専門研修インタビュー

2023-02-01

北九州市立八幡病院(福岡県) 専攻医 佐々木淳先生(小児科) (2023年)

北九州市立八幡病院(福岡県)の専攻医、佐々木淳先生(小児科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

北九州市立八幡病院

〒805-8534
福岡県北九州市八幡東区尾倉2-6-2
TEL:093-662-6565
FAX:093-662-1796
病院URL:https://www.kitakyu-cho.jp/yahata/

佐々木先生の近影

名前 佐々木 淳 専攻医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 広島県広島市・久留米大学 / 2018年
初期研修施設 国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター
専攻医研修 小児科

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

兄妹に障害があったことです。兄妹の関係で、身近に小児科の先生などがいらっしゃり、そういった影響が大きいと思います。

学生生活はいかがでしたか。

勉強で大変でした。私は再受験ということもあり、国試の結果も良くありませんでした。
大学時代は国試対策委員を務めていましたが、今はネット時代なので、対策の動画が充実しています。学生は国試対策をしたがるのですが、医学部の先生方は医学教育をしたいと思っているので、ギャップがありましたね。でも国試絡みで、ほかの大学の医学生とも繋がりが持てました。

初期研修はいかがでしたか。

私は地方の基幹病院で初期研修をしたのですが、そこはまだ「お医者様」という感じが残っている地域でした。
ただ、内科を中心に医師の数が少なく、初期研修医がいるだけで有り難がられ、医師の偏在を痛感しました。私は見よう見まねで、これでいいのかなと不安を覚えながら研修していました。より多くの症例を経験したいと考え、それで専攻医研修では当院を選んだということもあります。

小児科を選ばれたのはどうしてですか。

小児科あるあるなのかもしれませんが、大学の小児科にとても尊敬できる先生がいらしたこと、成人の医療に苦手意識があったことです。
子どもだけでなく、そこに関わるお父さん、お母さん、兄妹などの自分の経験も活かして、関わっていきたいと考えました。
小児科でも「きょうだい児」というトピックになりましたが、きょうだいに障害がある子どもは色々なものを抱えて育っていくところもあるので、そこにも携われる分野というのはいいなと思い、小児科を選びました。

専攻医研修先を北九州市立八幡病院にされたのはどうしてですか。

夏の小児救急ワークショップを八幡病院が開催していて、そこでの講演、特に小野友輔先生のエコーについての講演が熱かったというのが理由です。
八幡病院で研修されて帰った先生が初期研修施設にいて、その先生から「ここで経験すれば一通りの経験がしっかりできるよ」とお勧めの言葉もありました。
私は大学在学中に故市川光太郎先生の授業を受けていて、そこで名前は知っていましたが、決めた理由となるとワークショップですね。

北九州市立八幡病院での専攻医研修はイメージ通りですか。

イメージ通りではありますが、新型コロナウイルスの影響が大きくて、そこは自分のイメージしていたところとずれた部分はあります。
私たちが入職したときは一気に感染症が減り、心の面での難症例が増えてきた時期で、受け入れの仕方も新しくなって、手探りだったので、そこはイメージと違いました。そういうことはどこの病院でもあり得たでしょうが、研修そのものについてはイメージ通りでした。

北九州市立八幡病院小児科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

子ども病院などの病院のようなローテーション制度ではないので、病気の最初から最後までしっかりと診て、そのあとのところまで長期的に関われるところが一番大きいです。
大学病院と市中病院のちょうど真ん中ぐらいといいますか、2.5次のようなイメージがありつつ、一般的なコモンディジーズまで診ることができます。
大学病院だと診断がついてくる患者さんを診るのでしょうし、さらに普通の市中になると二次機関に送るのでしょうが、当院はそこの真ん中を丁度繋ぐような感じで、プライマリケアから高難度症例まで全て扱っています。
あとはフットワークが良く、コンサルトがかなり軽くできます。特に泌尿器科、形成外科、整形外科の先生方とは医局も一緒ですし、関わることが多く、3年間病院にいますので、知り合いとして仕事ができるのはいいですね。

佐々木先生の写真

初期研修との違いはどのようなところにありますか。

初期研修医は制度に非常に守られていて、守られている分、最前線の手前で完全に責任を負えていません。専攻医は責任を負うプレイヤーになれるのですが、その分、色々な結果には自分の責任が問われるので、そこの緊張感とストレスは大きいです。でも、うまくいったときは遣り甲斐があります。

専攻医研修で勉強になっていることはどのようなことですか。

自分で決断してやらないといけないことです。
逆に言えば、決断してやることもできる環境なので、いい意味で痛い思いもすることができます。最後のフォローは上の先生が全てしてくれるので、主治医としての力を発揮できます。臨床はうまくいった成功体験だけではなくて、治療がうまくいかなかったり、親御さんから不満が出たりするものも含めて経験になっていくのだと思います。
大学病院みたいに完全にミスが許されないような環境だと圧倒的に用意された中でやるしかないのでしょうが、当院はまずは主治医としてのしっかりした行動が必要ですし、そこで色々なことを経験したうえで、最後は上の先生にフォローに入ってもらえます。主体性が養われ、自由と責任が両方ありますね。決めきらないと辛いのですが、主体性が尊重されているので、自分で決断したときには成功体験が大きいですし、途中でうまくいかなかった点や足りなかった点があった場合でも、主治医として体験したうえで指導医のフォローが入って治療が完成していくので、横目で人の失敗を見るのではなく、経験値が上がります。プラスもマイナスも含めて身になる経験ができます。
それに、当院はかなり幅広く症例を取るため、発達障害を持っているお子さんや、家庭の療育が不安定といった患者さんにかなり多く遭遇するので、日本の小児医療が抱えている問題の社会的背景を考えながら、第一線で経験できる環境です。

難しいところはどのようなことですか。

主体性が試されることと、未経験な症例の場合は経験がないので、指導医の数が多いゆえに、色々な先生方のアドバイスを聞くと、それぞれに引っ張られて、自分の軸がぶれることです(笑)。自由度が大きいと不安がつきまとうし、制限がある方が安心感があるかもしれないですね。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

突き放されているように見えて、遠くで見てもらっているという感じです。マンツーマンでじっくりという感じではなく、自分で聞きにいかないといけません。エコーの価値も大きいですね。
大人には健診があり、採血やCTもできますが、子どもの場合は被爆の問題や針を何度も刺せないという事情もあるので、侵襲性の少ないエコーは親御さんや子どもにとっても画像で説明ができるため、説得力のある治療に繋がります。
当院には様々な症例が来るので、ほかの病院ではエコーを撮らないような子どもにもエコーをしてみると意外な結果が出てくるなど、そういう面白さはあります。

カンファレンスはいかがですか。

1番目は夜間・当直帯で入院した子どもの申し送りです。
夜間帯は診断をつける場所ではないので、夜は緊急度に応じて入院を決めます。2番目は専攻医が難渋しているところで、指導医とうまく方針が決まらなった場合には全体に話をさせてもらって、専門の先生からも意見をもらうような形にしています。難症例の小児科全体での共有と治療方針の決定ですね。若手の専攻医を責めるのではなくて、見落としがある分はフィードバックをします。
自分が失敗したと思っている分にはいいのですが、失敗とすら認識していないこともあるので、そういったときにどうすべきだったのかを指導医の先生から指摘されています。

初期研修医の指導はどのようにしていらっしゃいますか。

初期研修医は小児科に関わらず、色々な科に行くわけですが、子どもの診療を苦手と思う先生は多いので、病棟の主治医になったり、診療も実際にやってもらっています。一度診たことがあるのとないのとでは全く違いますし、一度診たことがあれば、次に子どもを診るときに見逃してはいけないものを見落とさなくなります。
整形外科に行く場合、小児整形外科の専門医がいる施設は少ないですし、骨折であれば成人、小児に関係なく診ないといけないでしょう。内科の医師も子どもを診る際には専門機関に送るべきサインは大人のような頭や心臓といった血管系でなく、呼吸だったりするので、そういったことが伝わればいいなと考えて指導しています。

ご趣味などをお聞かせください。

サッカー観戦です。当院はチーム制なので、当直が終わったときなど、交代で早く帰れるように、オンとオフの切り替えはしやすい環境だと思います。

今後のご予定をお聞かせください。

私は早い決断が苦手なので、救急医はできないタイプです。そういった自分の特性も当院で分かりました。
現在、子どもの心の問題はクローズアップされていますが、それは子どもに限らず、親御さんも含むものであり、私はそこに関わる医療がしていきたいと思っています。そこでダブルライセンスという形で、このあとは精神科の専攻医をすることが決まっています。これは新専門医制度で認められているものです。
当院では小児科専門医を取ったあとは救急に進む人が多いのですが、私は精神科に行きます。寄り添ったり、言葉だけではない精神科医療を学びたいです。子どもの頃に挫折があると、大人になって辛い感じになっていることが多いので、そこをうまくサポートできる医師になりたいと考えています。

専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

イメージではなくて、見学に行き、実際に話してみて、自分に合った病院が一番いいです。全ての人に合う病院はないので、自分が関わり、自分の特技を活かせそうな病院を選びましょう。それが当院かどうかは見学で体感してみてください。
コロナ禍で見学がなかなかできず、大変なようですが、皆さんのことはお客様ではなく、働いてくれる一人の医師として、戦力であると期待されています。
当院は内科、外科を含めて、気さくで聞きやすい先生方が多く、その先生方の中で働けるのはとてもプラスになります。循環器の先生も来られ、体制も整ってきていますので、主体的な研修が可能です。超がつくほど手厚い教育病院ではありませんが、自分でやっていきたい、学んでいきたい、経験値を積んでいきたい方には本当にいい病院ですよ。
北九州市という街もJRの便が良く、新幹線も空港も都市高速もあって、便利な街ですので、お勧めです。

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