指導医インタビュー

長崎大学病院

長崎県長崎市坂本1丁目7番1号

名前
山根 裕介 先生
職歴経歴
1980年、長崎県に生まれる。長崎大学医学部を卒業し。国立病院機構長崎医療センターにて研修を受ける。2007年から長崎大学病院腫瘍外科に入局・勤務したのち、2008年1月より大分県立病院にて勤務。2008年4月より佐世保市立総合病院にて勤務し、2009年より国立成育医療研究センター、2011年に佐世保市立総合病院へ戻り、2013年より長崎大学病院腫瘍外科に勤務し、現在に至る。2018年より病院助教授に就任する。
学会等
・日本外科学会 専門医
・日本小児外科学会 専門医
・日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
・日本周産期・新生児医学会 認定外科医
・日本小児がん・血液がん学会 認定外科医

長崎大学病院の特徴をお聞かせください。

実は事前に頂いた質問の中で1番悩んだ質問なんですよね・・・(笑)。皆指導が熱心だと思います。外科だけでなく様々な診療科で指導に熱心な先生が多くいらっしゃいますし、僕は長崎大学出身ですが、長崎大学以外の先生も多いので垣根が高くないのが一番の特徴だと思います。

長崎大学病院の外科プログラムの特徴を教えてください。

これが一番答えられる質問です!(笑)長崎県内の外科専門研修プログラムは長崎大学病院にしかなくて、1県1プログラムとなっています。当院の外科は、私の所属する腫瘍外科や移植消化器外科、心臓血管外科等で構成されています。関連病院の形態が全く崩れていないので、新しい専門研修プログラムになっても今まで通りの研修で大丈夫でした。プログラム自体は、まず大学病院で研修してもらって、全臓器・全グループを2か月単位(グループによっては1か月の時もあり)でローテーションします。その中で臓器の事、もしくは緊急対応の事、大きい手術の術前・術後管理を含めて勉強してもらっています。そして後期研修2年~3年目に関しては関連病院で、大学病院で学んだことを存分に発揮して貰うというプログラムになっています。若手が修練する関連病院は、特に手術件数が多い所が中心になっていて、執刀経験を多く積む、急患・緊急手術の対応など外科医として成長に必要な経験を積むとういう事については全く困らないシステムになっています。

長崎大学病院は腫瘍外科の中でもいくつかのグループに分かれているかと思いますが、先生のいらっしゃる小児グループではどのような特徴がありますか。

まず、当院の腫瘍外科は、呼吸器外科、上部消化管外科、下部消化管外科、乳腺・内分泌外科、そして僕が所属している小児外科の5つのグループで構成されています。小児外科グループ以外は、標簿の通り臓器別の手術になっているのですが、小児外科グループは腹部手術だけでなく、胸部や頸部の治療を行うなど、骨とか心臓、目や耳などの特殊なところ以外は、全ての臓器を扱っています。その為、外科の中でも一番ジェネラリストに近いと思いますし、それが1番の特徴だと思います。あとは、胸腔鏡、腹腔鏡と言った内視鏡手術、低侵襲手術にかなりこだわってやっています。大切なお子さんを預かり、手術をさせていただくので、根治性だけでなく、将来的に出来るだけ傷が目立たないように、整容性にも気を配っています。

患者の親御さんにはどのように気を配っていらっしゃるのでしょうか。

気を配ると言うか、どちらかというと、あまり肩肘を張ってもらいたくないので、結構自分の子どもの話をしたりして、コミュニケーションを取るようにしています。「まっ、どこの家庭も同じだね。」とか、「ウチの子もこんな事をしているし、こんなアホな事もしているんですよ。」と言って(笑)。抱っこしたりすることもあります。患者さんファーストで、なにか子供たちにしてあげられる事はないかと常に考えるようにしています。

従来の後期研修と新しい専門医制度に変わってからの違いはいかがでしょうか。

これも結構悩む質問ですね(苦笑)。実は当院に関しては、従来とほとんど変わっていないと思います。というのも、例えば連携施設となった市中病院は、「6ヵ月以上は基幹施設で研修を要する」というプログラムの決まりがあり、直接後期研修医を獲得することが難しいという変更せざるを得ない部分もあったり、大学病院によっては入局後の後期研修1−3年目の間に大学院に進学していたところもあったと思います。一方、元々長崎大学病院腫瘍外科は、新制度であっても、従来の後期研修であっても、3年目は大学病院、4−5年目は関連病院で専門医を取得し、6年以降はサプスペシャリティへ進みつつ、大学院進学という流れでキャリアを積んでいっていたので、大筋はあまり変わってないと思います。また、この新専門医制度になって、研修プログラムが3年間と決められて、そこで専門医を取得しなさいと決まった訳ですから、自分でガツガツ行くタイプではない人もプログラムにのれば専門医を取得できるシステムになっています。当院では、サブプペシャリティ専門医に向けた流れも連動していて、逆にプログラムに沿って様々な面で専攻医に配慮出来るので、動きやすくなったところも多くなったと思います。

長崎大学病院で研修を受けると、専攻医はどの様なスキルが身につけられますか。

色んな職種の方がいらっしゃるので、コミュニケーションスキル(飲み会?トーク力?)ですかね(笑)。まあこれは冗談として、手術的なところで行くと、大学病院にいる3年目は、ベーシックな腹腔鏡手術や開腹の癌症例、胆摘や虫垂切除といった若手外科医の登竜門的な手術を執刀する機会少なく、全体の執刀数としてもたくさん経験出来るという訳ではありません。ですが、手術の中でも若手が担当できるパートを設定したりしていて、様々な形で若手には経験を積んでもらっています。
あとは、外科ハブセンターと言って、腫瘍外科、移植消化器外科、心臓血管外科に入局した3年目(後期研修1年目)はそれぞれの医局にデスクがあるわけではなく、通称「外科ハブ部屋」という別室にデスクを持っています。そこで各々情報交換したり、個人的にセミナーを開いて勉強をしているようです。また外科ハブセンター主催で、ヘルニアセミナーやCVポートセミナーなども開催しており、ハンズオンだけでなく、全国でもご高名な先生を講師としてお招きして講演をいただくという勉強会を比較的スムーズに開催することができるのも大学病院の強みだと思います。スキルアップ、系統的な手術指導はもちろんの事、高難度手術・困難症例の周術期管理、合併症の対応、など手術に関することだけでなく、医師としての姿勢、カンファランスでのプレゼンテーションスキル、全国の大学や病院とのつながりが作れたり、論文発表や学会発表といった学術的な事も含め、総合的に研鑽が積めるので外科医として必要なスキルはすべて身につける事ができると思います。

長崎大学病院で研修を終えた方はどの様なキャリアアップが望めますか。

大学病院では、臨床・研究・教育を三本柱にしています。臨床は当然手術になるので、大学病院または市中病院で手術を中心にがんばられる方もいらっしゃいますし、研究や論文で力を発揮される方もいれば、大学特有の学生教育に力を入れていらっしゃる先生もいます。関連病院では、研修医・若手外科医の教育に力を入れていらっしゃる先生もいます。最初に述べた三本柱のすべての方向に、キャリアアップの可能性があると思います。
また、仮にキャリアが“アップ”しなくてもここで学んだ事を活かして、次のステージに進まれる方もいらっしゃいますから、色んな形があると思いますし、それをサポートしてくれます。

先生の研修時代はどの様にお過ごしだったのでしょうか。現在の研修との違い等があれ教えてください。

結構飲みには行っていましたね(笑)。今は若い先生たちに「ちゃんと手術の勉強をしてきたか?」と言っていますが、振り返ってみると自分はあまり勉強をしていなかったです(笑)。今の若手はすごく真面目だと思います。今は医学部の講義が出席とか結構厳しいみたいですね。僕の頃はもう少し緩かったので、そういった部分も影響していたのかな、という言い訳をしておきます。
僕は新医師臨床研修制度の二期生で、市中病院で2年間研修しました。今みたいに後期研修医がたくさんいる状況では無くて、結構ベテランの先生と研修医の二人ペアみたいな状態でした。負担は大きかったですが、今思えばストレス耐性がついてそれはそれで良かったのかなと思っています。今は上がいて、中堅がいて、若手がいて、屋根瓦になっている。グループ診療は良い面が多いと思いますが、あえて悪く言えば「誰かがやっているでしょう」的な緩さがある可能性はありますね。
また医療とは直接関係ないですが、昔よりも電子カルテが複雑化しているため、タイピング能力、パソコンへの対応能力がかなり重要ではないのかなと思います。ブラインドタッチは必須ですね(笑)

先生が外科の分野に進まれた動機をお聞かせください。

純粋に自分自身が内科に向いていないなと思っていました。学生の時に経験した、内科の2時間くらい(?)の長いカンファが性に合ってないなと感じて、外科の方が向いているのかと思っていました(笑)。ポリクリで回った小児科にも興味があっんですが、カンファが…もともと子供も好きだし、外科が好きで自分が向いているかなと思い、小児外科を志望しました。いまは天職だなと思っているのですが、振りかえると結構適当な理由ですよね(笑)

指導される立場として、心がけていらっしゃることを教えてください。

僕はせっかちな性格で…よく言えば、1分1秒を大切にしています(笑)。ただ、良くないことですが、せっかちであるが故に、すぐに怒ってしまうんですよね・・・(苦笑)。その時はなるべく感情的になりすぎない様、怒りながらも冷静に、相手の目を見て反応を伺いながら、すぐにフォローをした方が良いのか、少し時間をおいてあとでフォローした方が良いのか気にして指導をしています。若手も怒られた後は自分から話しかけづらいと思うので、怒った後は必ず自分から声をかけるようにしています。
最近の指導は「怒らない、褒める」というのが正解(?)だとよく言われますが、厳しく接するのももちろん理由があります。僕の好きな先生で、四谷メディカルキューブで減量手術をされている笠間和典先生という先生がいらっしゃいます。笠間先生がセミナーで仰っていた、「穏やかな海では腕のいい船員は育たない(A smooth sea never made a skilled mariner)。」という言葉がすごく印象に残っています。まさにその通りだと思っていて、外科に関しては、患者さんの手術・術後経過が芳しくないときもあると思います。そういった状況の中で、厳しい事を経験しておかないと立ち向かえないと思っています。そういう意味でも様々な困難に立ち向かうため、厳しさを知ってもらう指導を心がけています。

最近の研修医や専攻医をご覧になって、どう思われますか。

最近は「働き方改革」が様々な場面で言われていますが、「働き方改革」によって、研修医が17時の定時になると帰りなさいと指示が出ている病院もあるかと思います。そうなると各個人間で9時~17時の仕事量に差が出るのではないかと心配しています。時間をかけて、丁寧に仕事を進めていくタイプの子は、その時間を最初からスパッと切られるわけで、そもそも教育機会を奪われてしまうことになるのではと。格差が凄く生まれる可能性があるのかなと思いますね。
だからこそ、指導する側も教えること、経験させることに優先順位をつけて指導する必要があると思っています。

「印象的な専攻医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

いまはバリバリ消化器外科をやっている4年くらい前の専攻医Hが印象的でした。長崎県内には当院以外に小児外科の学会認定施設がないので、虫垂炎などのcommon diseaseの手術も多く行います。その中で、当院では虫垂切除術の虫垂根部処理を、体内縫合法で行っています。腹腔鏡手術の修練にあたり、縫合結紮のトレーニングは非常に重要で、off the job trainingとして縫合結紮のトレーニング課しているのですが、自主性に任せています。安全性を担保するために、実際手術で行う前に「虫垂根部モデルを単孔式で、6分以内に縫合する」というタスクを課しています。虫垂切除は緊急手術で行うことが多く、2か月間のローテーション中に、症例に当たらない可能性もあります。そんな中、彼は連日コツコツ練習を重ね、2分台でやれるようになり(目標6分以内)、実際の手術でも早くて上手でした。さらに「虫垂根部処理の検討」を「長崎内視鏡外科研究会」で発表してくれて、最優秀演題賞にも選出されました。努力は実を結ぶというんでしょうか、非常に印象に残っています。

専攻医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

もっと頑張れと言いたくなる時もありますが、たぶん自分も昔そう思われていたと思うので・・・沢山遊んで、沢山仕事して、楽しんでやる事が一番ですが、怒られる事も大事なのでとにかく積極的にやってほしいです。いまは理不尽に怒られることはほぼないと思います。ただ、怒られない=諦められている?可能性もあります。怒られることは悪くないことですから、深く考えなくていいと思います。僕も激怒された事が沢山ありますし(笑)。
結局体力的に、精神的に疲れても、何かでモチベーションを上げて・・・みたいな、楽しいことが一番だと思いますが、苦しくてもうまく脳内変換してやってもらえればいいなと思います。

これから研修病院を選ぶ初期研修医に向けて、メッセージをお願いします。

来年度から外科がまた必修になるので、是非、長崎大学で外科をまわる時には腫瘍外科に来て貰えたらと思います。大学病院の割には、ガンガン手術を若手にしてもらっている方だと思います!初期研修医にも執刀機会を持ってもらうよう考えていて、大学病院っぽくない研修でもあると思います。1ヶ月回るだけではシステムに慣れた頃に終わってしまうので、できれば2カ月回ってもらえると、更に出来る事の幅が広がるので凄く楽しいと思います。なので、是非腫瘍外科を2カ月回って下さい!お待ちしております(笑)。

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