初期研修インタビュー

2023-06-01

甲府共立病院(山梨県) 初期研修医 森下彰友先生 (2023年)

甲府共立病院(山梨県)の初期研修医、森下彰友先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

甲府共立病院

〒400-0034
山梨県甲府市宝1丁目9-1
TEL:055-226-3131
FAX:055-226-9715
病院URL:https://kofukyouritsu.com/

森下先生の近影

名前 森下 彰友(あきとも)
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 長野県飯田市・富山大学 / 2022年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 私が幼い頃に、親族ががんに罹ったことで、病院という医療の現場、医師、看護師、医療がとても身近にありました。そういった実情を目の当たりにしたことで、病気や怪我などに対して様々な思いを抱くきっかけになりました。
そのひとは若いうちに亡くなってしまい、私を含め家族全員が悲しく、辛い時期がありました。病気に対し、とても悔しい思いと「同じような経験をする人を減らしたい」という思いが大きくなって医師を志しました。

学生生活ではどんな事が思い出に残っていますか。

 最初はハンドボール部に入っていたのですが、3年で退部し病理学系の研究室に所属しました。病理検体の鏡検や複数回、病理解剖に関わったことが思い出に残っています。
また、がん細胞の進展因子について研究し、学会で発表させていただいたこともありました。
病理診断として正確な診断をするということに、とても格好良さを感じ、病理学に興味を持ちました。治療にあたっては正確な診断が必要ですし、学んでおきたいと思いました。病理医は人が多いところではないですが、色々な先生方に優しく教えて頂きながら勉強できました。

大学卒業後、研修先を甲府共立病院に決めた理由をお聞かせ下さい。

 病理医を目指していたのですが、「診断だけではなく治療もしたい」「化学療法を学びたい」と考えるようになりました。
化学療法をすると感染症を発症したり、体調が悪くなったりする事がよくあると思います。広く内科疾患を診る事が可能で、かつ基本的な手技を勉強できる病院を探しました。
私は学生時代に結婚したのですが、妻の実家がある山梨県内で研修をしたかったので、山梨県内で先に述べたようなことを学べる理想の病院だったのが当院でした。

甲府共立病院の見学での印象はいかがでしたか。

 4年生のときに見学に来たのが最初で、1日目に初期研修医の先生がファーストタッチをしていた当直帯の救急外来を、2日目には初期研修医の先生が研修していた院内の他の部署を見学しました。
その時は初期研修医も含めスタッフを大切にしている病院という印象を受けました。
休みも取りやすいという説明を聞いたのも良かったです。
私は仕事もしっかりしたいのですがプライベートも確保したかったので、いわゆるハイパーに働くよりは「ハイパーすぎないところ」と考えていたのでとても良い病院だなと思いました。

甲府共立病院での初期研修はイメージ通りですか。

 ハイパーすぎずに働くことができ、初期研修医が大切にされているというのはイメージ通りです。
イメージ以上だったのは手技ですね。CVCや腹水、胸水を抜くといった手技を段階を踏みながら実際にさせていただけるので、安全であり、かつ経験数も確保できました。また、フィードバックもしっかり時間を設けられたため、毎回良かったところ・改善すべきところがはっきりしてよかったです。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

 総合診療科を中心としたプログラムです。総合診療科で診るcommon diseaseだけではなく、発熱・貧血・意識障害などの精査入院の患者様を担当する機会もあります。
精査では「なぜ発熱したのか」「どうして意識障害が起きたのか」などを、まずは初期研修医自身が主体となって、上級医と相談しつつ一緒に診療できることが特徴です。総合診療科以外でも循環器科はカテーテル治療、外科は低侵襲治療にも力を入れています。
当院の研修プログラムを見ると「内科を主体で学びたい人向けかな」という印象を受けますが、多くの手技を経験できたり、低侵襲治療にも力を入れていたりと外科を目指す人にもとても適しているプログラムだと思います。

甲府共立病院のプログラムでは院外での研修はどのようなところに行けるのですか。

 当院は様々な病院や診療所と連携しており、山梨大学医学部附属病院、山梨県立中央病院などではより高度な医療を見る機会に恵まれています。
私はこれから血液内科、呼吸器内科を山梨大学医学部附属病院で、精神科を峡西病院で研修する予定になっています。
地域医療は希望を出せるので私は当院の関連施設である御坂共立診療所を希望しています。1年目の3月には石和共立病院のリハビリテーション科に行きましたが、当院の当直帯でたまたま診た患者さんがリハビリ目的で入院されていたんです。
急性期がかなり大変だった方のリハビリを学ぶことができたのは良かったです。

プログラムの自由度は高いですか。

 初期研修医の数がフルマッチでも1学年6人なので、そこまで人数も多くないのである程度調整しやすく自由度は高く、色々なところで研修できるようになっています。
ぼくたちの学年は希望をたくさん出したので、その分事務スタッフの方は大変だったと思います(笑)。事務スタッフの方が割り振りを調整してくれているので、自由度高く研修できています。

どのような姿勢で初期研修に取り組んでいらっしゃいますか。

 私は内科疾患を広く診ること、基本的な診療技能を高めることを目標にして、当院を選びました。それもあって「大学では学んでこなかったこともしっかりと学びたい」と思っています。例えば、治療が終わって退院される方の退院先の調整やその後の予防医学、慢性疾患診療などですね。それから患者さんありきで研修させていただいているので、患者さんの不都合にならないように取り組もうと心掛けています。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

 どの先生もとにかく優しいです。診察も最初は付いてきてくれたり、手技や処置もしっかり見ていてくれたりと丁寧にご指導いただいてます。
外来をされている先生方が多いのですが、「外来の合間を見つけて、相談してね」と言ってくださるので本当に相談しやすい環境です。
その意味でも研修医が安全に診療できています。

甲府共立病院での初期研修で勉強になっているのはどんな事でしょう。

 毎日全てが勉強になっています(笑)。今は外科研修中なのですが、腹部の解剖構造はもちろん救急外来で診ることになる傷の処置や急性腹症の診療や腹部の診察法といったことも勉強になります。指導が手厚いので気になった事はすぐ質問できますし、基本的な診療技能を学んでいます。

何か失敗談はありますか。

 CT検査の結果を見逃してしまったことでしょうか。その後すぐに指導医の先生が「こういう所見だったけど大丈夫」と確認してくださったので助かりました。忙しくなったりすると疲れてきて普段しないようなミスにも繋がります。とくに当直帯での救急外来での診療や病棟での急変対応では、指導医の先生に助けていただくことがあります。

発表会に出席された森下先生の写真 勤務中の森下先生の写真

当直の体制についてお聞かせください。

 回数は月に5回前後です。
二次救急当番日以外は医師2人に初期研修医1人という体制です。
医師2人は17時から25時/25時から8時50分迄と時間で区切って、救急外来と病棟を診ます。初期研修医は独り立ちをするまでは前半の医師と2人で経験を積んでいきます。
独り立ちまでのステップアップとしては、最初は指導医と一緒に診る、次は指導医が救急外来の隣の診察室に待機、最後は医局に待機となります。
初期研修医それぞれの進路に合わせたステップアップの方法になっていますね。
二次救急当番日は医師が3人、初期研修医1人という体制です。
この他、消化器内科では内視鏡、循環器科ではカテーテル、外科、整形外科、産婦人科なども対応が必要な場合があるのでそれぞれの科で拘束体制を作っており呼び出しもあります。

当直ではどんなことが勉強になっていますか。

 当院は全科当直ですので当直医が対応できるかぎり全て診るというスタンスです。
骨折を診たり、縫合したり、ショックで来る患者さんもいれば病棟を診ないといけない日もあります。何が来るのか分からないという状況で、その日を乗り切るという対応がしっかりできないといけないというのは勉強になります。
初期研修を始めた頃よりも今の方が不安ですし緊張しますね(笑)。そろそろ独り立ちが見えてきた時期なので、それを意識した上で「さすがにこれは自分で対応かな」「先生を呼んでもいいかな」というところを見極めながら頑張っています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

 当院の初期研修プログラムは総合診療科が中心なので、総合診療科のカンファレンスはやはり印象深いです。
総合診療科では受け持ちの患者さんについてのショートプレゼンを毎朝行います。
初期研修医の症例を皆で検討するのですが指導医の先生だけでなく、他の先生方からも「こういう疾患があるのでは」「この精査が足りないのでは」とご指摘があるので広い視野で学べますし、精査の進め方を勉強できます。
吊し上げのような雰囲気にならず「こういうことも考えられるんじゃないかな」と話してくださるので良い雰囲気です。

病院に改善してほしい事はありますか。

 当院には全ての科が揃っているわけではなく外勤の先生方もいらっしゃるのですが、マイナートラブルを解決するのに時間が掛かることがあるので、色々な科に先生方が揃っていれば有り難いです。
それから研修医室があるといいですね。
上の先生方に見られないように羽を伸ばしたくなる時もあります(笑)。

コメディカルの方たちとのコミュニケーションはいかがですか。

 週1回程度多職種カンファレンスが開催されるのでコミュニケーションは円滑にとりやすいです。私もリハビリの見学に行って、セラピストさんに担当患者さんの様子をうかがったり、放射線技師さん、薬剤師さん、管理栄養士さんのいらっしゃるところにも足を運んで相談することがあります。レントゲンやCTの撮り方や栄養など、色々なことを相談しやすい環境です。

研修医同士のコミュニケーションは活発ですか。

 私の学年はフルマッチしたので同期は6人ですがコミュニケーションはしっかり取れています。
医局の中に研修医のデスクがあるのですが、そこで「救急外来反省症例」や「こんなことを注意しながら診察した症例」などについての情報共有をしていますね。経験を共有することが自分たちそれぞれのステップアップにもつながっています。良好な関係にあるというのもとても重要なことですね(笑)

寮はありますか。

 寮はなく、住宅手当を頂いています。
私は世帯主なので4万円で、準世帯主なら2万円です。
一人暮らしだと家賃の半分は住宅手当で賄えるのでとても手厚いです。

今後のご予定をお聞かせ下さい。

 化学療法を行う科に興味があるので、呼吸器内科、血液内科、消化器内科を考えています。また総合診療科で研修したときに重症筋無力症の患者さんに色々な複雑な治療をする為の勉強もしたので、神経内科にも面白さを感じています。
当院にも内科専門研修プログラムがあるのでそれに乗り、可能であればサブスペシャリティを他の病院に取りに行くというプランもいいかなと思っています。

ご趣味などプライベートの過ごし方について教えて下さい。

 学生時代を過ごした富山では海釣りが趣味だったのですが…
山梨には海がありません(笑)。
釣りに行きたいと思いつつ、なかなか行けていないですね。
学生時代にコロナ禍になった時に一人でもできるスポーツをということで、サイクリングを始めました。
山梨県と言えば富士山や富士五湖ですので、河口湖の周囲をサイクリングしたりしています。道も平坦ですしサイクリングしやすいですよ。
コロナ禍も明けそうですし夏休みが5.5日あるので今年の夏は旅行を考えています。

現在の臨床研修制度に関してご意見をお願いします。

 私で言えば産婦人科や精神科といった、将来の科として考えていない科も診られるのは基本的な診療技能を身に付ける上で良いことだと思います。
ただ興味のない科を患者さんの不利益にならないように診るというのは、自分のモチベーションと患者さんへの対応に矛盾が生じてしまいますし難しいところもあります。そこは研修の中で対応していかないといけないですね。

最後にこれから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けてメッセージをお願いします。

 私が初期の臨床研修病院を選んだ基準は内科疾患を広く診られる事と、基本的な診療技能を身に付けられる事でした。
しかし、「common diseaseを診たい」「最先端の高度医療を学びたい」など、学びたい事は人それぞれ違います。
まずはこの2年間で何を学びたいのかを明確にしてから選んでいくといいと思います。
滅多矢鱈に探していくよりも何を診たいのかを絞り込みましょう。
山梨県でcommon diseaseを診たい、かつ休みを取りながら働きたいのであれば当院はお勧めです。是非、検討してみてください。

勤務される森下先生の写真 同期の先生達と森下先生の写真

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