指導医インタビュー

社会医療法人 雪の聖母会

聖マリア病院

福岡県久留米市津福本町422番地

名前
井上 智博 先生
職歴経歴
医師になる以前は歯科医師として大学病院にて勤務。一念発起し、琉球大学医学部に学士編入をし、医学の道へ。2013年に琉球大学を卒業後、聖マリア病院にて初期研修を受ける。初期研修終了後、専攻医として引き続き聖マリア病院にて勤務。聖マリア病院の救急科医長として現在に至る。
学会等
・日本救急医学会救急科専門医
・歯科医師免許
・BLS/ACLSプロバイダー、インストラクター
・JATECプロバイダー
・JPTECプロバイダー
・日本DMAT隊員
・福岡県DMAT隊員

まず、先生が医師を目指したきっかけを教えて下さい。

実は医師になる前は、九州大学歯学部歯学科を卒業し、歯科医師として働いていました。大学医学部附属病院の歯科口腔外科で勤務していた時に、歯の治療をしている患者さんが急変して、そこに大学病院の医師が駆けつけ、迅速に対応している現場を目の当たりにして、歯科医療だけではなく、医療全般に興味持った為、一念発起して医師を志しました。

聖マリア病院の特徴を教えてください。

聖マリア病院は年間10,000件以上の救急車を受け入れている総合病院で、名前の通り「カトリックの愛の精神」のもと、「断らない医療」を心がけています。多数の診療科を有しており、高齢社会、コロナ禍における現在でも、1次救急から3次救急までを受け入れている病院です。対応している医療圏としては久留米市を中心に福岡、佐賀両県のほぼ全域と熊本県北部、大分県西部、長崎県東北部からの受け入れ要請にも応えています。
急性期医療だけでなく、法人関連の聖マリアヘルスケアセンター、介護老人保健施設 聖母の家、訪問看護ステーションとも連携をし、慢性期医療まで含めた対応を行っている病院です。

先生が救急医になったきっかけをお聞かせください。

初期研修が終わった後、進路を決める際にかなり悩んだのですが、歯科医師として勤務していたこともあって細かい手技には興味がありました。その為、脳神経外科や形成外科などの細かい手術をする診療科も考えていましたが、当時既に結婚して子供もいたという生活環境を考えると、夜間のオンコール体制、祝日の体制に少し不安があったのと、入局したところによっては遠方の病院への派遣の可能性もあり、悩んでいました。そんな中で、自分が医師を志すきっかけとなった歯科治療中の患者さんの急変という出来事を思い出し、具合を悪くした患者さんの最前線で働く救急医療という選択肢が出てきました。ありがたい事に、聖マリア病院の救急科では遠方への派遣もなく、久留米に居を構えたまま働き続ける事が出来ると言うことに加えて、現在の上司でもある古賀診療部長から助言も頂き、当院で救急医として働くことを決意しました。

先生がいらっしゃる救急科の特徴をお聞かせください。

当院の救急科は、整形外科専門医のセンター長、脳神経外科専門医の診療部長、循環器内科専門医の主任医長を始め、合計12名の医師が所属している診療科であり、救急車の対応で初療にあたるのはもちろん、時には院内での急変時対応も行っています。
年間10,000件以上の救急車対応を行っていますが、シフト制で勤務を組んでいますので、過労にならない様に診療科として取り組んでいます。所属している12名は全員既婚者なので、診療部長の方針で、家庭行事を優先できるよう配慮を頂いています。もちろん勤務が長引くこともありますが、働き方改革もあって、オン・オフの切り替えは出来ていると感じています。

.聖マリア病院の救急科専門研修プログラムの特徴についてお聞かせください。

当科の専門研修プログラムの特徴を一言で言うと、フレキシブルな研修だと思います。幸いな事に12名の医師が所属しているので、勤務シフトの相談もしやすいですし、他科の専門医資格を持っているダブルボードの医師もいますので、診療面での相談もしやすいと思っています。将来は他の診療科に進むことを決めている者や、実家が開業医でその後を継ぐという者もいます。しかしながら、医師年数が浅いうちは急性期医療に対応が出来るように救急医療に没頭したいという考えで皆入職していて、そういったキャリア形成の多様性にも対応できるプログラムです。また、条件が整えば国内留学にも行けるようになっています。その為、各専攻医のキャリア形成に必ずプラスになるようなフレキシブルさを持っていると感じています。

どのような時に救急科のやりがいを感じますか。

そのままのことですが、やはり命を救う事が出来たときですね。数年前に、院内で分娩後に意識がなくなった妊婦さんがおられまして、勤務していた私が応援で駆けつけた時には心肺停止状態でした。分娩中の大量出血を契機に、致命的な状態となっていました。その後心臓マッサージや人工呼吸器の管理、大量の輸血など、救急科を含めた多くのスタッフが尽力して集中治療を行いました。経過中に心停止を2回起こしたのですが、最終的に意識を取り戻して、後遺症もなく自分が産んだ子供を抱いて退院することが出来たというエピソードがありました。そういう場面に居合わせる事が出来た時に、救急医療をやっていて良かったなと思いましたし、医師を志したきっかけと重なる場面も合ったので、医師になってよかったなと強く思いました。

これまでの後期研修と新しい専門医制度になってからとで変わった点など有りますか。

私が受けた時の旧専門医制度と比較すると、連携施設での地域診療だったり、論文の提出だったりは旧制度にはなかった点ですね。私の時は聖マリア病院だけで勤務して、必要年数や症例を確保する事で専門医資格を取っていくという流れだったのですが、いまは聖マリア病院で勤務する以外にも、連携施設での研修が必要になっています。その為、専攻医個人が研修スケジュールを組み立てるのも大変ですし、教育担当責任者である診療部長が連携施設での研修に配慮したシフトを組まないといけないので、全体的に大変さは増しているのかなと思っています。しかし、当院以外の病院で診療経験をするという事は、今後救急医療を行う上で絶対にムダにはならないので、良い方向に変わったのではないかと感じています。

先生は研修医時代どのようにお過ごしでしたか? 今の研修と違うところがあればお聞かせください。

私が研修医として当院にお世話になっていた時は、ちょうど新病棟や、研修医の寮が建築された年でした。研修中は一例でも多く症例が診られれば良いなと思っていて、要請がなくても1日に何回も救急室を見に行ったり、早朝5時半とかに病棟に顔を出して、採血とかを看護師さんの代わりにさせて頂いたり、自分が出来ることは何かないかなと常に探していましたね。(笑) すると、顔を覚えてもらえたのか、「この手技をやってくれないか」、「これを手伝ってくれないか」と声をかけて貰えるようになったんですね。当時はあまり意識していなかったのですが、いま思えばその一つ一つが貴重な経験だったなと思います。いまは働き方改革もあって、私がやっていたような、正規の勤務時間以外でなにか業務をする事は難しくなっており、しがらみが強くなっているのかなと感じています。しかしながら、いまはコロナ禍でテレワークが推進されている事もあって、医療情報へのデジタルアクセスは以前よりも格段にしやすくなっていると思います。そのため、働きやすさや働き方などは私が研修していた6~7年前からは変わっているとは思いますが、各個人の研鑽の仕方によっては、いまも昔も変わらない質で研修が出来ると考えています。

指導される際に気を付けている事はどのような事でしょうか。

医療のスタンスや手技の得意・不得意は人それぞれなので、医学的な事については教科書に載っているような普遍的な事しか伝えることは出来ませんが、私が気をつけているところで言えば、マナーや患者さんと周囲に対する配慮の部分かなと思います。例えば、「がん」とか「厳しい」という単語を、まったく関係のない患者さんのベッドサイドで簡単に出してしまったり、未告知であった病変の事を、つい口を滑らせてしまったりした時や、患者さんやご家族、救急隊などの外部の方たちへの言葉遣いが好ましくない時は指摘するようにしています。言葉遣いやマナーについては気をつけるだけで変える事が出来ますし、気をつけるだけで医療の質も変わってくると思うので、そういう部分は特に意識して指導するようにしています。

巣立っていく先生方をご覧になって、どのような医師になって欲しいと思われますか。

聖マリア病院で初期研修・専門研修を受けられるからには、胸を張って患者さんを診ることが出来る医師になってほしいと思いますし、私自身もそうなりたいと思っています。例えば脈を取るだけ、問診をするだけでも患者さんに安心感を与える事ができるかもしれませんし、これだけ多くの救急患者さんが来る病院ですので、どんなに軽症であっても経験する1症例1症例が今後の医師人生の糧になると思っているので、そういった意味で胸を張って診察できる医師になってほしいと思います。

これから研修先を選ぶ初期研修医に向けてメッセージをお願いします。

専門研修先を決めるというのは、初期研修先を選ぶ以上に悩むと思います。私も実際たくさん悩みました。専門研修がその後の医師人生を左右する事になるので悩むのは当然ですが、決めた後も悩み続けると思います。例えば医局に入るだとか、医局を辞めるといった選択肢もあるので、はたしてこの選択で良かったのだろうかと悩むことが今後もあると思います。しかし、私は進む道を決めた後に一生懸命頑張れば、その進路は正解になると思っています。私自身、たくさん悩みましたが、初期研修を終えた後、自分なりに一生懸命頑張ってきて、この道を選んでよかったと思っています。そのため、自分が下した選択が良かったと思えるようにする為にも、専門研修先で研修に励んで下さい。そして、専門研修で励むためには、やはり初期研修が基になるので、まず現在の初期研修をしっかり励んで下さいと伝えたいですね。みなさんが決めた以上、その道が必ず成功になりますので、邁進していって下さい。

最後に聖マリア病院のPRをお願いします。

当院は救急搬送の多い病院です。時にその数に忙殺されることもありますが、様々な症例を経験する事が出来ます。医学的な「軽症である」、「重症である」といった部分だけでなく、それに付随する高齢社会、コロナ禍といった社会背景など、医学的な内容以外にも触れる機会も多いです。当院で経験する一つ一つの事が医師人生の糧になりますので、当院での研修を考えられている方はぜひ見学に来て頂けたらと思います。