全国で活躍する女性医師

2023-04-30

日本赤十字社長崎原爆病院

全国の赤十字病院の中から、長崎県の日本赤十字社長崎原爆病院にお伺いしました。勤務内容や1日のスケジュール、家庭と仕事の両立など、女性医師ならではの声が聞けるインタビューです。

  • profile

    川上瑛子先生

    川上 瑛子(えいこ)先生

    リウマチ・膠原病内科

    • 長崎県長崎市出身
    • 1995年

      長崎県長崎市で生まれる

    • 2020年

      福岡大学を卒業

    •  

      長崎大学病院、日本赤十字社長崎原爆病院で初期研修

    • 2022年

      日本赤十字社長崎原爆病院リウマチ・膠原病内科で専攻医研修

目次|contents

医師を目指したきっかけと
研修病院選び・専門選び

カンファレンス中の川上先生

カンファレンス中の川上先生

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

川上家族や親戚に医師が多かったことが一つです。もう一つの理由としては、小さい頃に整形外科の先生に診てもらっていたことがあり、その主治医の先生に憧れていたことです。

病院の特徴はどのようなものでしょうか。

川上その名の通り、広島と長崎に投下された原子爆弾の被爆者の診療と健康管理を目的として開設された病院です。被爆者医療のほか、赤十字の病院として災害救護や国際活動にも力を入れていますが、地域に根づいた急性期病院であり、多くの救急車を受け入れています。2021年に新別館ができたばかりなのでとても綺麗で、先生方やスタッフの皆さんが優しく、働きやすい病院です。

初期研修は長崎大学病院のプログラムを選ばれたのですね。

川上私は長崎県出身で、大学時代は福岡で過ごしましたが、将来は長崎県で医師をしたいという希望があり、長崎大学に入局することを考えて、長崎大学病院のプログラムを選びました。やはり長崎大学の雰囲気を知りたかったということと、大学病院で専門性の高い疾患を診たいというのが理由です。また、たすきがけのプログラムにしたのは2年目を市中病院で研修することで、コモンディジーズを診ることができるからです。専門診療とコモンディジーズのバランスの取れた初期研修にしたいと思いました。

たすきがけの病院を長崎原爆病院にされたのはどうしてですか。

川上救急外来での当直では多くの救急車が来て、初期研修医がファーストタッチして、初期対応を学べることに惹かれたからです。それからコモンディジーズですね。大学はやはり専門性が高い疾患が多かったのですが、長崎原爆病院は大学とは違った症例を診られるのが良かったです。

初期研修のプログラムについてはいかがでしたか。

川上数多くの症例を経験することができて、経験値が上がりました。初期研修で学んだ初期対応についての知識は専攻医の現在でも当直のときなどに活かせています。

長崎原爆病院でのプログラムの自由度は高かったですか。

川上高かったです。予定とは別の診療科を回りたくなったことがあったのですが、直前であっても変更していただいたことがありました。

院外の研修先もありますよね。

川上私は長崎大学病院のプログラムでしたので、長崎原爆病院に来たときには既に地域医療、精神科、産婦人科、救急といった必修科の研修を終えていたんです。私は地域医療では長崎北病院に行き、地域に根づいた診療や神経内科の症例を経験しました。在宅医療に関しては大学病院での外来実習で学びました。長崎原爆病院を基幹型のプログラムにした場合は精神科、産婦人科、小児科がないので、大学病院などの院外の病院に行くことになります。また救急の研修も福岡赤十字病院か熊本赤十字病院のどちらかに2カ月、行くことになっています。地域医療は長崎原爆諫早病院か、五島市の富江病院、奈留医療センター、上五島病院に行きます。

初期研修での同期は何人でしたか。

川上同期は15人ほどいて、仲良く、楽しく研修できました。研修医室もあって、休憩中に話をしたり、輪になって昼ご飯を食べたりしていました(笑)。

初期研修を振り返って、いかがでしたか。

川上大学病院でも当院でも、とても多くの症例を経験できた2年間でした。初期研修で学んだことは今に活かせていますし、指導医の先生方をはじめ、色々な方に優しくしていただき、充実した毎日でした。

長崎原爆病院でのキャリア

関節エコーを行う川上先生

関節エコーを行う川上先生

ご専門をリウマチ・膠原病内科に決められたのはいつですか。

川上最終的に選んだのは初期研修2年目の夏ですので、ぎりぎりの時期でしたね(笑)。学生時代に勉強していて楽しかったのがリウマチ・膠原病内科と内分泌代謝内科だったので、初期研修が始まるときもその2つの診療科で迷っていたんです。1年目の大学病院での研修ではどちらの科も2カ月ずつ回り、どちらも楽しく研修させていただきました。



最終的にリウマチ・膠原病内科に決められたのはどうしてですか。

川上慢性期疾患を診たいと思っていたことと、リウマチ・膠原病内科は難しい症例が多いので、鑑別を挙げていくにあたっては総合的な能力が必要ですし、その鑑別を考えていくことが面白かったからです。そして新しい治療法が次々に出てきている領域であることも魅力でした。


専攻医研修は長崎大学病院内科専門研修プログラムでなさっているのですね。

川上そうです。長崎県で医療をしていきたかったので、入局することは以前から考えており、初期研修終了後に入局しました。専攻医研修は1年目、2年目を長崎原爆病院で、3年目を長崎大学病院で行うことになっています。長崎原爆病院に来たのは医局人事です(笑)。でも初期研修でお世話になった病院で慣れていますし、初期研修の頃から指導医の先生方には優しくご指導いただいていますので、疑問に思ったことを尋ねやすく、コンサルトもしやすいです。医局でも先生方に気軽に話しかけたり、ご相談もしやすいです。スタッフの皆さんも顔見知りの方々が多くいらっしゃるので、働きやすいですね。

長崎大学病院の内科専門研修プログラムの特徴はどのようなものですか。

川上病院内に内科専門医育成所、通称、内科ハブセンターというサポートセンターがあります。J-OSLERの症例がどのぐらい進んでいるのかをしっかり管理していただけていて、「こういうことをした方がいい」などのアドバイスをいただけたり、相談にも乗ってくださるので、研修しやすいです。

今はどのようなスケジュールですか。

川上基本的には入院患者さんを診ています。月曜日は新規患者さんの外来を担当することがたまにあります。月曜日、水曜日、金曜日は関節エコーの日なので、そこで勉強させていただくこともあります。

専攻医研修で勉強になっていることはどのようなことですか。

川上入院患者さんを中心に診ているのですが、リウマチや膠原病にとらわれず、救急外来から入院される患者さんを担当することもありますので、幅広い経験ができていると感じています。コロナ禍ですので、新型コロナウイルス感染症だけなく、ほかの感染症も診ますし、様々なコモンディジーズを診るなど、あらゆる分野で勉強になっています。

専攻医研修で印象に残っていることはありますか。

川上一人一人に寄り添った診療を心がけているので、一人一人が印象に残っています。その中で専攻医になってすぐの4月の輪番当直の日にリウマチ・膠原病内科の患者さんが重症で運ばれてきたことがありました。リウマチ・膠原病内科は重症や緊急性のあることがあまりない診療科なので、その方が運ばれてきたときには少しあたふたしましたが、すぐに大学病院に転院させることができました。私がほとんどを診たわけではありませんが、とても印象に残っています。

初期研修医の指導にあたって、心がけていることをお聞かせください。

川上できれば一緒に診察をして、仕事の仕方などの初歩的なことを教えられたらなと思っています。

日本赤十字社長崎原爆病院で実現したキャリアはどのようなものですか。

川上初期研修医の頃から含めて、コモンディジーズへの対応はかなり上達できたかなと思っています。また、エコーなどの勉強会にも行かせていただいて、勉強する機会をいただいています。

今後のキャリアプランをお聞かせください。

川上まずは内科専門医を取得して、その後はリウマチや膠原病などのサブスペシャリティに進んでいきたいと考えています。

仕事とプライベートの両立

同期の結婚式にご出席された川上先生

同期の結婚式にご出席された川上先生

ワーク・ライフ・バランスをどのように心がけていらっしゃいますか。

川上チーム制で働いているので、オンオフの区別はできているのかなと思います。休日はリフレッシュするようにしています。

ご趣味など、プライベートについて、お聞かせください。

川上学生の頃からバドミントンをしています。身体を動かしたくなったら、今もバドミントンをしています。休日には出かけたり、ショッピングに行ったりすることが多いです。

座右の銘などはありますか。

川上決まりきった感じですが、「初心忘れるべからず」と「継続は力なり」です。患者さんやご家族に寄り添った診療をしていきたいという初心を忘れないようにしたいです。そして、医学界は進歩が著しいので、医師は一生、知識の更新が必要な職業だと思います。これからも勉強を継続し、研鑽を積んでいきたいと考えています。

  • 川上先生の1日のスケジュール

長崎原爆病院の働きやすさ・福利厚生

先輩後輩との送別会に出席された川上先生

先輩後輩との送別会に出席された川上先生

福利厚生についてはいかがですか。

川上私たちが有給休暇や振替休日をしっかり取れるように、事務の職員さんがいつも気にかけてくださっており、そういう休暇を使いやすい環境になっています。働きやすさで言うと、病院全体が働き方改革を進め、仕事内容を改善している中で、リウマチ・膠原病内科はチーム制を取り入れているので、休日も取りやすく、オンオフの区別をつけやすいです。休日の希望も通りやすいですね。リウマチ・膠原病内科は私を含め、3人の常勤医師がいますが、チームで診ているので、上の先生方もご家族のご予定があったりすると、私を含め、別の医師が入ったり、私も休みたいと言えば休みを取らせていただける環境です。

育児短時間勤務制度を使われている先生方は多いですか。

川上当院は女性医師がそこまで多いわけではなく、内科の女性常勤医も3人ですし、麻酔科、眼科に何人かいらっしゃるぐらいですが、育児短時間勤務制度を使っているママさん先生はいます。

院内保育所も完備されていますよね。

川上あります。女性医師が安心して、働ける環境だと思います。院内保育所は看護師さんや職員さんはもちろん、男性医師で使っている方もいらっしゃいます。

病児保育所はありますか。

川上ありません。

女性医師の会のようなものはありますか。

川上これもないですね。

初期研修医時代、お住まいは寮でしたか。

川上私は実家から通っていました。当院には寮がなく、家賃補助があります。家賃の半額をいただけるのですが、上限が28500円となっています。多分、皆が助かっているはずです(笑)。

ほかに何かありますか。

川上学会の旅費も出していただけるので、助かっています。これまで何度か学会に参加させていただき、研鑽を積むことができました。昨年度は発表できなかったのですが、今年度は4月に福岡で日本リウマチ学会の総会・学術集会があるので、研修医の頃から担当させていただいている患者さんの症例を発表する予定です。指導医の先生方も優しいので、そういう準備も手伝ってくださいます。この前も研修医が当科で発表したのですが、そのときも指導医の先生方が手伝っていらっしゃったので、良い発表ができていました。

直撃! Q&A

初期研修での人気の秘密は?

川上先生 救急車の台数が多く、初期研修医がファーストタッチするため、初期対応の勉強ができることだと思います。毎年15人前後のほど良い人数ですし、楽しく研修できます。指導医の先生方もとても優しく、質問したら様々な答えが返ってくるので、勉強になる環境です。

医師として、影響や刺激を受けた人はいますか。

川上先生 まだ卒後3年目ということもあり、これまで関わってくださった全ての先生方の知識や経験を吸収させていただいています。その意味で、影響や刺激を受けた方はこれまで関わってくださった全ての先生方ですね。

日本赤十字社長崎原爆病院の救急はいかがですか。

川上先生 長崎市内は輪番制になっており、4日に1日、輪番日が回ってきますが、輪番日はやはり救急車が多く来ます。

当直の回数はどのぐらいですか。

川上先生 月によってまちまちなのですが、2回か3回ぐらいです。輪番当直は1カ月から2カ月に1回です。どちらも上級医として入っています。

当直ではどんなことが勉強になりますか。

川上先生 初期対応ですね。緊急性が高いかどうかの判断など、初期研修医と一緒に頑張っています。

メッセージ動画

病院アピール

概要

  • 病院外観
  • 名称日本赤十字社 長崎原爆病院
    所在地〒852-8511 長崎県長崎市茂里町3番15号
    電話番号095-847-1511
    開設年月昭和33年5月
    院長谷口 英樹
    休診日土曜日・日曜日・祝日
    5月1日(日本赤十字社創立記念日)、12月29日~1月3日(年末年始)
    病床数315床

診療体制

診療科目・部門

消化器内科、呼吸器内科、血液内科、循環器内科、糖尿病・内分泌内科、脳神経内科、リウマチ・膠原病内科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、呼吸器外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、整形外科、形成外科、婦人科、麻酔科、緩和ケア内科、放射線科、放射線治療科、薬剤部、看護部、研修医、医療技術部 検査課、医療技術部 医療機器管理課、放射線科部、病理診断科部、リハビリテーション科部、医療社会事業部

認定・指定一覧

    • 健康保険、国民健康保険療養取扱医療機関
    • 臨床研修指定病院(基幹型)
    • 原子爆弾被爆者医療指定病院
    • DPC対象病院
    • 労災指定病院
    • エイズ協力病院
    • 救急告示指定病院
    • 長崎DMAT指定病院
    • 病院群輪番制病院
    • 原子力災害医療協力機関
    • 地域がん診療連携拠点病院
    • 地域医療支援病院
    • 地域災害拠点病院

学会認定

    • 日本赤十字社後期研修コース(外科)認定
    • 日本赤十字社後期研修コース(麻酔科)認定
    • 日本赤十字社後期研修コース(糖尿病・循環器病)認定
    • 日本赤十字社後期研修コース(呼吸器科)認定
    • 日本内科学会認定医制度教育病院
    • 日本血液学会認定血液研修施設
    • 日本リウマチ学会教育施設
    • 日本糖尿病学会認定教育施設
    • 日本肝臓学会認定施設
    • 日本消化器内視鏡学会認定専門医指導施設
    • 日本消化器病学会認定施設
    • 日本呼吸器学会認定施設(内科系)
    • 日本呼吸器内視鏡学会専門医認定施設
    • 日本がん治療認定医機構認定研修施設
    • 日本感染症学会認定研修施設
    • 日本大腸肛門病学会認定施設
    • 日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
    • 日本胸部外科学会認定医指定施設
    • 日本外科学会外科専門医制度修練施設(JSS)
    • 日本消化器外科学会専門医修練施設
    • 日本乳癌学会認定施設
    • 日本整形外科学会専門医研修施設
    • 日本皮膚科学会認定専門医研修施設(JDA)
    • 日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修指導施設
    • 日本眼科学会専門医制度研修施設
    • 日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設
    • 日本麻酔科学会麻酔科認定病院(麻酔科標榜認定施設)
    • 日本IVR学会専門医修練施設
    • 日本病理学会病理専門医研修認定施設B
    • 日本臨床腫瘍学会認定研修施設
    • 日本病態栄養学会認定栄養管理・NST実施施設
    • 日本栄養療法推進協議会認定NST稼動施設
    • 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医教育施設拠点教育施設
    • 日本神経学会准教育施設
    • 日本高血圧学会専門医認定施設
    • 呼吸器外科専門医合同委員会認定基幹施設
    • 日本医学放射線学会放射線科専門医修練機関(修練部門:画像診断・IVR、核医学、放射線治療)
    • 日本放射線腫瘍学会認定施設(放射線治療)
    • 日本静脈経腸栄養学会NST稼働認定施設

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