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プロフェッショナルインタビュー 2025-12-23

第6回「私の経験に基づくと、やはり積極的に留学してほしいと思います。」湘南藤沢徳洲会病院 機能的神経疾患センター(機能神経外科) 山本一徹センター長

話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る 「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー! どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
情熱大陸、クローズアップ現代

今回は【湘南藤沢徳洲会病院 機能的神経疾患センター長】山本一徹先生のインタビューです!
湘南鎌倉総合病院にて初期研修をした理由。離島医療にて得られた経験。
留学した経緯やどのようにして手技スキルを高めていったのかなど、語っていただきました――。

テーマは 第6回「私の経験に基づくと、やはり積極的に留学してほしいと思います。」をお話しいただきます。

目次

プロフィール

名 前:

山本(やまもと)一徹(かずあき)

病院名:

湘南藤沢徳洲会病院

所 属:

機能的神経疾患センター(機能神経外科)

資 格:

日本定位・機能神経外科学会技術認定医
日本脳神経外科学会専門医・指導医
日本脊髄外科学会認定医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科専門医など。

学 位:

博士(医学)
先生の写真
先生の写真

経 歴:

・1984年 北海道札幌市で生まれる。
・2010年 札幌医科大学を卒業後、湘南鎌倉総合病院で初期研修を行う。
・2012年 湘南鎌倉総合病院で脳神経外科の後期研修を行う。
・2016年 湘南鎌倉総合病院脳神経外科に勤務する。
・2019年 東京女子医科大学病院に勤務し、平孝臣氏に師事する。
・2020年 トロント大学Toronto Western Hospitalに勤務し、トロント大学のアンドレス・ロザーノ氏に師事する。
・2022年 帰国後に湘南藤沢徳洲会病院機能的神経疾患センターのセンター長に就任する。

手技を究める

━━ トロント大学ではベストフェロー賞を受賞されたのですね。

 これは臨床だけで評価されたわけではありません。研究でも評価されたものです。授賞式ではベストフェロー賞以外の表彰も行われていて、受賞者はトロント大学脳神経外科全体の中から選出されていました。指導医賞みたいな賞を受賞された指導医の先生もいたし、色々なすごい賞があるのだなあと聞いていましたが、あまり集中して聞いていたとは言えません(笑)。そんな中で「フェローの中で臨床のみならず、研究でもリーダーシップを取りながら多大なる功績を収め…」という声が聞こえてきて、「そんなすごい人がいるんだな」と他人事のように聞いていました。そうしたら、私の名前が呼ばれたので、「マジか。こんなにすごい賞をいただけるんだ」とものすごく嬉しい気持ちになりました。衝撃を受けながらステージに呼ばれ、受賞をして、名前を呼んでくださった先生方と一緒に記念撮影をしました。私はトロントではKazと呼ばれていたのですが、ありがたいことに友人たちは「Kazが受賞しろ」と祈ってくれていたそうです。脳神経外科の多領域にわたり世界中から優秀なフェローの集まる中、ただ一人受賞し、後日、大学のウェブサイトにも名前が載り、感無量でした。

━━ 研究も評価されたのは素晴らしいですね。

 臨床ももちろん頑張りましたが、誰よりも早く研究室に行って、研究を開始し、誰よりも遅く帰っていました。私は2年間で身につけられるものはあまねく身につけていこうと決めていましたので、ほかの人と同じことをしていては駄目だと思っていました。コロナ禍でしたので、研究のあとで飲みに行こうという話にもならなかったんです。お店も閉まっていましたしね(笑)。トロント全域がロックダウンで、店も閉まり、人がほとんど出歩いていない状況だったこともある意味で追い風となり、その間、研究に集中できました。ミーティングもオンラインで行っており、当初は研究室メンバーと直接会う機会も少なく、オンラインミーティングと研究の繰り返しでした。そして、いい仲間にも恵まれました。研究室のメンバーの中で、臨床フェローは私だけだったのですが、優秀な仲間に教えてもらいながら一緒に論文を書いて、研究してという繰り返しでした。そういう努力も認められたうえでのベストフェロー賞という結果であり、本当に嬉しかったです。

━━ 若手の先生方に留学を勧めたいですか。

 私の経験に基づくと、やはり積極的に留学してほしいと思います。ただ、私の今のやり方は平先生のやり方ともロザーノ先生のやり方とも細かいところは違います。留学をして、そのやり方を身につけて、その方法でずっとやっていくのももちろんいいのですが、留学には期間があるので、その期間中に学べることには限界があります。平先生みたいに技術がどんどん進歩していく師匠もいますので、平先生のところで学んだものもロザーノ先生のところで学んだものもやはり限りがあるんですね。そのため、留学される方、皆さんに言えることですが、留学先で学んだことが全てだと思わないでいただきたいです。留学は良い経験ではありますが、それを基本として、自らが最善と信じる手法を見出していく必要があります。私が平先生から学んだ一番大きなものは「考えることを止めないこと」です。平先生は常にそうある方なんです。考えることを止めたら、そこで止まってしまいます。それ以上、良くならないんです。常に患者さんのためになることをしようと思ったら、何ができるだろうか、今常識とされていることは本当に正しいのか、最善と信じられている方法より実はさらに良い方法があるのではないだろうかと考えたうえで、新しい手法や技術を開発したり、今の私がしているように道具を開発したりなど、手術をより良いものにするという目的のために常に考えることです。そういった結果、今の私の手法がありますし、今の私の手法も最良ではないはずですので、今後もさらに良くしていかなくてはいけないと思っています。

先生の写真

トロント留学時代


━━ 留学が最善の方法ではないかもしれないのですね。

 留学はお勧めしますが、考えることを止めてはいけないし、それが全てだと思わないでいただきたいです。留学した人の中には留学した先で留学している自分に酔うと言いますか、そこで満足してしまう人もいると聞いたこともあります。それから、留学先で疲弊してしまって、仕事に制限をかけてしまう人もいるようです。その先を見据えて臨まなければ、留学も実のあるものとなりません。

━━ 言葉の壁があると疲れやすく感じます。

 英語は日本語とはまるで文法も違い、「単語を覚えればいい」というだけの違いではありません。語順も違えば、思考プロセスも違うので、英語を話すという意味では国際的観点から日本人は圧倒的に不利な状況にあります。それには教育システムの問題もあるでしょう。ただ、トロントで他のフェローから、「日本人を悪く言うわけではないが、聞いてくれ」という感じで言われたのが、仕事を任せると断ってくる日本人が他領域のフェローにいたという話でした。もしかしたら言葉の壁もあったのかもしれませんが、壁があったとしても留学先ではできる限りの仕事はするべきだし、任せられた仕事は全て引き受けるぐらいの気持ちが大切です。世の中には考え方やモチベーションが異なる人もいますが、私は留学先では苦労は買って出ようという気持ちでいました。留学当初は周りの人よりもオンコールが多かったのですが、「期待されている」と前向きに解釈していました。実際、オンコール予定を組んでいる担当者からは、「特に最初は、大丈夫そうな人を敢えて多く入れている」と言われました。タフな人ほど仕事を任されると思いますので、文句を言わず、降りかかった仕事はあまねく引き受けましょう。信頼にもつながります。ただし、ほかの業務に支障がない程度にということは大事ですし、このバランスも考えないといけないところではあります。そして「燃え尽きない」ということが留学する人には大切なキーワードだと思います。

━━ 先生は手術の手技をどのように究めていかれたのですか。

 当然ながら、豊富な知識を身につけたうえで数多くの手術を経験し、手技を習得していくと同時に術中判断能力を養うことは極めて重要であり、私自身、浴びるような症例数のなかで1件1件大切にしながら学んでいきました。とりわけ機能神経外科領域では、考え方を学ぶことが大事です。脳のサイズは一人一人違いますし、各構造の比率も違います。脳の中に基準点となる2点があり、この基準点をもとにしてターゲットを定め、ここを治療すると良くなるであろうという考え方をするのが基本です。それは偉大な先人たちが積み上げてくれた貴重な知識であり、財産でもありますが、その手法のみでは万人に通じる治療を行えないと私は考えています。常に患者さんを第一に考え、最善の医療を提供するのは当然です。「もし自分が患者さんの立場だったら、自分に手術してもらいたい」と思えるようなベストパフォーマンスで手術を行うべきです。先人たちから学んだことは最善の手法なのだろうかと考えたときに「もうちょっと改良の余地があるのではないか」ということが出てきます。そこで、自分の信念に基づくと、理屈上はこうしたほうが理に適った手術方法なのではないかという考えが自分の中でふつふつと生まれてきて、新たな手法を見出してきました。これは自分の思考プロセスの賜物かもしれませんが、それが正しいのかどうかは結果で判断すべきことになります。おそらく師匠たちも私と同じように「もうちょっとこうしたほうがいい」ということを考え続けてこられたわけで、私のほうが師匠たちよりも優れているという思いは全くありません。そういう話をしているのではなく、世界的にご高名な2人の師匠を持つ私だからこそ、その師匠たちが培ってこられた思考プロセスを吸収できたのだと思います。患者さんのためにより良い医療を提供するという点において、師匠たちと同じ方向を向いていますし、長年にわたりそのための努力をされてきた師匠たちの血を引き継いでいるのだと自負しています。

連載: プロフェッショナルインタビュー

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