専門研修インタビュー

2023-08-01

神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県) 専攻医 松田龍太先生(麻酔科) (2023年)

神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県) の専攻医、松田龍太先生(麻酔科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

神戸市立医療センター中央市民病院

〒650-0047
兵庫県神戸市中央区港島南町2-1-1
TEL:078-302-4321
FAX:078-302-7537
病院URL:https://chuo.kcho.jp/

松田先生の写真

名前 松田 龍太(りゅうた) 専攻医
出身 広島県広島市
出身大学 神戸大学
医師免許取得年度 2019年
初期研修施設 耳原総合病院
専攻医研修 麻酔科

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 父が外科医で、小さい頃から仕事の話を聞いたり、働いている姿を見たり、家で手術のビデオを一緒に見たりすることがあり、漠然と格好良い仕事だなと思っていました。でも父からは「忙しくて、なかなか家族との時間も持てないし、医師にはなるな」と言われていました(笑)。そろそろ進路を決めないといけない高校2年生のときの文化祭に、ペシャワール会の中村哲先生が講演に来られたんです。中村先生から患者さんではない方々の健康面以外のところもサポートされているというお話を聞き、医師にはこういう道もあるのだと分かり、改めて医師を目指しました、

学生生活はいかがでしたか。

 ハンドボール部に入っていました。私は中学、高校では水球部だったので、ハンドボールは初心者だったのですが、私の学年は私一人だったこともあり、3年生から4年生にかけてはキャプテンを務めました。経験者の先輩、後輩がよく頑張ってくれたこともあり、西医体で過去最高の準優勝をしたことが思い出に残っています。

初期研修先を耳原総合病院に決めたのはなぜですか。

 初期研修先を選ぶにあたっての大事なポイントにしていたのが総合診療を学べることでした。中村哲先生のお話がずっと心に残っていたので、海外の貧しい国々や十分な医療機器がないところでも診察ができるように、身体診察などの基礎的なことがしっかり勉強できるところ、1年目から主治医として診療できるところを探していました。耳原総合病院には部活動で一番仲の良かった先輩が初期研修をしていて、その先輩から話を聞くと、私の求める要素が全てあると分かりましたし、初期研修医が救急外来のファーストタッチを全て行うこと、主治医制だけれどオンオフもはっきりしていることなどを聞き、その先輩が言うなら間違いないと信じて、耳原総合病院に決めました。

麻酔科をいつから志望されていたのですか。

 私は初期研修2年目になっても診療科を決めることができておらず、2年目の7月にようやく決めました。そのときは何か一つの疾患を診るよりも、バイタルサインや全身管理といった全身を診ることに興味があり、救急や集中治療も考えていたのですが、それでも決められず、どちらにも進むことができる診療科である麻酔科を選びました。

初期研修を振り返って、いかがですか。

 初心が続いていたかどうかは怪しいのですが(笑)、とても充実していました。救急総合診療科の藤本卓司部長は高校の先輩でもあるのですが、臨床推論で著名な先生で、救急総合診療科を回っているとき以外でも聴診や身体診察などの色々なことを教えてくださり、勉強になりました。同期にも恵まれ、コロナ禍になる前までは一緒に旅行したり、楽しかったですね。

専攻医研修先を神戸市立医療センター中央市民病院に決められたのはどうしてですか。

 麻酔科を選んだわけですが、麻酔科では手術麻酔がベースになるので手術件数が多い病院、集中治療にも興味があったので麻酔科が集中治療を管理している病院、心臓血管麻酔にも興味があったので心臓血管外科の手術が多い病院を探しました。最初は関東の病院を考えていたのですが、コロナ禍になり、見学に行きづらくなったので、大学時代を過ごした神戸に戻るのもいいなと思い、私が経験したいことが揃っていた当院に決めました。

病院外観の写真

専攻医3年目の現在はどのような専攻医研修をなさっているのですか。

 毎朝7時45分から20分ほどの勉強会があり、専攻医が自分でテーマを見つけて発表したり、論文を読む抄読会をしたりしています。この発表は月に1回、回ってきます。その後、カンファレンスがありますが、専攻医1人2つか3つほどのプレゼンをします。それが終わったら、一番早い手術出しが8時30分なので、それぞれが自分の担当する患者さんの麻酔をかけていきます。平日は毎日、手術があります。当院には手術室が19室あり、全身麻酔ができる手術室も13室ほどあります。当院は「断らない救急」で有名ですので、緊急手術の申し込みも入ってくるため、帰るのが遅くなる日も多いです。定時は17時30分ですが、稀に定時に終わります(笑)。麻酔科の当直は2人なのですが、もう1人「居残り」という医師もいます。居残りの医師は手術室全体で残りの手術が1つになったら、帰れます。居残りのときは23時、24時までかかりますね。居残りでも翌日は7時45分に出勤です。

専攻医研修で特に勉強になっていることを教えてください。

 情報がなく、手術前検査も十分にできていない救急患者さんや、かなりの重症で急いで準備して対応しないといけない患者さん、心臓血管外科の手術を受ける患者さんの麻酔管理は勉強になります。心臓血管外科の麻酔に関しては他院に研修に行く病院も多いようですが、当院であれば、成人の心臓麻酔は十分に研修できます。それから集中治療の研修も勉強になっていますし、お勧めです。麻酔科専攻医は集中治療の研修は4カ月がマストなのですが、希望すれば追加もできます。集中治療部の先生方は教育的ですし、研修がシステム化されており、先生方が統一した考えのもとで教えてくださるので、4カ月で多くのことが学べます。

専攻医研修で遣り甲斐を感じるのはどのようなときですか。

 急いで手術室に入ってきた重症の患者さんに対し、心臓血管外科や脳神経外科などの他科の先生方とコミュニケーションを取りながら麻酔して、そういった患者さんが術後に意識を回復して一般病棟に戻っていく姿を見ると、良かったなと思います。

専攻医研修で辛いことはどのようなことですか。

 一つは体力的なことですね。月曜日から金曜日まで夜遅くまで働き、土曜日に日当直があると、日曜日は当直明けで疲れ切っていて、遊んだりすることもできないまま月曜日になって、同じ1週間が始まるとなると辛いです(笑)。

当直の体制をお聞かせください。

 当直は月に4回、居残りは月に3回か4回あります。麻酔科の当直は2人体制で、指導医と専攻医の組み合わせが多いですが、3、4年目の専攻医と1年目の専攻医という組み合わせの日もあります。居残りは1人です。

当直で勉強になっているのはどのようなことですか。

 緊急の患者さんが多いので、情報が少なく、自分で情報を集めなくてはいけません。予定手術であれば、スタッフが麻酔科外来で術前情報をある程度、集めてくれているので、自分で情報を集めなくても術前のカルテを見れば分かります。でも緊急手術や当直では情報がない中で、自分で情報を集め、しっかりプランニングして準備しないといけないので、そこは勉強になっています。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

 専攻医1年目のときは細かいところまでご指導いただきました。1年目のときは上の先生方が気になったことは全て「これはこうするんだ」と教育してくださったのですが、理不尽な先生はいらっしゃらないですね。確かにそうだなと反省の日々でした。2年目になると放置とはいかないものの、「ちゃんとやってね」みたいな感じになりました(笑)。

カンファレンスはいかがですか。

 毎朝のカンファレンスのときのみ、皆が集まります。突っ込まれるようなカンファレンスではなく、「今日はこういう患者さんです。こういうことに気をつけます」という報告が中心です。

初期研修医の指導はどのようにしていらっしゃいますか。

 専攻医3年目になり、指導する立場になりましたが、私は4月までICUにいたので、指導を始めたばかりなんです。初期研修医の全員が麻酔科に進むわけではないですし、麻酔科に興味がない人もいると思いますので、違う診療科でも使えるような一般的なこと、共通することを教えるようにしています。一方で、麻酔科に興味がある人にはさらに興味を持ってもらえるように深いところまで、麻酔の面白さを伝えることを心がけています。

病院に改善を望みたいことはありますか。

 救急を大事にしている病院なので、専攻医としては充実しています。忙しい病院ではありますが、その忙しさは仕方がないと思っています。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

 当院の初期研修医は優秀な人が多く、その先生たちを指導できるスタッフの先生方もまた優秀です。コメディカルスタッフの皆さんもそれを分かって応募してこられているので、モチベーションが高いですね。コミュニケーションもかなり活発です。コメディカルスタッフの皆さんの方から「こういうのはどうですか」と言われることもあり、学ぶことも多くあります。

専攻医同士のコミュニケーションはいかがですか。

 麻酔科の専攻医は忙しくて、きついところもありますので、お互いの辛さを共有したり、分かち合っていく中で、とても仲が良いです。専攻医3年目になると指導する立場にもなりますので、同期だけでなく、上下の繋がりも結構強いですね。

今後のご予定をお聞かせください。

 麻酔科の専門研修プログラムは4年間ですので、来年が最後の年になります。専攻医研修が終わったら、まだ中村哲先生に憧れがあるので、国境なき医師団やジャパンハートのような団体での経験をしてみたいと思っています。そのあとで自分の道を考えていきたいです。

専門医制度についてのご意見をお願いします。

 以前のプログラムのことは知らないので、違いに関してはよく分からないのですが、私は今のプログラムに不満はないです。

専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 私のように診療科を決められない人、決めることが難しいと感じている人も多いと思います。そういう人は今、何を勉強したいのか、初期研修で回って楽しかった、もう少し経験してみたいということを優先して、一旦はそこを選んでみればいいのではないでしょうか。専攻医研修をした診療科にずっといないといけないわけではありませんし、20年後、30年後のことを考えて決めたりすると、最初は辛いことばかりになるかもしれないですので、まずは自分がしたいことを見つけられたらいいのかなと思います。当院の麻酔科での専攻医研修はどうしても体力が必要ですので、ガッツのある方にお勧めです。それから早く独り立ちしたい方にも向いています。専攻医の間はずっと指導してもらいながら、ゆっくり成長していきたいという方よりは自分で全てをできるようになりたいと考えている方に来ていただきたいですね。症例が多く集まる病院で、刺激的な専攻医研修ができるはずです。

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