専門研修インタビュー

2022-12-01

中濃厚生病院(岐阜県) 指導医(専門研修) 勝村直樹先生 (2022年)

中濃厚生病院(岐阜県) の指導医、勝村直樹先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

中濃厚生病院

〒501-3802
岐阜県関市若草通5-1
TEL:0575-22-2211
FAX:0575-24-7139
病院URL:http://www.chuno.gfkosei.or.jp/

勝村直樹先生の近影

名前 勝村 直樹 中濃厚生病院 副院長、診療統括部長、内科部長 指導医
職歴経歴 1960年に岐阜県加茂郡川辺町に生まれる。1986年に岐阜大学を卒業後、岐阜大学医学部付属病院、岐阜赤十字病院で研修を行う。1988年に中濃厚生病院に内科医師として着任する。1995年に中濃厚生病院消化器内科部長に就任する。2010年に中濃厚生病院副院長を兼任する。2015年に中濃厚生病院内科部長を兼任する。
日本内科学会認定医・指導医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本肝臓学会専門医・暫定指導医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・がん治療認定医、日本緩和医療学会認定医、臨床研修指導医など。

中濃厚生病院の特徴をお聞かせください。

岐阜県関市にある病院です。岐阜県は医療圏が5つに分かれており、関市は中濃医療圏に属していますが、この中濃医療圏は面積が非常に広いです。当院は中濃医療圏の中でも関市、美濃市、郡上市といった長良川沿いの住民の健康を担うという立場で、この地域の中核病院として機能しています。三次救急指定病院ですので、ICUや救命救急センターを併設しており、各診療科も揃っています。地方の病院ではありますが、常勤医師も120人ほど在籍し、日々忙しく一次から三次までの診療に当たっています。

勝村先生がいらっしゃる消化器内科の特徴もお聞かせください。

内科の中でも医師数、患者数ともに多く、積極的に診療しています。若い専攻医から中堅の医師まで幅広い年齢層の医師が働いており、活気のある領域で活動しています。

中濃厚生病院の内科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

全国どこの病院と比べても、大きな差はないかと思います(笑)。当院の内科専門研修プログラムには内科の各診療科を順番にローテートしていくものと、サブスペシャリティを重点的に学べるものとがありますが、今の専攻医はサブスペシャリティを決めてから来る人がほとんどなので、各診療科をローテートしていくプログラムを選んだ人はまだいません。基本的には希望する専門の診療科に籍を置きながら、ほかの内科の疾患などの内科全般も経験していくというサブスペシャリティ主体の研修となっています。例えば、消化器内科に籍を置くと、消化器内科の初診外来、検査、手技もしますが、一方で総合内科の初診外来なども担当したり、内科当直時に入院させた患者さんの主治医をしつつ、内科全般の症例を積みます。

院外の研修先もありますね。

私どもはJA岐阜厚生連の病院なので、岐阜県内の全ての厚生連の病院が連携病院になっています。そのほか、岐阜大学医学部附属病院、岐阜県総合医療センター、岐阜市民病院などの岐阜県内の中核病院とも連携を組んでいますので、専攻医が望むところを選択できるようになっています。

中濃厚生病院の内科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。

当院はこのプログラムを始めたばかりで、まだ専門研修を終えた人がおらず、卒後4年目でレポートを出して、専門医試験を受験する専攻医が初めてです。その専攻医は既に大学の医局に入っていますので、今後はその医局人事に乗って勤務するようになるでしょう。また、3年目の専攻医は当院から岐北厚生病院や岐阜市民病院に出ているところですが、来年、専門医試験を受けます。医局に入局していない専攻医もいますので、専攻医が望めば、研修終了後に当院に勤務することも可能です。

カンファレンスについて、お聞かせください。

消化器内科では毎週金曜日に翌週に入院される患者さんや、その週に入院された患者さんについてのカンファレンスがあります。また消化器内科は消化器外科との連携が不可欠ですので、消化器外科に手術をお願いする患者さんについてのカンファレンスを内科、外科合同で毎週火曜日に行っています。

専攻医も発言の機会が多いですか。

主に専攻医や初期研修医にプレゼンさせることが目的のカンファレンスですので、当然、多いです。勉強になっていると思います。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

当院の消化器内科には女性医師が4人います。消化器内科は汚いなどの理由で敬遠されがちなのに、女性が4人も頑張ってくれていることが嬉しいです(笑)。働きやすさに関しても女性だから困るということは特にないと思います。産前産後休暇や1年ほどの育児休暇を経て復帰し、育児短時間勤務制度を利用している女性医師もいます。

先生が消化器内科を選んだのはどうしてですか。

消化器内科は範囲がかなり広いんです。胃、食道、腸、大腸といった管のところもあれば、肝胆膵もあります。幅広く患者さんを診られるし、検査の手技もまだ分かっていないことも多かったので、遣り甲斐がありました。当院では消化器内科一般を診ており、肝臓のアンギオ、ラジオ波に加え、ESDやERCPも行ってきました。最近は後輩が随分と育ってきたので、私が現場の第一線に立つようなことはありません(笑)。

勝村先生の写真

先生の研修医時代の思い出をお聞かせください。

私の頃は今のような制度ではなく、多くの人が大学の医局にストレートに入っていました。ローテート研修をしたくて、ほかの病院に行った人もいましたが、私は岐阜大学の第一内科にストレートに入りました。第一内科は消化器、血液、神経などを扱っている医局で、色々な疾患をかなり手広く診ていました。私も広くジェネラルに診られる医師になりたいという意識はあったので、第一内科で様々な勉強をしました。それから関連病院に1年ほど出て、また大学に戻り、少ししてから当院に赴任しました。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

専攻医になると症例も増え、慣れも出ることで、簡単に済ませたり、自分の関心のあるところだけを診たがったりしがちです。忙しくなると、診察が疎かにもなります。しかし患者さんの過去のカルテを見直したり、検査の結果を網羅してみると、「これはちょっと問題にしておかないといけないな」ということがどうしても出てきますので、患者さんをしっかり診察したうえで、きちんとプランを立てようと話しています。

今の専攻医を見て、いかがですか。

70点から80点ぐらいの働きをしてくれています(笑)。しっかり診察すること、自分が苦手な部分にも取り組むこと、患者さんの訴えや症状で分からないことがあってもスルーせず、きちんと追求していけば、さらに力がつくはずです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

悪いわけではないのですが、プライマリケアを2年かけて学んでも、専門医になると、それがあまり活かせていない場合が多いです。結局、卒後10年、15年経った医師は自分の診療科の患者さんだけを診る形になるので、その診療科の主力となれた能力をもう少し活かせるような制度設計があるといいですね。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

この制度も軌道に乗っているという段階には全く来ていません。私は内科の専門研修プログラムの統括委員長も務めていますが、多くの専攻医はサブスペシャリティを決めて、そこにエネルギーを注ぎたいと入ってくるのに、そこで自分の専門領域以外の領域に身を入れて学べるのかというと、なかなか難しいです。形のうえでは症例やレポートを出さないといけないのですが、実際は初期研修のときの症例を半分ぐらい使ったりすることもありますので、内科をより深めていくという理想にはなっていない状況です。ほかの病院からレポート審査も回ってくるのですが、きちんとプロブレムを立て、それに基づいて書けているレポートは少ないです。忙しくて、手が回らないのでしょうね。こちらもレポート一つでも、きちんと指導しようと思うと、1枚につき1時間はかかりますので、指導医も大変です(笑)。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

当院の内科には内科の領域全般にわたる患者さんがいらっしゃいますし、症例数や種類が豊富ですので、幅広い研修が可能です。特にサブスペシャリティを決めて、そちらを主体に研修したいということであれば、消化器であれ循環器であれ十分な研修ができます。指導体制もそれぞれの専攻医のレベルや意気込みに応じていますし、3年間で研修を終える体制になっています。専攻医が主体的に取り組める環境ですので、是非、当院で専攻医研修をしていただけたら幸いです。

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