専門研修インタビュー

2024-06-01

坂総合病院(宮城県)若手医師 成重さつき先生(産婦人科)(2024年)

坂総合病院(宮城県)の若手医師、成重さつき先生(産婦人科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2024年に収録したものです。

公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院

〒985-8506
宮城県塩竈市錦町16-5
TEL:022-365-5175
FAX:022-366-2593
病院URL:https://www.m-kousei.com/saka/

成重先生の近影

名前 成重(なりしげ) さつき 先生
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 山形県新庄市・山口大学 / 2017年
初期研修施設 坂総合病院
専攻医研修科目 産婦人科
緩和ケア研修会修了、新生児蘇生法普及事業(NCPR)Aコース修了など。

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 私は高校卒業後、山形県の職員になり、県立病院などに勤務していました。ある県立病院の産婦人科には大学医局からの派遣医師が勤務していたのですが、医師不足から派遣が途絶えがちになっていたのです。互換できる病院を探そうにも近隣の病院は既に産婦人科を閉じていたりして、地域の方たちが困っていました。医師の勧誘も難しく、勧誘が難しいなら、自分で産婦人科医になった方が早いと思い、医師を目指しました。

学生時代の思い出をお聞かせください。

 山口大学では3年生のときに研究を行い、「修学論文」を作成する期間があります。当時は各教室の先生方の繋がりを活かして、海外に行かせていただけるチャンスがありました。おそらく私の学年がその1期生なのですが、私はハーバード大学のパブリックヘルスの大学院に留学させていただいたのです。そこで予防医学などの公衆衛生を学んできたのですが、それは現地でないと経験できなかったことですし、本当に良い思い出になっています。

初期研修で坂総合病院を選んだ理由をお聞かせください。

 医師を目指すにあたり、仕事を退職して予備校に通っていたのですが、その予備校に坂総合病院の先生が講師としてお話に来てくださったことがありました。今は救急科の科長をしている佐々木隆徳医師ですが、そのお話に魅力を感じ、大学生になってから見学に伺ったのです。そこで当時の初期研修医やその上級医が皆さんがとても生き生きと働いておられたのを拝見しました。また職員の方が学生に対しても、研修医に対しても手厚く対応されている姿も拝見し、良い雰囲気の病院だと感じました。そして当時の研修医の先生と繋がりができ、その後、何回か見学したり、先生方と食事に行ったりしているうちに、当院で研修したいと考えるようになりました。

初期研修はいかがでしたか。

 学生時代に結婚し、国家試験の直前に出産したので、初期研修は一言で言うと大変でした。でも、そういう境遇を考慮していただきながら研修することができました。そういうケースは私が初めてだったようなのですが、夜は遅くならないようにしてくださったり、当直の研修は日中の救急当番の研修に振り替えるなどの調整を柔軟にしてくださり、不足のない形で研修内容を作っていただきました。

成重先生の近影

医師を目指されたときから産婦人科を目指しておられたのですか。

 医師を目指したきっかけが産婦人科医不足を目の当たりにしたことですので、産婦人科を目指すつもりでいました。しかし、実際に仕事を辞めて受験勉強を始めたものの、もともと文系でしたし、浪人期間も長くなりました。大学入学後はストレートに進級できましたが、子育てしながらの初期研修はとてもきつく、余裕がなくなってしまい、産婦人科医になりたいという夢を見失いかけて、その道に真っ直ぐ進めなかったのです。初期研修では救急科や麻酔科などもいいなと思っていたところ、ちょうど当院でトランジショナル研修システムが始まったので、それに乗りました。このトランジショナル研修は初期研修終了後に1年間の猶予を与えていただくもので、自分の興味のある分野を学んだうえで専攻を決めるというものです。その猶予期間に色々な経験をさせていただき、やはり産婦人科だと志望先を再確認できたので、産婦人科に決めました。そして、このトランジショナル研修の間に2人目を出産し、育児休暇も取得させていただきました。

そして産婦人科の専攻医研修が始まったのですね。

 専攻医研修を始めるにあたり、東北大学の産婦人科医局に入局したのですが、当院での専攻医研修を希望し、専攻医研修の最後の1年と専攻医研修を終えてからも当院に勤務しています。今後、サブスペシャリティを取るうえでは外の病院に出る必要があるのでしょうが、今のところは当院で学びたいことがありますので、当院でできることをしてから出ようと考えています。

専攻医研修を振り返って、いかがですか。

 楽しかったですね。当院に来る前は東北大学病院と仙台医療センターという規模の大きなところで研修していたのですが、当院に久しぶりに戻ってくると地元の医療、患者さんの背景などを考える医療ができるようになりました。規模の大きな病院だと一面的なことを診がちになりますが、当院では常に外来にいることができる環境でした。外来で診た人の手術をして、そして退院していくところまでを完遂させ、一通りのことを診ていけるので、とても充実していました。

今はどのような勤務内容ですか。

 手術が週に1回で、ほかの日は外来をしています。手術の日も午後から手術ということが多いので、午前中は外来にいます。

成重先生の近影

診療にあたって心がけていることはどのようなことですか。

 痛くないようにということを心がけています。女性が診察台に上がるのは抵抗感もありますし、実はとても辛いことです。一度でも不快でトラウマになるようなことがあれば、「今回はいいかな」と受診を避けるきっかけになりかねません。そうならないようにしたいですし、いくらかでも苦痛を軽減でき、かつ、それでもしなくてはいけない検査や治療などをできるようにと技術を磨いているところです。

サブスペシャリティとして、どのような分野を考えていらっしゃいますか。

 女性のヘルスケアと内分泌などに興味を持っています。若い方からご高齢の方まで、大抵の女性は色々なことを我慢して生活していると思うのですが、病院に来ていただけるとこんなに良くなるのだということを伝えたいですね。女性のヘルスケアを通して、その方の生活に介入し、生活の一助になりたいと考えています。

日々の業務の中で、専攻医研修で学んだことがどのように活かされていますか。

 3年間の専攻医研修を行うと、ニッチな分野は別にしても、手術も含めて一通りのことができるようになります。そのお蔭で、例えば外来では最初から「こういう選択肢もあります」という提示をリスクや副作用の説明も含めてできるようになりました。一通りのことを経験して分かっているからこそ説明ができるので、患者さんの利益にも繋がっているのではないかと思っています。

医療チームの一員として大切にしていることは何ですか。

 ほかの科でも同様かもしれませんが、産婦人科は主治医制でもあり、チームで診ることもしています。そのため、病棟でも「この患者さんはいつ手術を受け、こういう状態だ」「この患者さんは化学療法をしている」といった状況を皆が把握しています。医師が一人欠けたとしてもほかの医師が診ているので大丈夫なのだということを実践している診療科だと思います。私としては外来で診ている患者さんをほかの先生方に診ていただくこともありますので、チーム医療を前提としたカルテ記載など、カルテを開けば誰でも分かるような情報共有を心がけています。

成重先生の近影

医師としてのキャリアで最も誇りに思う瞬間はいつですか。

 私が専門にしていきたいヘルスケアの領域は生活に直結していて、QOLを目に見えて改善することができる分野だと思います。例えば骨盤臓器脱の方は手術をすると症状が劇的に良くなるのですが、「良くなったよ、ありがとう」と言っていただけたときなどは嬉しいです。

最近の医療技術の進歩で、特に注目しているものはありますか。

 不妊治療や相談にいらしている方は卵子の発育の確認などで何度も通院をする必要があります。しかし最近は排卵のチェックができるおりものシートができたので、少し楽になったのではないかと思います。また不妊の領域だと自己注射をしたり、通院せず、自宅でできるようになると患者さんの負担が減りますね。さらに子宮鏡にも注目しています。最近は使い捨てのものも出てきましたし、そういうものが入ってくれば全身麻酔をしなくても日帰りで早期発見や評価ができるようになりますので、期待しています。

将来はどのような医師を目指していらっしゃいますか。

 私の場合は当院以外の病院に勤務する可能性があります。もし当院を離れたときに、当院の先生方や私を知っている先生方から「あの先生がいるから、あの病院に紹介しよう。あの先生なら間違いないから」と思っていただけたら嬉しいですし、そういう医師を目指していきたいです。

これから医師を目指す人たちへのメッセージをお願いします。

 医学生の皆さん、こんにちは。宮城県塩竈市の坂総合病院で働いています。産婦人科に興味のある方もない方も是非お待ちしています。来てみて分かることも沢山あるかと思いますし、私のような背景が色々ある人でも柔軟に受け入れる器のある病院だと思います。試しに一度、来てください。お待ちしています。

【動画】成重先生

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