指導医インタビュー

医療法人 徳洲会

福岡徳洲会病院

福岡県春日市須玖北4丁目5番地

名前
乘富 智明 先生
職歴経歴
1964年に佐賀県に生まれる。久留米大学を卒業し、久留米大学病院の外科に勤務する。1999年から2年間、北海道大学病院第一外科に勤務したのち、2001年10月に東京大学肝胆膵・人工臓器移植外科へ移局する。2002年10月に福岡大学消化器外科に移局する。2015年10月に福岡徳洲会病院外科に勤務し、2016年10月に福岡徳洲会病院の副院長に就任する。

福岡徳洲会病院の特徴をお聞かせください。

救急病院を基本スタンスとして、福岡市及び近隣の春日市、大野城市、朝倉郡までカバーしています。創立40周年を迎えて新棟に移り変わる際に、4年ぐらい前から放射線治療やPET-CTなども導入して、がんの診療や治療にも力を入れています。

福岡徳洲会病院の専攻医研修の特徴をお聞かせください。

第一として、市中病院でありながら、基幹病院になれるだけの症例数をカバーできる専門領域を持っています。外科研修に関してはサブスペシャリティまで取得できる症例数と資格を有した指導医が在籍しています。専門研修では当院に残っていれば卒後3年目から5年目の基本領域の研修だけでなく、サブスペシャリティまで取得が可能です。
ただし、私はあえて3年間の基本領域の研修を修了した際には当院に留まることはあまり勧めていません。大学院もしくは国内の専門領域の有名施設への、日本語で言うところの研修、英語で言うところのフェローシップトレーニング、そういう専門領域の修練をしに、1回外に出て修行しなさいと投げかけます。外の空気とか、自院だけでは経験できないこともあるので、幅広いところを見て来る期間というのは医師の成長の過程で必要だと思っています。

先生がいらっしゃる外科についてはいかがですか。

日本全国の外科の専攻医の悩みは胸腹部外傷の手術症例の経験が少ないことだと言われています。そういった専攻医は症例数だけでは足りないので、学会が主催する外傷の教育プログラムに参加することもポイントとして数えてあげるというふうにプログラムを組んでいます。裏を返せば、普通の病院では十分な外傷の経験ができないということです。しかし当院は救急病院のため、外傷の手術症例も十分経験できます。そこが有利な部分だと思っています。

福岡徳洲会病院での専攻医研修で、どのようなキャリアアップが望めますか。

ここで専攻医研修が終わる前の最初の2年間で、外科専門医を取得するだけの十分な症例数が集まってしまいます。実際に去年は2年間で大学の方で次の専門研修を受けるために「もう終わりました」と言い残して辞めた人がいます(笑)。それぐらい症例数があります。当然、学会発表をして、論文作成もさせます。そういう意味でも、基本領域としての外科専門医はきっちり3年間で取得できます、学会試験に通るだけの知識も十分につきます。そこで躓かずに最短コースで進んでいけば、次のサブスペシャリティの2年間もしくは3年間もスムーズに行けますよ。ここに残るのも良し、大学に行っても良し、です。

カンファレンスについて、お聞かせください。

毎朝7時半からカンファレンスを行っています。前日の救急症例、初診時の検査所見から始まり、診断治療の過程で適切に診断や処置が行われているか、改善点があるかどうかということを話しつつ、「さて、これからどうしよう」とそれぞれの担当医に指針を与えます。それが終わってから、前日に手術した症例の報告です。手術をしたら、基本的に翌朝までに手術記録はスケッチも含めて完成させています。外科医にとって絵を描くという作業は非常に大事で、絵の中で本当に手術に矛盾がないのか、そして行われた手技は適切だったのか、改善する道があるのかなど、そこまで色々と見ながら指摘があります。それを毎朝1時間ぐらい行っています。
各部門では理想的には毎日実施したいところですが、基本的には各領域週1回ずつやっています。木曜日には翌週手術の患者さんの術前プレゼンテーションをしています。そこでは担当医はデータを整理して「こういう診断ですから、ガイドラインに照らして、こういう手術を行います」という発表をしています。多分に教育的な要素が多いカンファレンスを行うようにしています。

女性の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

女性医師は結構いますが、産休や育休といった休暇制度はほかの職種の方々が普通の会社で取られるのと同じ状況です。労働時間に関してはやはり仕事に集中してしまうと、男性、女性関係なしで、夜遅くまで働いたり、病院に泊まって仕事をしたりというのは出てきます。逆に、それ以上、それ以下で男性、女性を意識することはないですね。

先生が消化器外科を専攻されたのはどうしてですか。

30年前、私が卒業したとき、本当は今ドラマでやっているような救急医になりたかったんです。でも当時はそんなものはありませんでした。当時の救急医の養成プログラムのようなものはほとんどの大学に存在しておらず、救命救急センターのほとんどは外科の先生が出向していて、外科と循環器科、脳神経外科、消化器科の内視鏡治療の人達が寄せ集まってやっていました。その中で、私が学生時代に実習で救命センターを回ったときに、やはりロールモデルとなるような外科の先生との出会いがあったんですね。しかも、一般消化器外科は汎用性が一番高いところで、救急の現場に行くには汎用性は大事なポイントだと思い、そういった理由で憧れた先生の出身医局でもあった一般消化器外科に入りました。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

当時はいわゆる研修医という言葉すらないですよ。「1年目」、「2年目」であったり、ドイツ語で新人という意味の「Neu Herren(ノイヘーレン)」と呼ばれたりしていました。そんな扱いの時代だから、患者さんが手術の日は病院に泊まって、術後管理をしないといけませんでした。週3回ぐらい自分の手術があるから2日に1回は病院で寝ないといけないですし、それ以外に病院の当直があったりするので、ほぼ週5日ぐらいは病院で寝ているわけです。今そんなことやると労基署が入って大変なことになってしまいますよ(笑)。
そういう昔風の研修では研修医はただただ奴隷でした(苦笑)。教えてもらえないから、後ろに立ってメモ帳に書きながら、頭に焼き付けたイメージとメモしたことを照らし合わせて、手術などを覚えていったことが印象に残っています。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどのようなことでしょうか。

山本五十六の言葉で、「やって見せて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず」という言葉があります。私も本当はそうしたいけれども、実際はやっていません(笑)。ただ、私がやってみせて、本人に実践させることは意識しています。気持ちが入っている研修医はそれだけできちんとできるし、ほめる必要がないです。「労働がきつい」や「ブラック」と言う以前に、気持ちが入った研修医はそんなことを気にせずにやります。私の方から「お前、もう帰れ」と言うぐらいにやるので、そんな人には自分の手技を1、2回見せて、助手につけてポイントを少し教えてあげるだけで、ある日突然、「お前、やってみろ」と言っても、きちんとできるのです。
福岡徳洲会病院みたいな、きついと言われる病院に自分からやってくる研修医に気持ちが入っていない人はいません。そういう意味での教育に関する苦労はしたことがないです。私がやることを全部見て覚えろと言い、ある程度できそうだなと思ったら、経験させます。失敗したら、「絶対、俺がリカバーしてやるから安心してやれ」ということは強調しています。その意味では非常に良い病院に来たなと思っています。手を焼く人がいないですし、やる気がある人しか来ないんですよ。

新専門医制度が昨年スタートしましたが、ご意見をお願いします。

制度の立ち上げ自体は非常に混乱していましたね。私が所属する日本外科学会には昔からそういう認定制度があって、試験を行って、それにパスしたら認定する、そして一応5年ごとに更新するというのをずっとやっており、この新しい専門医制度のたたき台にもなっています。そのため、外科医にはあまり違和感がありません。今までとあまり変わらず、ただ教育講習に出る回数が少し増えたと感じています。ただし、新しい制度ではこういう急性期病院のように絶えず手術に携わるという、本来の意味での外科の仕事をしていないと更新ができなくなってしまったんです。残念ながら、外科の資格を持って開業して地域医療に向かわれた方も5年や10年経つと、その資格が維持できなくなるという現象は起こります。恐らく、将来の私の身にも起こるでしょう。その意味では厳しい部分でもありますね。地域医療が崩壊する、大学に人がまた吸収されてしまうという議論がありますが、確かにそういう側面もあるかもしれません。しかし、この世の中が良くなるためにはある程度は必要な制度だろうとは思っています。

これから後期研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

私が昔、先輩に言われ、私自身が経験してやはりそうだなと思って、今も研修医を指導しながら確信していることは「その人の臨床医としての一生の診療態度や生活態度は最初2年間の勤務態度で決まる」ということです。そこでどのくらい気持ちが入った「トレーニングをやるか」です。トレーニングを受けるかではなくて、自らやるかということです。いかに気持ちを入れて一生懸命やるかで、臨床医としての一生が決まります。それはキャリアパスなどというもののさらに根底に流れるもので、「その人が医師として、人として信頼できるか」が決まります。実はそこがしっかりしている人は専門医などはいらないというような感じです。ですから専門医だの、キャリアパスだの、資格を取るとかそういうのは実は本質の議論ではないんです。それを皆が忘れてしまっています。とにかく最初の2年間で決まるので、自分にとって一番きつい道を選ばれた方が良いと思います。そうすると実力がつきます。そんなことを言うと、鬱陶しい指導医がいる病院だから行きたくないと思われてしまうかもしれませんが(笑)。

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