【出演番組一部抜粋】
NHKプロフェッショナル仕事の流儀・情熱大陸
今回は【シロアムの園代表 小児科医】公文和子先生のインタビューです!
女性医師・小児科医として歩み続けた原点と海外への挑戦。
どんな経緯で海外に行ったのか。何を学び、何を得たのか!
シロアムの園の今後の展望など語っていただきました― ―。
第5回「留学はソリューションではないし、目的でもない」をお話しいただきます。
目次
プロフィール
名 前:
事業名:
所 属:
経 歴:
・1994年に北海道大学を卒業後、北海道大学病院小児科に入局し、北海道大学医学部附属病院、千歳市立病院、市立札幌病院、北見赤十字病院、
新日鐵室蘭総合病院(現 製鉄記念室蘭病院)で小児科医として勤務する。北海道大学大学院でも学ぶ。
・2000年にイギリス・リバプールに留学し、熱帯小児学を学ぶ。内戦後の東ティモールや内戦中のシエラレオネ、カンボジアの小児病院で医療活動にあたる。
・2002年にJICAの専門家派遣により、ケニアで活動を始める。また国際NGOでも働く。
・2007年に長女を出産する。
・2015年に障害児やその家族の支援事業である「シロアムの園」を設立する。
━━ シロアムの園を今後、どのように展開される予定ですか。
もともとの考えとしては広げたくないんですよ(笑)。お金がないですし、お金に追われる生活はとても辛いので、大きくはしたくありません。施設での今の大きな問題は待機者が多いことなんです。現在は約55人が療育を受けているのですが、待機者は200人ぐらいいますし、卒園できない子どもも多くいます。例えば18歳になったら卒園して、ほかのところに行ってもらおうとしても行けるところがなかったり、大きくなったからこそ親御さんたちも大変だったりします。一方で、200人が待機している状態だと、待っている間に亡くなっていく人も多くなりますし、早期介入が全くできなくなるんですね。今、5年待ちぐらいなので、このままのペースでいくと30年待ちぐらいになってしまいます。そういう状態なので、私たちが全てを抱えるのではなく、地域の中でほかの人たちがこのような活動をできる状態にしていけたらと思っています。あとは制度ですね。このような取り組みは福祉ビジネスにしないとしていく人がいなくなります。なぜ日本で福祉ビジネスが成り立つのかというと、助成金があったりして、利用者の方々がお金を払えるからです。私たちは何とか寄付を募って運営していますが、寄付はそんなに簡単に集まるわけではないので、この地域の人たちがきちんとできるようになるためには制度として整えなくてはいけません。そうしないとしてくれる人が出てこないので、やはりアドボカシーですね。制度を作っていくために政府にどう働きかけていくのかなど、10年間、私と一緒に歩んでくれている人たちも理解できるようになってきました。最終的には「シロアムの園がなくてもいいよね」という社会ができあがれば、一番いいですね。
━━ 留学や海外で働くことを考えている若い医師へメッセージをお願いします。
まず留学はソリューションではないですし、目的であってもいけないと思います。もちろんアメリカに留学して箔をつけたいといった思いがある人はいるのでしょうが、そこで何を学びたいのか、留学は自分の人生の中でどう位置づけられるものなのかということを考えるべきですよね。留学ができればいいという話ではなく、その先に何があるのかという、先を見据えた留学をしたほうがいいです。自分が今、経験しているものの中から考えられることはとても小さいのですが、経験を積んでいくとそれが広がっていきます。日本人の場合、初志貫徹という言葉が好きですし、初志貫徹もとても素晴らしく、重要なことではありますが、それにスティックしすぎると、「こうあるべき」のような狭まった考え方をしてしまいがちになります。でも留学をすると学ぶことや出会いが増え、色々な経験ができますので、「人生が変わってもいいんじゃない」と思えるようになります。私は留学することも患者さんに向き合うことも同じ位置づけなんです。学びがあり、出会いがあり、経験があって、そこから得られるものが私の将来を決めていくというところでは同じものなので、そういう意味では患者さんとの出会いから与えられるビジョンも留学から与えられるビジョンも同じです。それを総合して、自分で何をしたいのか、何ができるのか、何が得意なのか、何を必要とされているのか、そういうところを見ながら先に進んでいけたらいいのではないでしょうか。