専門研修インタビュー

2023-08-01

神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県) 指導医(専門研修) 柚木一馬先生 (2023年)

神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県) の指導医、柚木一馬先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

神戸市立医療センター中央市民病院

〒650-0047
兵庫県神戸市中央区港島南町2-1-1
TEL:078-302-4321
FAX:078-302-7537
病院URL:https://chuo.kcho.jp/

柚木先生の写真

名前 柚木(ゆのき) 一馬(かずま)
神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部医長 指導医

職歴経歴 1980年に静岡県焼津市に生まれる。2007年に京都大学を卒業し、高山赤十字病院で初期研修を行う。
2009年に神戸市立中央市民病院(現 神戸市立医療センター中央市民病院)で麻酔科の後期研修を行う。
2012年に神戸市立中央市民病院に麻酔科・集中治療部のスタッフとして勤務する。
2017年に米国、University of Pittsburgh Medical Center麻酔科に留学し、麻酔科専門医教育、シミュレーション医学教育などの医学教育に関する研究に従事する。
2018年に神戸市立医療センター中央市民病院に復職する。2021年に神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・集中治療部医長に就任する。
日本麻酔科学会認定指導医、日本専門医機構麻酔科専門医、日本集中治療医学会専門医、日本心臓血管麻酔学会専門医、臨床研修指導医など。

神戸市立医療センター中央市民病院の特徴をお聞かせください。

 当院は人口150万人を有する神戸市の基幹病院であり、34診療科、768床の病床を持ち、救急医療や高度医療の提供、新たな医療知見の創出と人材の育成といった多用な役割を担っている急性期の総合病院です。特に救命救急センターは神戸市民の最後の砦として、断らない医療を実践しており、その実績は厚生労働省の「救命救急センターの充実段階評価」で9年連続で全国1位にランクされているほか、『Newsweek』誌の「THE WORLD'S Best Hospitals 2023」にも選定をいただきました。これは病院としての高い総合力を評価いただいたものだと思っています。また当院は神戸市沖合のポートアイランドに位置していて、病院を出ると海の香りを感じながら、神戸の綺麗な夜景を眺めることができます。港町神戸を感じるロケーションに恵まれた病院です。

柚木先生がいらっしゃる麻酔科・集中治療部の特徴もお聞かせください。

 手術麻酔と集中治療の両方に強いのが特徴です。手術麻酔部門、集中治療部門に合わせて36人という多数のスタッフを抱えており、そのうち18人が専攻医です。手術麻酔部門の特徴ですが、当院は大手術や重症度の高い患者さんも手術が多く、救命救急センターを併設していることから緊急手術も多く、年間麻酔科管理件数は全国でも有数の7000件程度であり、そのうち緊急手術が1200から1500件となっています。一方、集中治療部門の特徴ですが、麻酔科管理型のICUを有しているため、心臓血管外科の大手術の術後管理や内科疾患の重症管理を麻酔科主体で行っていることです。麻酔科管理型のICUとしては歴史が古く、現在ICUの世界で活躍している著名な先生方を輩出してきた伝統ある部門でもあります。

神戸市立医療センター中央市民病院の麻酔科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

 当院の麻酔科専門研修プログラムは基幹施設の当院を中心として、特色ある連携施設と組んでプログラムを作っていることが特徴です。連携施設は岐阜県や愛知県にもありますが、希望があれば神戸市内から通勤できる施設だけで研修を完結させることも可能です。神戸市内に住んだままで、研修中に引っ越しをしなくていいというのは実は大きな利点です。また、研修期間中に集中治療部での3カ月の専従研修があることも特徴です。集中治療専門医の認定にあたっては6カ月連続での集中治療専従期間が必要ですが、一般的にはハードルが高いものだとされています。しかし当院では将来的に集中治療専門医を目指したいという希望があれば、この専従期間を満たすような研修を計画することが可能になっています。

柚木先生の写真

神戸市立医療センター中央市民病院の麻酔科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。

 専門研修プログラムを終えることで知識や技術が身につくのはもちろんですが、研修の後半には初期研修医や後輩専攻医に対する教育や手術室全体のマネジメントにも積極的に関わってもらっています。また日々の勉強会に加えて、学会活動への経験も積めます。当院の研修の目標は知識や技術のみならず、教育、マネジメント、学術活動にも長けたプロフェッショナルな麻酔科医としてのスキルを身につけることですので、それを活かして、専門的な病院に進んだり、大学院に入学して、さらなる高みを目指す先生方も多数おられます。

カンファレンスについて、お聞かせください。

 基本的には毎朝20分程度の勉強会のあとで、1日の症例全てをプレゼンする症例カンファレンスを行っています。

専攻医も発言の機会が多いですか。

 専攻医が担当症例を1例ずつコンパクトにプレゼンしますので、発言機会は非常に多いです。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

 麻酔科は伝統的に女性の比率が高い診療科ですので、お子さんがいる女性医師が働きやすい環境になっています。私たち男性医師も、ママさん医師をはじめとして、様々な働き方をする医師がいる環境に慣れていますし、色々なバックグラウンドを持った医師が働きやすい科だと思います。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

 私は高山赤十字病院で初期研修を行いました。高山赤十字病院は母校の関連病院だったので、ポリクリで行ったのですが、そのときの印象が良かったこともあり、初期研修先に選びました。今、勤務している当院とは大きく異なった、いわゆる僻地の三次救急病院であり、ほかの病院と比べると圧倒的に医師不足の状態でした。しかし指導医の先生方に知識や技術はもちろんですが、医師としてどうあるべきかという、医師としての根本的な姿勢の部分をみっちり指導していただいたことが今も大きな財産となっています。

先生はいつから麻酔科を目指していたのですか。

 初期研修で麻酔科を回ってからです。初期研修で尊敬できる先生に出会ったというのが麻酔科を選んだ大きな理由ですね。学生時代は手術で人を治すのが格好良いと感じ、外科を目指していました。麻酔科には特別な感情はなかったのですが、初期研修で初めて麻酔科を回ったときに救命困難と思えるような重症患者さんの緊急手術に参加することになったんです。そのときに私の指導医だった麻酔科の先生がかなり絶望的な状況の中をありとあらゆる知識と技術を駆使して手術中に患者さんの生命を支え、最終的に救命することができた症例を見て、麻酔科医はすごいなと思ったのが麻酔科を目指したきっかけです。そして実際に手術麻酔を研修医として担当してみて、麻酔の奥深さにはまってしまい、麻酔科に進むことを決意しました。

ほかに初期研修の思い出はありますか。

 主治医制の病院でしたが、指導医の先生が必ず後ろにいてくださったので、安心できる環境でした。とにかく忙しかったのですが、同期、先輩研修医の先生方とも皆が仲良く助け合っていました。ときには飲み会をしたり、イベントを開いたり、振り返ると楽しい思い出ばかりです。色々と凝縮された思い出深い2年間でした。

後期研修は神戸市立医療センター中央市民病院でなさったのですね。

 麻酔科の研修を行うにあたり、総合病院であり、三次救急医療機関であり、心臓血管外科、呼吸器外科、産婦人科などの麻酔科研修に必要な症例を豊富な病院を探しました。その中で当院を一つの候補として見学に来たのですが、その際に当時の部長の先生が「ここに来れば、私が責任を持って、先生を立派な麻酔科医として育てます」と力強くおっしゃり、歓迎してくださったことが大きかったです。さらに神戸市中央区という立地も何だかお洒落そうな感じがして、魅力でした。でも実際は中央区は中央区でも沖合の人工島でした(笑)。

留学もされたのですね。

 病院から補助をいただき、1年間の留学ができる制度を使って、ピッツバーグ大学の麻酔科に留学しました。研究したのは麻酔科のレジデント教育についてです。日米の麻酔科専門教育の違い、双方の利点や欠点、日本で活かせるアメリカの利点の抽出などを研究することと並行して、シミュレーション医学も学びました。シミュレーション医学はアメリカでは非常に盛んですが、日本ではあまり盛んではありません。しかし今後の医療安全のためには進めていくべき領域だと思いますので、留学先で勉強してきたことを当院での教育にできるだけ活かしていきたいと考えています。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

 私自身が気をつけていることは、自分が若い時代に受けた指導方法を基準にしないということです。教育方法は時代によって変わります。例えばの話ですが、過去のパワハラ指導を乗り切ったことがいかに今の自分にとっての財産だったとしても、今の若い先生によかれと思って高圧的な指導をすることは全く時代遅れです。さらに最近は若い先生たちの方が各種デバイスを使いこなし、情報収集方法に詳しいものです。そのため指導の際には、知識や技術を教えるのはもちろんですが、私がこれまでに経験してきた中で医師として普遍的に必要だと思うことを教えるよう心がけています。そして私自身も若い先生方に負けないように、最新技術や流行、教育手法を常にアップデートし、指導医としての適切なレベルを保っていきたいと考えています。

柚木先生の写真

今の専攻医を見て、いかがですか。

 私たちの頃と比べると、情報収集能力が非常に優れていますし、便利な世の中になって、環境も揃っているので、やりやすいと思います。私たちもそれについていかないといけないですね。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

 ジェネラリストを育てるという当初の目的からすると素晴らしい制度だと思います。一方で、最初からこの診療科だと決めている人にとっては関係のない科を回ることは無駄だとおっしゃっている先生方もいらっしゃるかもしれません。しかし人生どこで何が役に立つのかは全く分からないのです。初期研修で回った、全く関係のない科で習った知識が思いもよらないところで役に立つことはあります。そして初期研修で様々な診療科を回ることで、病院全体、医療全体の大きな姿が見えてくる利点もあるので、私自身はこの制度を非常に面白いと評価しています。私自身もこの制度がなかったら、麻酔科医になっていませんでした。この制度のお蔭で、天職を得られました。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

 麻酔科はこれまで3年だった研修期間が新しい制度になり、4年に延びました。また専門医試験を受ける時期は1年早くなりましたが、実際に専門医認定を受けるのはプログラム開始後、最速で6年目ですので、全く変わりません。以前は後期研修が終わり、専門医試験を受験するときに次の行き先を自分で決めないといけなかったのですが、現在は安定したプログラムの中で研修ができるようになったという意味では有意義な改正だったと思います。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 麻酔科医は手術中の患者さんの安全を守る安全管理のエキスパートです。その知識や技術を活かし、集中治療、ペインクリニック、緩和医療などの幅広い活躍ができる、非常に面白い診療科だと思います。プロフェッショナルな麻酔科医になるためにはしっかりとした研修を受ける必要がありますが、当院は経験可能な症例数、指導体制の充実度、いずれも国内有数の研修施設です。ときにはハードな日々もありますが、麻酔科医としての臨床能力をつけるには最適な病院であると自負しています。麻酔科医として、神戸市の高度医療や救急医療の第一線で活躍したいという思いのある先生方は是非、当院の麻酔科にいらしてください。一緒に頑張りましょう。お待ちしています。

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