指導医インタビュー

日本赤十字社

深谷赤十字病院

埼玉県深谷市上柴町西5-8-1

名前
伊藤 博 院長
職歴経歴
1954年に千葉県に生まれる。1981年に千葉大学を卒業後、千葉大学医学部附属病院で研修医となる。1989年に千葉大学第一外科医員となる。1991年に千葉大学第一外科助手となる。1999年に千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学講師となる。2002年に千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学助教授となる。2005年に深谷赤十字病院に副院長、第一外科部長として着任する。2013年に深谷赤十字病院院長に就任する。
学会等
日本外科学会外科専門医・指導医、日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医、日本肝胆膵外科学会名誉指導医、日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、身体障害者福祉法第15条指定医(肝臓機能障害)、臨床研修指導医、臨床研修プログラム責任者養成講習会修了、緩和ケア研修会修了、難病指定医、肝炎医療研修会受講など。

深谷赤十字病院の特徴をお聞かせください。

埼玉県北部地域の急性期医療を担う中核病院として、救命救急センターが設置され、がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの多くの指定を受けており、公的総合病院として、地元医師会や地域の病医院などとの医療連携を進めながら、質の高い、安全で安心な医療の提供に努めています。

伊藤院長がいらっしゃる外科についてはいかがですか。

消化器領域疾患を中心に、乳腺、ヘルニアなどを含め、年間700件ほどの手術を実施しています。地域基幹病院として緊急手術の割合が高く、約20%を占めているのも特色です。ご高齢の患者さんの中には心臓病や腎臓病など、複数の合併症を持つ方が多くいらっしゃいますので、循環器科や腎臓内科など、他科の医師と協力して治療にあたっています。また、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けるなど、地域におけるがん診療の連携、支援の推進にも重点を置いて診療を行っています。2019年6月には緩和ケア病棟も開設し、現在ではがん患者さんを最後まで支える体制が整っています。

深谷赤十字病院の初期研修の特徴もお願いします。

1学年の定員が8名と、400床を超す規模の病院としては1人あたりの症例数が多いのが特徴です。上級医の指導のもとで、各自の技能習得レベルに応じて、手技も積極的に行ってもらっています。研修プログラムの特徴としては融通性、自由度の高いプログラムを作るよう、心がけています。研修スケジュールを組む際には救急診療科研修の前に必ず麻酔科を回るように調整をしています。麻酔科で気管挿管や静脈確保等の手技をしっかり学んでから救急診療科研修を行うことで、救急の現場でも落ち着いて対応をすることができます。当直帯での救急対応では、直接来院された患者さんに対しては初期研修医がファーストタッチを行います。上級医の指導のもとで、主体的に診断、治療を行うことができ、日々実践的な力が積み重ねられていくことが実感できます。当直帯での経験が初期研修医の救急疾患対応の臨床能力を高めることに繋がっているのは間違いありません。

初期研修の特徴として、ほかにどういったことが挙げられますか。

厚労省の到達目標達成のために、非必修科ローテーションを設けているのも特徴です。これは精神科、整形外科、形成外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科から4診療科を選んで1週ずつ研修するものです。緑内障、白内障、中耳炎など、経験すべき疾患を1年次のうちに学ぶことによって、到達目標の8割近くを1年次で達成することができます。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1年目の研修医が8人で、うち男性が5人、女性が3人です。2年目の研修医も8人で、こちらも男性が5人、女性が3人です。当院は地理的にどの大学からも遠いということもあり、公立、私立問わず、様々な大学出身の研修医が集まっていますが、皆すぐに打ち解けられるのも特徴です。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

当院では医師としてスタートを切る2年間で最も重要なのは臨床医としての基本的な態度や習慣を確立することだと思っています。知識や技能は医師を続け、専門を究めていく過程で自然と身に付くものですが、患者さんのもとに足を運んだり、コメディカルと良好なコミュニケーションを取ったりすることははじめに身に付けなければ、裁量権がどんどん増していく中では往々にして疎かになってしまうものです。当院では臨床医としての基本的な態度や習慣を身につけてもらうことを指導するうえで最も重要なことと考えています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

全体の傾向としては真面目な研修医が増え、昔と比べると、やんちゃな研修医が減っているという印象ですが、逆に言えば消極的であると感じることもままあります(笑)。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

最初から志望が決まっている人、例えば過去には麻酔科志望の研修医が選択診療科を全て麻酔科にして、2年間で300例を超すような症例数を経験したこともあります。最近では外科志望の研修医が2年次のうちに学会に入会して、本来3年目でローテートするような消化器外科以外の心臓血管外科、小児外科、呼吸器外科などを研修医のうちに計画的に回るような例も複数ありました。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

この2年間に臨床医としての基本的な態度や習慣をしっかり身につけて、専門の道を歩んでいってほしいということです。それがしっかりできていれば、臨床医としてやっていけますし、逆にそこが疎かになると、どんなに知識や技術が優れていても、臨床医としては足りないものが出てきて、偏った医師になってしまうと思います。

先生が外科を専攻されたのはどうしてですか。

モノを作ることや細かい作業がもともと好きだったこともあり、外科系の診療科に憧れていたからです。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

初期臨床研修制度に新専門医制度の影響が良くも悪くも出ている可能性があります。新専門医制度が始まる以前はほとんどの医師が自身の希望通り入局できていましたが、現在ではいわゆる大学生の就活のように、2年次のかなり早い段階で就活のようなものを始めざるを得ない状況です。11月に試験があるので、実質2年次の半分近くを就活に費やさなければなりません。そういった意味で、2年次の研修の中身が薄くなったり、充実度が低くなったりしてしまう面があるように思います。しかし初期臨床研修制度自体は多くの研修医に支持されているので、制度そのものは今後も続いていくと考えています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

初期臨床研修病院を選ぶ基準は各個人が何を重要視するかで大きく異なるようです。友人や恋人といった個人的事情や経済的な理由を重要視する人もいるでしょうが、当院の印象ではやはり地域で選ぶ人は多いように感じます。当院に関して言えば、豊富な症例数やプログラムの融通性、また臨床医としての基本的な態度や習慣を身につけてもらうことを特徴としていますので、そういった点を重視してくれる人が来てくれたらいいですね。厚生労働省が掲げる臨床研修の基本理念では「臨床研修は、医師が、医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身につけることのできるものでなければならない」と謳われています。つまり、何科に将来進もうとも、頻繁に遭遇するであろうcommon diseaseに対するプライマリケアができるというのが初期研修の理念の一つですが、そういった意味で、当院はその理念に基づいた研修が行えますから、初期研修に非常に適した病院であると自信を持って言えます。最後に、雰囲気などは言葉でなかなか伝えられないので、見学に実際に来て、職場環境、施設、設備、周辺環境などの研修環境が自身に合っているか、それを自分で見極め、実感することが重要だと思います。