インタビュー

2022-06-01

公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院 佐藤 孝洋 医師 | 指導医インタビュー(初期)

公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院 佐藤 孝洋 先生の指導医インタビュー。全国病院からメッセージ・求める研修医、プログラム・募集要項、ジュニア・シニア・指導医・院長のインタビューを掲載。進路選択の判断材料としてお役立てください!

公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院

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FAX:022-366-2593
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佐藤先生の近影

名前 佐藤 孝洋
坂総合病院 産婦人科医長 医学生委員会委員長 指導医

職歴経歴 1977年に宮城県石巻市に生まれる。2005年に東北大学を卒業後、坂総合病院で初期研修を行う。2007年4月から内科の総合研修を9カ月、2008年1月から産婦人科の研修を3カ月行う。2008年から坂総合病院で産婦人科の後期研修を行う。2010年に東北大学医学部産婦人科教室に入局し、東北大学病院に勤務する。2015年に坂総合病院に勤務する。
日本産婦人科学会専門医、周産期新生児母体胎児専門医、新生児蘇生インストラクターなど。

坂総合病院の特徴をお聞かせください。

坂総合病院は塩竈市を中心に、多賀城市、宮城郡七ヶ浜町、利府町、松島町の2市3町、仙台市の一部の地域を加えた25万人の人口規模の医療圏をカバーする中核病院です。救急や急性期医療をメインに診療していますが、総合診療、リハビリテーション、在宅医療にも力を入れていますし、健診活動にも熱心に取り組んでいます。地域に根ざし、患者さんに寄り添う医療を実践する病院です。

佐藤先生がいらっしゃる産婦人科についてはいかがですか。

当院の産婦人科は救急病院の産婦人科ですので、周産期医療はもちろん、婦人科の救急疾患、悪性腫瘍、不妊治療まで、非常に幅広く診療しています。指導医は4人いますが、私以外の3人は女性医師です。いつも初期研修医が回ってきていますし、専攻医もいますので、大人数でわいわい楽しく仕事をしている診療科です。

坂総合病院の初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

当院には地域医療に貢献できる医師を育成したいという理念がありますので、実践重視型の研修を行っています。早くから主治医として現場に立って、患者さんとそのご家族に関わり、医師としての責任感を持って診療にあたることで、多くの経験を積んでもらいます。症例数も豊富で、初期診療を幅広く経験したうえで、専門性の高い急性期医療から総合診療までを身につけられる研修が行えます。大きな特徴としては救急研修が挙げられます。救急科を回る期間は2カ月なのですが、2カ月間だけ救急車を診ていても、ほかの科を回ったときに忘れてしまったり、技術が低下することもありえますので、各診療科を回っている間でも救急車対応をする時間が月や週ごとに決めてあり、通年で救急研修ができる体制になっています。もう一つの特徴は在宅医療です。どの臨床研修病院でも地域医療研修が1カ月ほどありますが、当院ではこの一環として、2年間を通して在宅医療を行います。この期間に訪問先の患者さんやご家族と関係を築いていくことができるので、在宅医療に必要な知識だけでなく、患者さんの背景をしっかり把握し、患者さんの人生に寄り添う姿勢を持った医師に育ってもらいたいと思っています。

自由度の高さについてはいかがですか。

この臨床研修が必修化されてから長い年月を経てきましたが、どの臨床研修病院でも研修が細切れになりがちだとよく聞きます。しかし、当院では先にお話しした理念のもとで、循環器科、呼吸器科、消化器科、外科、脳神経外科の主要5科を3カ月以上、回ることになっています。初期診療から専門的な治療、リハビリ、そして退院まで、主治医として長く関わってもらう研修スタイルとなっていますので、選択期間が2カ月しか取れず、その意味では自由度は低いですね。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

これまでは毎年11人を受け入れていたのですが、2022年度から総合診療重点プログラムを開設し、これに2人が入りましたので、13人に増員となりました。この春に総合診療重点プログラムの1期生の研修医が研修を開始したところです。

先生の初期研修医時代はいかがでしたか。

私は医学生時代から「一人の患者さんを在宅医療や緩和ケアなどを通して、総合的に診られるようなお医者さんになりたい」という思いがあり、家庭医を志望していました。坂総合病院は在宅往診が研修内容に含まれていたり、総合診療科の研修が充実していたので、研修先に選びました。実際に研修が始まってみると、とてもアットホームな病院ですし、先生方も優しくて、医師として色々な経験ができることが楽しかったです。私は病院に寝泊まりするようながつがつした研修医でしたね(笑)。ローテート研修をする中で、坂総合病院の先生方が専門性の高い医療をする中でも総合的な視点をお持ちで、患者さんの背景をしっかり把握し、退院されるところまでサポートをしておられるところを見て、家庭医以外でもこういう仕事ができるのだなということを学べたので、ほかの診療科も選択肢に挙げてみようと思うようになりました。

その中で、なぜ産婦人科を選ばれたのですか。

私は臨床研修制度が必修化されてから2年目の初期研修医だったのですが、坂総合病院のプログラムは3年間で組まれており、内科を長く研修できるのが特徴でした。2年でローテートを終え、3年目は内科の診療所や中小規模の病院で内科医として勤務する総合研修を行います。これは初期研修の総括的な研修で、色々なサポートをいただきつつ、一人前の内科医として仕事をし、「一人でこんなにできるんだな」という自信をつけさせていただくのですが、私はその総合研修を9カ月したのちに産婦人科に行きました。産婦人科を選んだのは周産期医療が魅力的だったからです。妊娠、出産からその後の育児まで、小児科と産婦人科が連携して、ご家族をサポートしていく仕事に私も関わりたいと考え、産婦人科の世界に飛び込みました。私自身も研修医時代に小児科医の妻と結婚したこともあり、産婦人科のあり方に共鳴し、惹かれたというのも理由の一つです。

佐藤先生の写真

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

産婦人科医ということもあり、思い出に残っている研修医は当院での初期研修中に妊娠、出産を経験した人たちです。年配の指導医の先生方の中には初期研修中に妊娠、出産するのは無理だとか、難しいだとかおっしゃる方もいますし、当院の初期研修プログラムは密なので、初期研修医も多忙であり、その間に産休や育休を取るのは大変です。しかし、指導医がプログラムを調整しますし、スタッフもサポートすることに加え、パートナーの協力や院内保育所の活用、何よりも本人の努力で、皆が2年間の初期研修を終えることができています。初期研修医同士の夫婦の場合、父親となった研修医に1カ月の育休を取ってもらい、「育休も研修なんだよ」と小児科の研修という形で妻をサポートするということもありました。ほかの病院ではなかなかない事例でしょうし、サポートする側に回った私自身もいい経験になりましたね。妊娠するとどうしても休まなければいけない時間ができますし、制限されることもあったり、本人の体調不良など、研修の遅れが発生しがちです。しかし産婦人科医からすれば、研修医が妊娠や出産を経験すること自体が人間としても、医師としても成長するチャンスなのです。それを研修医に伝え、研修から妊婦健診、体調管理も含めてサポートしていますし、「こういう研修医がいたよ」と話すと、女性の医学生や研修医には共感してもらえます。今はお子さんがいる医学生もいますし、私の妻も含め、育児をしている女性医師も非常に増えてきましたので、先々のワーク・ライフ・バランスや仕事が気になっている人も多いです。ただし、病院や周囲のサポートがないと難しい部分ではあるので、妊娠や出産といったライフイベントと医師の仕事を両立できる環境を整備していくことが重要だと考えながら、仕事にあたっています。

お子さんがいる状況で初期研修をスタートされた方もいらっしゃいますか。

います。その中で産婦人科医を目指している人もいますね。1人目が既にいて、2人目を初期研修後半に出産した人もいますし、当院では他院からの研修医も受け入れていますので、他院で研修している間に出産し、初期研修の残りを当院で行った人もいます。当院での初期研修中に出産した人は2年で初期研修を終われるように、病院の皆でサポートをしています。研修医にとっても、我々にとっても、いい経験となっています。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

自分の専門が決まり、専門的な研修に入ると、ほかの診療科のことを学ぶチャンスが減るので、初期研修の2年間という短い時間の中で多くの経験をしてほしいと思っています。特に産婦人科の研修は1カ月しかないので、ほかの科に進んだとしても必要になる産科と婦人科の知識をしっかりと伝えています。私のようにほかの科を志望していても、初期研修中に志望科や人生が変わるような出会いがあることもありますし、産婦人科医を増やしたい思いもあるので、周産期医療の魅力についてはかなり説明しています。一方で、医師はストレスの多い仕事なので、忙しい研修中でもプライベートな時間を作って、リフレッシュすることは大事なことです。当院の産婦人科は主治医制ではありますが、当番制のチーム医療を行っていますので、研修医には主治医としての役割を果たしてもらいつつ、休みをきちんと取ることも指導しています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

働き方改革が進み、私たちの研修医時代のように、病院に寝泊まりして働く時代ではなくなりました。最近の研修医は仕事もプライベートもメリハリをつけて、時間を有効に使っているという人たちが多いなという印象を持っています。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

すごく考えたのですが、私が偉そうに言えることはないですね(笑)。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

私自身はこの制度の2期生です。必修化されて15年以上が経ちましたが、自分の専門科である産婦人科以外の疾患を診るにあたり、糖尿病科で学んだことなど、初期研修での経験が生きていることを実感しています。このスーパーローテート研修は色々な科を幅広く回るのが魅力ですので、今後も続けてほしいと思っています。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

新しい制度になって、専門医の専門性や技術が担保された部分は非常に良かったです。しかし、この制度では初期研修医が2年間の初期研修終了後すぐに専門研修を開始しないといけなくなり、大変だと教える側の我々も感じています。初期研修開始時点で自分の進路が明確で、「この科に行くんだ、初期研修中にこういう勉強をするんだ」と決めている人には問題ないのですが、私のように研修を始めたあとでほかの科に魅力を感じた人が将来を考えるための時間がとても短くなってしまっています。私の研修医時代、坂総合病院のプログラムは3年間でしたので、考えるための時間が2年9カ月あったうえで、産婦人科に進むことができました。そして産婦人科に行ったあとも産婦人科に片足を突っ込みながら麻酔科や放射線科を研修させていただいたのですが、そこで得られた知識は産婦人科医として働くにあたっても活かせています。そうしたことから、坂総合病院では初期研修終了時点で進路に迷っていたり、ほかの診療科に行く前に勉強しておきたい領域がある人を対象に、卒後3年目にすぐに専門研修を開始せず、その移行期間に半年から1年といった長めのスパンでローテート研修をするトランジショナル研修を実践しています。当院以外の協力施設や診療所でも研修できますし、当院の各診療科も初期研修よりも踏み込んだ研修を行っていますので、さらに広い総合力を身につけ、そのうえで進みたい診療科や領域に確信を持って進んでいくことができると考えています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

大学時代に授業や実習で学んだことと、実際に医師になって研修で学んだことはもしかしたら違うかもしれません。医師としての責任が発生することもそうですし、地域や場所によって行われる医療が多岐に渡ることもそうです。私のように研修中に人生が変わるような大きな出会いがあるかもしれませんが、医学生の皆さんは自分の将来の地図を今の段階から描きつつ、自分に合った研修先を選んでいただければと思います。坂総合病院は忙しい中にもアットホームな雰囲気があり、診療科の垣根が低く、各科がしっかり連携を取れているのが特徴です。初期研修医には手厚く指導しながら、できるだけ多くの経験を積んでもらっています。地域で活躍する医師仲間を作りたいと考えていますので、医師としての一歩を踏み出すために、当院に見学に来ていただければ嬉しいです。

佐藤先生の写真