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プロフェッショナルインタビュー 2025-11-27

第4回「記憶回路を復活させられることが分かりました。」湘南藤沢徳洲会病院 機能的神経疾患センター(機能神経外科) 山本一徹センター長

話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る 「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー! どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
情熱大陸、クローズアップ現代

今回は【湘南藤沢徳洲会病院 機能的神経疾患センター長】山本一徹先生のインタビューです!
湘南鎌倉総合病院にて初期研修をした理由。離島医療にて得られた経験。
留学した経緯やどのようにして手技スキルを高めていったのかなど、語っていただきました――。

テーマは 第4回「記憶回路を復活させられることが分かりました。」をお話しいただきます。

目次

プロフィール

名 前:

山本(やまもと)一徹(かずあき)

病院名:

湘南藤沢徳洲会病院

所 属:

機能的神経疾患センター(機能神経外科)

資 格:

日本定位・機能神経外科学会技術認定医
日本脳神経外科学会専門医・指導医
日本脊髄外科学会認定医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科専門医など。

学 位:

博士(医学)
先生の写真
先生の写真

経 歴:

・1984年 北海道札幌市で生まれる。
・2010年 札幌医科大学を卒業後、湘南鎌倉総合病院で初期研修を行う。
・2012年 湘南鎌倉総合病院で脳神経外科の後期研修を行う。
・2016年 湘南鎌倉総合病院脳神経外科に勤務する。
・2019年 東京女子医科大学病院に勤務し、平孝臣氏に師事する。
・2020年 トロント大学Toronto Western Hospitalに勤務し、トロント大学のアンドレス・ロザーノ氏に師事する。
・2022年 帰国後に湘南藤沢徳洲会病院機能的神経疾患センターのセンター長に就任する。

記憶回路を復活させられることが分かりました。

━━ 後期研修が終わって、東京女子医科大学病院に行かれたのですね。

 そうです。機能神経外科医になることは最初から決まっていましたので、初期研修で脳神経外科をローテートしたときに、脳神経外科部長でいらした権藤学司先生に機能神経外科医になりたいという話はしていました。それで「機能神経外科医になりたいけれども、脳神経外科の基礎力を身につけるために後期研修でもお世話になりたいです」と懇願し、後期研修をスタートしました。脳神経外科では週に1、2回の抄読会があり、読んできた論文を日本語で皆に説明します。私は毎回のように機能神経外科領域の論文を選んでいました。それで、上司となった権藤先生は、私はいつ、どこに機能神経外科を学びにいくのだろうと、私にふさわしい留学先まで検討してくれていたようでした(笑)。しかしながら、後期研修1年目だったと思うのですが、たまたま東京女子医科大学病院の平孝臣先生のご講演を聴く機会がありまして、その内容が衝撃的だったのです。

━━ どのような内容でしたか。

 脳の手術を受けている患者さんが起きている状態で、楽器を弾いているんです。楽器を弾きながら手術を受けるということが世の中にあるのかという衝撃を受けました。その患者さんは指がぎゅーっと曲がってしまうようなジストニアの患者さんで、楽器を弾くことができませんでした。でも、そういった症状が手術中に見る見る改善し、さらに手術後のビデオを見ると、また楽器を弾けているわけです。こういった魔法のような手術が存在することに驚き、パーキンソン病の手術を初めて見たときと同じような衝撃が全身に走りました。人生で2回目の衝撃でしたね。そして、この先生のもとで勉強させていただければ嬉しいなと強く思いました。それから上司の許可を取り、1年間、定期的に平先生のところに見学に行き、勉強させていただきました。ただ、やはり週1回ペースで見学に行っても学べる量は限られていますし、集中して勉強させていただける機会があればと思うようになっていきました。その後、私が専門医を取った頃に、平先生が定期的に湘南藤沢徳洲会病院に集束超音波治療のご指導に来てくださるようになりました。平先生のご指導を受けながら集束超音波治療の手術を行う中で、平先生と会話をしているうちに、先生のもとで勉強させていただきたい想いは、一層強くなりました。でも、平先生がいらっしゃる女子医大で学ぶとなると女子医大に入局しないといけなくなるだろうし、やはり女子医大に行くことは不可能なのかなという思いもありました。そんなときに、一緒に仕事をしていた脳神経内科の先生が「山本先生が平先生のもとで勉強できたら最高ですよね」という助け舟を出してくださったんです。そうしたら、平先生が「いつでもウェルカムだよ」とおっしゃってくださり、その場で了解を得ました。

先生の写真

左:ピアニストジストニアRF 右:ギタリストジストニアRF


━━ 良かったですね。

 しばらくして権藤先生にご報告すると、「これからどうするのだろうと心配していたし、先生の留学先まで考えていたよ」というお話をされました。それで「是非、行っておいで」と気持ちよく送り出してくださり、2019年に女子医大に行きました。

━━ 女子医大はいかがでしたか。

 やはり、ものすごかったです。先述のように、以前にも見学に行かせていただいていましたが、2019年には自分の知識も増えていましたので、平先生のすごさをより深く理解できました。「この先生はすごいなあ」「ものすごい手術をされているんだなあ」という感動の嵐の毎日でしたね。

━━ それでも留学先も考え始めておられたのですね。

 平先生のところでは非常に多くのことを学びました。先生の手術や外来を通じて多くの経験をするのみならず、論文や書物を読んでも解決しない疑問があれば遠慮なく質問してその回答からも多くを学び、平先生の発する言葉一つ一つに注意を払って、一言一句聞き漏らさないように拾って、常にアンテナを張った1年間を過ごしました。1年間で学べるだけのことはあまねく学んだと思いますが、平先生の知識や技術を身につけるためには1年間で十分なはずはありません。そこから先は自分で作り上げないといけないなと思うようになりました。これには理由があります。平先生の手術は年々進化しているからです。私が最初に見学させていただいたときよりもさらに洗練された手術となっていたので、これは3年学んでも10年学んでも、平先生の全てを吸収することは不可能だと感じました。ひとまず1年間はお世話になりたいと考えていた一方、もともと女子医大に何年間いると決めていたわけではなく、次の留学先として、トロント大学を目指しました。

━━ トロント大学を希望されたのはどうしてですか。

 2013年頃、トロント大学のアンドレス・ロザーノ先生のある論文に出会ったことがきっかけです。アルツハイマー病の臨床試験を始めるという内容の論文だったのですが、そのきっかけとして、ある病的肥満の男性患者さんの視床下部に脳深部刺激療法(DBS)を行うことで、病的肥満の改善を試みたという症例報告が含まれていました。その患者さんの視床下部に電極を入れて刺激を行うと記憶想起、フラッシュバックメモリという現象が生じたそうです。その患者さんが20歳前後の頃に当時の彼女や友人たちと公園にいた記憶が想起され、馴染みある情景が見えたらしいんです。そして刺激するボルテージを上げていくと、少しずつ鮮明になっていきます。例えば3ボルトで刺激すると、最初は周りに何人かがおり、内容まではわからないものの何かを話しているという漠然とした記憶だったのが、5ボルトの刺激に上げると、当時の彼女の着ている服も含め、記憶の中にある詳細な情報が認識できるというふうに明瞭になっていきました。こういった現象があると、記憶回路が賦活されたのではないかと考えられます。視床下部あるいはその周辺構造を刺激すると記憶が想起される可能性があること、記憶回路が賦活される可能性があることが分かりました。ならば、認知機能が低下する疾患、すなわち認知症の治療に役に立てられるのではないかということで、アルツハイマー病の患者さんに対する脳深部刺激療法の臨床試験を開始するという趣旨の論文だったんです。この論文を読み、こんなにすごい研究をしている人がいるんだなという衝撃が走りました。それと同時に、この人のもとで学びたいと強く思いました。これが人生で3度目の衝撃です。これら3つの衝撃により、私の進路が次々に具体化していきました。そのときはまだ後期研修が始まったばかりの頃でしたが、アンドレス・ロザーノ先生にすぐにメールを送りました。

先生の写真

トロント ロザーノ教授と


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