ハッピー♡マッチ|eレジ連載小説

ハッピーマッチ

第二部 実家 冬

第二話 千葉県習志野市実籾駅(BY つばき)2016.11.04

 土曜日の夕方、パパが駅で待っててくれました。
「イェーイ!」
「イェーイ!」
 いつものように、右手と右手でハイタッチをしました。
いや、ハイタッチではないかー。子供の頃は、確かにハイタッチだったのですが、パパはあたしの背と同じくらいに小さくなったので、中タッチです。
 はじめてパパと会った時のことは、覚えています。
 たぶん、この駅のこのロータリーです。
 千葉県習志野市実籾(みもみ)駅。
 あたしが八歳の時ですから、十六年前です。改札の前にファミリーマートができましたが、ロータリーは、ほとんど変わってないと思います。はじめて会ったその日、今日のようにハイタッチをしました。その習慣が今も続いてます。
 八歳のあたしは、母とパパに挟まってはしゃいでいたのを覚えてます。新しい家を見に行ったのです。まわりは、畑か田んぼがありました。その中に、数件の家が建っていました。
「この新しい家で、新しいパパと暮らしてもいい?」
というような(実際どういわれたかは、覚えてませんが)、質問を母からされた記憶があります。そんなにダイレクトではなかったかもしれません。なぜなら、はじめて子供に会わせる再婚候補をそんなふうに紹介することはないような気がしますから。でも、あたしは女の子ですから、すぐにピンと来ていました。
「この新しい家で、新しいパパと暮らしてもいい?」
「いい」
 わたしは、即答しました。
 が、母とパパは一瞬戸惑ったようです。日本語は難しいですね。「いい」が、NO, thank you.のようにも聞こえるのです。もしかしたら、八歳のあたしは、迷いがあったのかもしれません。意図的に「いい」と返事をし、イエスかノーかの判断を母に託したのかもしれません。
母は沈黙していたような気がします、たぶん。
覚えているのは、パパとのハイタッチです。
「イェーイ!」
「イェーイ!」
 新しい家族が誕生した瞬間でした。

 その当時、母は保健師の学校に通っていたそうです。
 推測するに、彼女は准看護師として働きながら看護師となり、しばらくして父と出会い、私を産み、離婚して、保健師学校に通いパパと出会ったということになります。
 ここで、混乱するので、生物学的な父親を「父」、育ての親を「パパ」と呼ぶことにします、というか、子どものころから、そういう区別をしていたような気がします。正直なところ「父」に関しては、ほとんど覚えていません。あたしが、四才になるかならない頃の離婚だったらしく、なんとなく存在していたという感覚はあるのですが、写真もないので記憶は薄れるばかりです。母が父と出会い、別れたことについては、母に、あるいはパパに聞いたことはありません。ただ、父はもう存在していない(つまり亡くなっている)ということは、亡くなった母の母(おばあちゃんですね)から、聞いたことはあります。タブーというわけではないと思いますが、「父」に関する情報をあえて避け続けることが、幼いあたしができた唯一のことだったのかもしれません。田舎の心地よい街で、新しい家に新しく優しいパパとの暮らしを続けるために。
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  • (2017.04.21)

    第六話 ザー(BY つばき)

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著者プロフィール

  • 崎長 ライト

    長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
    長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました~。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

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