徹底討論!大学病院vs市中病院

徹底討論!大学病院vs市中病院

市中病院チームの主張/江戸川病院

初期研修医
橋本 健 医師

稀な疾患よりもコモンディジーズの初期対応と管理を学びたかったので市中病院にしました

大学卒業後、大学病院ではなく、研修先を江戸川病院に決めた理由をお聞かせください。

橋本:大学病院でない理由は漠然としており、決定的な理由とは言い難いです。漠然としたイメージですが、稀な疾患よりもコモンディジーズの初期対応と管理を学びたかったので、市中病院にしました。東京医科歯科大学は6割から7割の学生が母校を研修先に選びます。私の同級生は優秀な人が多いですし、私は周りに知っている人がいると頼ってしまうんです(笑)。頼れる人がいない環境の方が必死に勉強するだろうと考えたのも市中病院を選んだ理由の一つです。 江戸川病院は400床規模ですが、研修医は1学年4人しかおらず、各科をローテートするのは1人ずつなんです。手技の取り合いにもなりませんし、多くの症例を一人の研修医がしっかり学べる点に惹かれて、見学に来ました。

江戸川病院に見学に来られたときの印象はいかがでしたか。

橋本:私は5年生の初めから病院見学をしていまして、10以上の病院に行きました。そんな中で、江戸川病院は内装がインパクトがありましたね(笑)。こういう内装の病院だと、患者さんやご家族が病院にいるという意識が薄くなり、リラックスできるのではいだろうかと思いました。病院全体の雰囲気も良かったですし、1学年上の研修医の先生方がとてもアットホームに接してくれて、相談しやすそうだと感じたことから、江戸川病院に決めました。有名病院を含め、多くの病院に見学に行きましたが、研修を充実させるのは結局は自分次第だとも思いましたね。

江戸川病院での初期研修はイメージ通りですか。

橋本:学生時代の初期研修のイメージは大学病院での研修医がやっている仕事を見て作られると思います。大学病院はペーパーワークが多い印象でしたが、江戸川病院では手技や患者さんへの対応、検査や治療の計画を研修医自身がするなど、大学病院とは違った内容の仕事です。医師としての業務を自分で考えるということは強い責任感も必要とされますね。したがって、当初のイメージは良い方にずれましたし、良い意味で予想が裏切られました。

江戸川病院での初期研修の特徴をお聞かせください。

橋本:一つの診療科を一人の研修医がローテートしますので、手技や症例の多さが特徴です。内科を回っている間は救急にも入り、研修医がファーストタッチを行います。2年目のローテートでは外科系の診療科が多いのも特徴です。自分の将来の専門科とは関係のなさそうな診療科であっても、後々になって意外なところで役に立つ知識を得られると思います。
また、月に1回は症例検討会があり、スライドにまとめて発表します。学会発表の練習にもなりますし、学術的なことを学んだり、論文を数多く読む機会でもあります。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

橋本:研修医をよく見てくださっていますし、熱心にご指導いただいています。第一印象は近寄りがたい先生でも、研修医を気にかけてくださっていて、折々にお声がかかります。指導を面倒くさがる先生はいらっしゃらないですね。こちらからも積極的に質問をして、知識を得るように努めています。

江戸川病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

橋本:一番は内科救急の初期対応ですね。患者さんの主訴を伺い、鑑別診断、検査を経て診断、治療を行うという流れはとても勉強になります。指導医の先生方は最初は手取り足取りですが、慣れてくると任せてくださいますので、自分がやりたいことをある程度できる環境です。責任感も必要ですので、常に勉強しないといけないと思っています。

研修医同士の意見交換や情報共有も活発ですか。

橋本:研修医ルームがありますので、コミュニケーションは取りやすいです。次にローテートする科のことを先にローテートした人に尋ねたり、ほかの人が対応した救急外来の症例を話し合ったりしています。色々な情報を共有できていますね

何か失敗談はありますか。

橋本:手技の機会が豊富なだけに、手技で失敗することは多いですね。教えていただくのも恐れ多いようなベテランの先生方が揃っているので、最初は病棟で緊張していましたし、慣れてしまうぐらい失敗は色々とあります(笑)。私が大事だと思っていることと指導医の先生が大事だと思っていることが違っていて、報告すべきことをしていなかったときは怒られましたね。でも、そんなときにでも「こういう可能性があるから、その報告が大事なんだ」ときちんと教えていただけますので、有り難いです。

初期研修プログラムで改善を望みたいことはありますか。

橋本:大きな問題点はありません。強いて言えば、朝の抄読会の回数を増やすなど、アカデミックな部分をもう少し取り入れて欲しいです。大学病院での研修に比べると、高度な専門知識に触れる機会は多くはありません。でも、自分次第ですから、やる気さえあれば勉強できる環境だと思います。

当直の体制について、お聞かせください。

橋本:回数は月に4、5回です。内科、循環器科、外科、整形外科の4人体制で、1年目の研修医は内科にサブ当直で入り、2年目の研修医は内科に一人で入ります。江戸川病院は二次救急ですが、搬送後にすぐにICUに入ったり、重症症例で緊急手術だったりということが少なくないので、自分の力量を超えるときには外科や循環器科の指導医の先生にバックアップしていただいています。どの科の先生方も話しやすく、相談もしやすいですよ。

当直では、どんなことが勉強になっていますか。

橋本:2年目になると、トリアージを受けていない患者さんを診ますので、軽症に見えるけれども、実は重症だったなど、ひやっとする症例にも出遭います。自分で検査や治療を考える中で実践的な知識が身についたと感じますね。単なる医療面接というものだけでなく、患者さんやそのご家族への説明を含めた、医師患者関係の基本的な部分を学べます。

カンファレンスなどの雰囲気はいかがですか。

橋本:科によって、雰囲気は様々です。きちんとした形で行う科もあれば、必要最低限のことのみを行う科もありますね。しかし、どの科であっても準備は大変ですし、プレゼンには突っ込みが入ります。本番はドキドキしますよ(笑)。市中病院ならではの切り口も必要です。患者さんのかかりつけ医がどこの診療所なのか、在宅医療に切り替えるのかどうか、患者さんの社会的な背景など、考えさせられることも多いです。カンファレンスで得るものは大きいですね。

コメディカルの方たちとのコミュニケーションはいかがですか。

橋本:優しい方ばかりです。当院の研修医は即戦力として扱われることが多いのですが、経験不足は否めません。でも、さり気ないアドバイスをいただけますので、そのうえで判断することがとても勉強になっています。日頃から積極的にコミュニケーションを取ってくださるので、働きやすい環境ですね。

今後のご予定をお聞かせください。

橋本:来年からは都内の病院で麻酔科の後期研修を行う予定です。麻酔科に決めたのは2年目で麻酔科をローテートしたときです。もともとは内科志望だったのですが、短時間のうちに変化する病態を管理することに興味を持ち、手術中の全身管理やICUの管理をしてみたいと思うようになったんです。救命救急や緩和ケア、ペインクリニックなどに知識を応用できる点もいいですね。後期研修では学年ごとにステップアップできるカリキュラムのもとで、心臓外科、脳神経外科、産婦人科などを含めた広い分野の手術症例を経験できる病院を選びました。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

橋本:音楽が好きなので、大学時代の仲間と演奏しています。2年目になると少し余裕ができましたので、旅行に行ったりもしています。

現在の臨床研修制度に関して、ご意見をお願いします。

橋本:自分の専門の科に入ってしまいますと、他科を診る機会は少なくなりますので、スーパーローテートで多くの科を診るのは良いことだと思います。診療科を目まぐるしく異動していくのは大変ではありますし、深いところまでは勉強しきれないのですが、様々な診療科の先生方から色々な知識を教えていただけますし、そういった知識は今後の臨床に役立つはずです。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

橋本:大学病院と市中病院を二項対立で考え、悩んでしまう人は少なくありません。私もとても気になっていましたが、初期研修を1年半、経験した私が実感していることは自分自身がどう勉強するかということに尽きます。やる気さえあれば充実しますので、あまりこだわり過ぎない方がいいですね。私はまず研修病院の倍率の一覧を見て、どんな研修病院があるのかを知り、それぞれの病院のホームページを見ました。そして、希望に合う病院に見学に行ったんです。研修病院を選ぶ際に、ほかの人の意見に流されて、自分の意見を持たないままの人もいますが、「こういうことをしたいから、この病院を選んだのだ」と自分の言葉で考えてほしいですね。そうすると、研修中に辛いことや理不尽なことに遭っても、挫けずに我慢できるのではないでしょうか。周囲の評判や症例数などのデータよりも、病院に足を運び、研修医がどんな教育を受けているのか、しっかり見てください。  指導医の先生方は熱心に教えてくださいますが、それを聞いただけではなく、自分で調べて解決するというプロセスを身につけるべきです。医師人生の中で初期研修は大事な期間です。他人に言われたことを鵜呑みにせずに、エビデンスのあるものなのかをきちんと調べる姿勢を持たないといけません。そういう姿勢を作れるかどうかも自分次第だと思います。