるし、先生方と話しやすい環境ですね。
 福岡:研修医室はなくて大丈夫です(笑)。

お住まいは寮ですか。

 福岡:寮は希望制ですが、全員が寮に住んでいます。私の場合、実家は京都市内にありますが、寮は安くて、近いし、皆が住むなら、私も一緒のところに住んだ方が楽しいかなと思って、寮に入ることにしました。
 林:寮はアパートの借り上げで、病院から徒歩3分のところにあります。ベッドとソファを両方置けて、余るぐらいの広さがあります(笑)。寮費は21000円で、給与から天引きされます。

今後のご予定をお聞かせください。

 林:内科ということは以前から決めていたのですが、その中では総合内科に興味があります。また内科とは違うのですが、総合診療科や家庭医療も検討しています。大学1年生のときに訪問診療の実習があり、ゴールが治療ではなく、QOLに目を向けることがとても面白かったんです。患者さんを笑顔にさせることに憧れます。
 福岡:実家が循環器内科の医院を開業しているので、私も循環器内科を考えていたのですが、ERで働いていると、色々な診療科に触れる機会が多く、循環器だけでなく、呼吸器や腎臓など、面白い領域がほかにもあることに気づかされました。今後、もしかしたら方向性を変えるかもしれません(笑)。
 林:どの科を回っても、面白いですしね(笑)。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

 林:映画鑑賞が趣味で、休みの日は映画を観に行くことが多いです。ここはアクセスが良く、京都駅にも河原町にも出やすいのがいいですね。最近で良かったのは「名探偵コナン」で、これから観たいのが「リトル・マーメイド」です。今年の夏は話題作が豊富なので、楽しみです。
 福岡:私は小学生のときからずっと陸上競技をしています。専門が長距離なので、走ることが好きで、こちらでも走ろうと思い、シューズや時計を持ってきているのですが、まだ5回ぐらいしか走れていません。
 林:5回「も」ではなく、5回「しか」なんですね(笑)。
 福岡:病院の駅伝大会があり、是非とも優勝を目指してくれと言われているので、そのときはしっかり走ります(笑)。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

 林:多くの知識に触れる場面のある病院です。色々なことを広く学びたい方にお勧めです。
 福岡:広く学べるので、「絶対にこの科に行きたい」という目標がない人にお勧めです。当院ではどの科に行っても大丈夫なように育ててくださいますので、将来の目標が特に決まっていない人にこそ、来ていただきたいです。

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