国試対策

2023-07-19

血液疾患

鉄欠乏性貧血

難しいイメージのある血液内科の勉強も、まずは貧血から学習していきましょう。
まず貧血の中でもっとも頻度が高いのが鉄欠乏性貧血です。若年から中年の女性にとくに多いです。
このわけは、人体は能動的な鉄排泄の仕組みは存在せず、男性の場合は皮膚のターンオーバーや
腸管粘膜の剥がれ落ちることで鉄を喪失するのみですが、女性は月経があり、それに加えて定期的な鉄の喪失があるためです。
そのため貧血を疑った時の月経の頻度、量についての問診はとても重要です。

次に鉄欠乏性貧血ではめまい、易疲労感、息切れ、動悸などの自覚症状の他に、
眼瞼結膜蒼白やスプーンネイルなどの他覚症状がみられます。とくに鉄欠乏性貧血に特徴的なスプーンネイルは、
最近の医師国家試験でも出題されています。
検査や治療を覚えるのに手いっぱいで、意外と忘れていたりするので気をつけたいところです。
ちょっと1問問題を解いてみましょう。Let’s try!

例題1

27歳の女性、最近動悸や息切れをよく感じるようになった。
母親に顔色が悪いといわれたため来院した. 身長154cm、体重41kg、体温36.0℃、血圧90/65mmHg、
脈拍92/分、整。生理が不規則で、最近氷を食べることが多いという。
この患者で確認しておくべきこととして、もっとも当てはまらないのはどれか。

a さじ状爪   b 体重減少  c 下腿浮腫  d 歯肉出血  e 拡張期心雑音

貧血は種類が多く、鑑別が重要です。例えば高齢者になってくると悪性腫瘍による貧血も考える必要があるので、
(これは後述する血清鉄や貯蔵鉄のマーカーであるフェリチンでも、鑑別できますが、)
まずは問診でも体重減少をチェックしておくことが大事です。
また不整脈や心不全などの心疾患でも動悸や息切れは起こりますので、下腿浮腫もないか確認します。
巨赤芽球性貧血や再生不良性貧血では血小板の低下もみられることがあるので、出血傾向があるかを鼻出血がないか、
歯肉出血がないか点状出血がないかなどで確かめます。
貧血の心雑音は収縮期心雑音でしたね。氷をよく食べるのは異食症といい鉄欠乏性貧血に特徴的です。

続いて検査と病態についてです。
鉄は摂取量よりも貯蔵鉄が圧倒的に多いわけですが、それでも胃切除で胃酸が出なくて吸収できないとか、
偏食で鉄分がとれていないとか、消化管で出血があって喪失が大きいなどの理由で、貯蔵鉄が減っていきます
(血清フェリチン値の低下)。ただこのときは血清鉄もHb値も正常で自覚症状はありません。
そして貯蔵鉄が尽きると血清鉄が下がりはじめ(ただトランスフェリンという運び屋は増えるので
総鉄結合能(TIBC)や不飽和鉄結合能(UIBC)は上昇します)、ついにはヘモグロビン合成に必要な鉄が減少します。
そうすると、貧血症状が徐々に出現してきます。そしてさらに組織鉄が減少し、
細胞の代謝(シトクロム関連など)がうまくまわらなくなると、皮膚などにも症状が出ます(スプーンネイル)。
検査値としてはMCV低値、小球性低色素性貧血となり、血清フェリチン低下、血清鉄低下、
総鉄結合能上昇、不飽和鉄結合能上昇となります。
ここでもう1問解いてみましょう。Let’s try again!

例題2

鉄欠乏性貧血において、上昇する検査値はどれか。1つ選べ。

a ヘモグロビン b MCV c ヘマトクリット
d 血清鉄 e 総鉄結合能 f フェリチン

答えはeですね。
MCVは小球性、正球性、大球性に大まかに貧血を分類できてとても便利なので使えるようになりましょう。
Ht(ヘマトクリット)と赤血球数から算出できます。
慣れてきたら暗算でだいたい小球性、正球性、大球性かわかります。
症状とそれでだいたいの診断の目星はついてきます。国試ならばあとは、血清鉄、フェリチン、ビタミンB12、
ハプトグロビン、LDHなどをみていけば診断にたどりつけます。
小球性は鉄欠乏性貧血、慢性炎症による貧血(ちなみにこちらはフェリチンが上昇します。
貯蔵鉄の低下ではなく、鉄の利用障害が起こるからです。)、
正球性は再生不良性貧血、腎性貧血、溶血性貧血、大球性は巨赤芽球性貧血などです。

それでは治療に移りましょう。治療は鉄欠乏の原因を治療し、鉄を補います。
摂取不足については食事指導も行います。しかし、鉄欠乏性貧血では食生活の改善のみでは、
劇的な回復は期待できないことが多いため、鉄剤の投与が治療のメインになります。
この場合、血清フェリチンの正常化まで治療を継続します。
経口投与が基本ですが、胃腸症状などの副作用が強い場合、静注することもあります。

最後に国家試験の過去問を解いて、仕上げといたしましょう。

例題3

38歳の女性。3か月前から続く体動時の動悸と息切れを訴えて来院した。
ときどき腰痛があり、月経過多の傾向がある。
眼瞼結膜は蒼白で、眼球結膜に黄染を認めない。血液所見:赤血球380万、
Hb 7.5g/dl、Ht 28%、網赤血球15%、白血球3,500、血小板31万。
血清生化学所見:総タンパク 7.5g/dl、アルブミン4.2g/dl、
Fe 8μg/dl(基準80~160)、総鉄結合能
410μg/dl(基準290~390)、フェリチン3ng/ml(基準20~120)。

適切な対応はどれか。3つ選べ。

a 栄養指導
b 赤血球輸血
c 鉄剤の投与
d 鎮痛薬の投与
e 婦人科的検索

答えはa、c、eです。

お疲れ様でした。

本記事執筆の参考資料となる論文につきましては、以下のリンクをご覧ください。

日本内科学会雑誌第104巻第3号 (jst.go.jp)

著者プロフィール

ペンネーム:まる
プロフィール:近畿一円をまたにかけ、
ある時はクリニックで総合内科診療を、ある時は上場企業で産業医を、また様々な会社の健康診断の診察医も務めている。
日々の診療を行いながら、CES医師国家試験予備校で、「気づきのあるインプットと自力のアウトプットがある授業」
をモットーとして学生の指導に当たっている。僕のコラムが何らかの形で皆様の力になれば幸いです。一緒に頑張りましょう!

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