初期研修インタビュー

2023-07-01

地方独立行政法人 長野市民病院(長野県) 指導医(初期研修) 掛川哲司先生 (2023年)

地方独立行政法人 長野市民病院(長野県)の指導医、掛川哲司先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

地方独立行政法人 長野市民病院

〒381-8551
長野県長野市富竹1333-1
TEL:026-295-1199
FAX:026-295-1148
病院URL:https://www.hospital.nagano.nagano.jp/

掛川先生の近影

名前 掛川(かけがわ) 哲司(てつじ)
地方独立行政法人 長野市民病院 指導医 臨床研修センター長

職歴経歴 1971年に長野県小諸市に生まれる。1996年に信州大学を卒業し、信州大学医学部附属病院で初期研修、長野赤十字病院で腎臓内科の後期研修を行う。2004年に長野市民病院に勤務する。
資格 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医、日本腎臓学会 指導医・腎臓専門医、日本透析医学会 指導医・透析専門医、日本アフェレシス学会 血漿交換療法専門医、日本急性血液浄化学会 認定指導医

長野市民病院の特徴をお聞かせください。

 病院自体が1995年に設立になります。まだまだ若い病院で、地域の中核病院を目指して診療しています。特に高度急性期病院を目指していて、2022年、DPC特定病院群に指定されました。
病院の三本柱として、「がん診療」・「救急医療」・「脳・心臓・血管診療」を挙げています。
がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院に指定されていますので手術、化学療法、放射線治療、緩和ケアからゲノム医療まで、途切れなく提供することを目指しています。
救急医療に関しても『24時間365日断らない救急医療』というのを目指していて、災害拠点病院に指定されており長野市消防局と連携しています。
脳・心臓・血管に関してはSCUという脳卒中ケアユニットが北信地域で唯一指定されているのに加え、心臓血管センターは循環器内科と心臓血管外科の医師で心臓血管の診療にも力を入れています。

掛川先生がいらっしゃる腎臓内科についてはいかがですか。

 腎臓内科は今、医師が3名体制です。
トピックスとしては今年の4月に長野市民病院に新棟ができ、透析センターが拡張し広くなりました。
透析の機械も17台から25台に増えました。さらに透析の患者さんの診療に今年から力を入れていこうと考えています。
尿検査異常の精密検査から始まり、腎臓の働きが悪くなったら透析治療をするところまで、切れ目なく全ての疾患に対応できるように心掛けています。
その他、他の疾患に合併した急性腎障害や重篤な病態に対する集中治療に際しても、他科の医師と連携しながら診療に当たっています。

長野市民病院の初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

  2022年の救急車の搬送患者数が5,544件と、症例は豊富に揃っているかなと思います。
2022年の手術件数が4424件、これも結構多くて、手技も一緒に経験できます。
指導医は54名で、確かな技術と熱意を持って指導しています。コメディカルのスタッフの方も含め、病院全体で研修医を育てようという雰囲気が浸透していて、充実した医師のスタートが可能です。
また、最先端の医療だけでなく、協力施設では開業医などから地域医療や多くの医師の役割を学べる環境になっています。

自由度の高さについてはいかがですか。

 自由度に関してはやっぱり選択研修のところだと思います。100%って言われると難しいんですが、概ね本人の希望に沿って柔軟に対応できているつもりではいるので、選択実習の診療科であるとか、時期とか期間に関しては、比較的自由度大きく採用できてるんじゃないかなと思います。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

 現在一学年8名体制で毎年ほぼフルマッチです。男女比は4:1、県内比率も同じく4:1あたりです。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

 現在の初期研修制度が始まる前なので、今の研修医の先生とは少し異なるんですけど、以前は専門を決めたら、そこに入局という時代がありました。しかしながら、それだけじゃよくないっていう話が出てきて、私の時は内科を1年半回ってどの内科にするか、その後で決めてくださいっていうシステムが始まったぐらいの時代です。
私も戻れるなら現在の制度を体験したいですね(笑)

掛川先生の写真

長野市民病院に勤務されるようになったきっかけはどういったものだったのですか。

 医局の人事です。信州大学の腎臓内科に属しているっていう形で私は大学病院よりも市中病院で勤務したいなっていう希望と、長野市民病院の腎臓内科の枠が空いたっていうのが正直な話です。(笑)
昔は自分の意思というより、どこの病院が開いたから『じゃぁ君ね』という時代があったんです。そういう感じで派遣されて、そのまま居座ってしまったんですけれども(笑)

掛川先生、腎臓内科の面白さはどこにありますか。

 診療するのは腎臓っていう臓器ですが、他のいろんな臓器と関係が深いというか腎臓が悪いから心臓悪くなる人もいるし心臓が悪いから腎臓が悪くなったりする人もいるしと、他の臓器との関係が深い分、全身を把握してないといけないっていうのが難しさでもあり面白い部分ではあります。
病態に応じて体の水分量の管理だとか栄養の管理だとかやっぱり全身全体の管理を要するっていうのも、腎臓を診てるだけじゃないっていうのが特徴かなと思います。
あと内科ですが、手技に関しては血液透析をするときのシャントという血管の処置があったりだとか、腹膜透析というお腹を使ってやる透析があるんですがその時はお腹のちょっとした手術をしたり、腎臓の生検って直接針を刺してとったり手技も内科の中ではありますね。
心臓とか内視鏡の先生たちに比べれば少ないですが全然ないわけじゃないのでその辺も好きな人にはいいんじゃないかなと思います。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

 特定の研修医っていうわけじゃないんですけれど、長野市民病院で初期研修後、1年2年他の病院に行って、また後期研修としてその研修医が帰ってきた時、自分とは違う専門の科になった研修医が、こちらから質問すればちゃんと答えてくれて。
フットワーク軽くあっちの患者さん、こっちの患者さんと一生懸命診てるのを見るとなんかいいな~よかったな~っていう気持ちになりますね。
親心と言いますか、年齢的にもちょうど自分の子供ぐらいの年なので(笑)

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

 最近こういう研修医が多いって一律に言うの難しいんですけれども、例えばコミュニケーション得意な人、寡黙であんまり喋らない人、実行力があって何事も積極的にやりたがる人、奥手で消極的な人とかいろいろいるとは思うんですけれど、研修中にまたその人のキャラクターも変わったりすることもあるかなと思うので、その研修医の主体性というか、研修医のやりたいこと、性格とかを尊重してあげないといけないかなと思います。
1人1人の研修医の特徴を見極めて、その研修医ごとに合った指導をしなきゃいけないっていう、指導する側の難しさも最近感じてはいるところではありますね。

例えば、手技も症例がいっぱいある病院だということを確かに売りにしていますが、実際患者さんに針刺したりするのを好まない研修医も中にはいたりするので、それを無理強いすることもできません。かといって最低限は身につけてもらわなきゃいけないこともありますし、一方どんどんやりたい!あれもやりたいこれもやらせて欲しいという研修医とやらせようとするとちょっと尻込みしちゃう方など、今後どう上手に指導していけばいいのかなっていうのは、自分自身の課題でもあります。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

 元々の臨床研修制度の目的である広い分野を勉強できるっていう意味では今の制度で良いと思います。
例えば、私が内科なので整形外科を回ってきた研修医に話を聞いた時、自分が知らないようなこともよく知っていたりするのでそういうところを見ると、いろんな科を勉強するっていうのは悪くはないんじゃないかなと思います。
ただ研修医の中にはもう明らかに自分の将来を内科になるんだ!とか整形外科になるんだ!と決めている人もいてそれ以外の研修になったときに、やっぱりモチベーションが少し下がってしまったり、興味がないのかなというふうに見えちゃう人もいたりはするのでその時どう興味を持ってもらえばいいのかっていう指導にも工夫が要るのかなとは思っています。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

 自分が内科なので内科の専門医制度ってなるとJ-OSLERっていう症例を登録したりするシステムがありますが毎年使いやすいように少しずつ改修はされているようですので、使いいにくさとかそういう点に関しては今後に期待かなとは思います。
内科の専門医を取るまでに学会参加や講習会など結構色々と条件があるんですけれども、経験した症例も何十例と登録をしますが、一部初期研修のうちに経験した症例も、内科の専門医を取るときに登録には使えるので、内科を目指す方は内科専門医のための研修に入ったと時に活かせるように初期研修の内からちょっとその辺を意識してるといいのかなとは思いますね。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

 初期研修先もやっぱり大都市圏を目指すっていう人が多いという話を聞きます。
長野県にも26の臨床研修病院があって、それぞれにいろいろ特徴はあるかなとは思います。ある程度地方だからこそ最先端の専門に偏った医療だけじゃなくって患者さんの生活だとか社会的背景などというのも全部含めて診療しなきゃいけないような経験も、出来るのではないかなと思うので、首都圏だけでなく長野県、長野市民病院も受けて頂ければなと思います。
ぜひ皆、首都圏に行かないで流れてもらえればいいなと思います(笑)

掛川先生の写真

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