専門研修インタビュー

2022-01-01

北里大学メディカルセンター(埼玉県) 専攻医 江原かおり先生(腎臓内科) (2022年)

北里大学メディカルセンター(埼玉県)の専攻医、江原かおり先生(腎臓内科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

北里大学メディカルセンター

埼玉県北本市荒井6-100

江原先生の近影

名前 江原(えはら)かおり
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 埼玉県さいたま市・ 北里大学 / 2018年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

父が医師で、内科の勤務医をしています。母は私の出産後すぐに退職していますが、看護師をしていました。幼少の頃から父の仕事を見学に行ったりして、病院で働くイメージがついていたので、身内の相談に乗ったり、患者さんと話している父の姿を見て、私もそうなりたいなと思い、医師を目指しました。

学生生活はいかがでしたか。

母の実家が大学と同じ相模原市にあるので、祖父母の家に住み、生活を支えてもらっていました。私は小さいときにテニススクールに入り、高校では部活動でテニスをしていたので、大学でも硬式テニス部で6年間、活動しました。充実していましたね。6年生のときは東医体の団体戦で3位に入賞し、賞状をいただけたので、続けてきて良かったなと思いました。

初期研修の病院を北里大学メディカルセンターに決めたのはなぜですか。

大学の6年間は地元の埼玉県から離れたので、初期研修では埼玉県に戻りたいと考えていました。北里大学メディカルセンターは北里大学病院の関連病院なので、クリニカルクラークシップでこちらの内科に来て、そこで初めて当院のことを知ったんです。小規模から中規模ぐらいの病院で、先生方が初期研修医と一緒になって手技をしていたり、密に指導されている印象があったので、当院を選びました。

では見学はなさっていないのですね。

クリニカルクラークシップが見学のような感じだったので、改めて見学はしませんでした。

初期研修を振り返って、いかがですか。

ローテートする診療科が当院だけでは足りなかったので、2年目に本院である北里大学病院で足りない診療科を補うことができました。当院は初期研修医が少なく、どの科を回っても、私一人だけという状況だったので、多くの「受け持ち」を経験できたり、手技なども独り占めで、やりたいようにできました。また、当院は二次救急の病院なので、救急外来の当直では指導医の先生とファーストタッチをしたり、ある程度の自由がきく環境で伸び伸びと研修させていただきました。コメディカルスタッフの方々とも顔見知りになり、アットホームな雰囲気の中で仕事を始めることができたのが良かったです。

北里大学病院のほか、外部の病院にも行かれましたか。

千葉県浦安市の東京ベイ・浦安市川医療センターに行きました。当院では三次救急を診ることができないので、北里大学病院かER型の病院の中から選ぶことになっていて、私はER型の東京ベイ・浦安市川医療センターにしました。ハードでしたが、とても勉強になりました。

腎臓内科を専攻しようと決めたのはいつですか。

学生の頃から内科と外科なら内科がいいと思い、その中では腎臓内科かなと漠然と決めていたんです。腎臓内科では腎臓という臓器を切り口にして、全身の病気に関わり、一人の患者さんを比較的長く、密に診られることがいいなと考えていました。それで初期研修で腎臓内科をローテートしたら、病気を推察したり、透析の患者さんの管理をしながら患者さんの生活に密着できたりする科だということが分かりました。指導医の先生も幅広く診ることを重視されていましたし、色々な疾患を診られて楽しかったこともあって、腎臓内科に決めました。

専攻医研修先を北里大学メディカルセンターに決めたのはどうしてですか。

初期研修では北里大学病院にもお世話になりましたし、外部の病院にも行かせていただけたのですが、J-OSLERが始まることもあり、自分で診られる症例を多く経験でき、他科の先生方との垣根が低く、相談しやすい当院に決めました。最初は腎臓内科というよりは内科の研修をするという意味でも大学病院との関わりもありつつ、市中病院らしく自分の思うように進められる当院は私に向いているのではと考えました。

江原先生の写真

専攻医研修はどのような内容ですか。

専攻医研修2年目の今年は病棟業務と腎臓内科ならではの透析室の業務があり、上の先生方から頼まれた初診の患者さんを外来で診ることもあります。病棟では「受け持ち」という形で、患者さんを一人で診ています。専攻医研修1年目の去年は外来の枠をいただき、総合内科のように内科宛ての初診の紹介患者さん、腎臓内科の初診の患者さんを診たり、そこから自分が入院させた患者さんの再診を取ったりしていました。また、救急外来からの引受当番ということで、外科の先生方が受けた内科の疾患を診たりもしていました。今年は前半に北里大学病院で研修していたこともあり、外来の枠を持っていません。大学病院では当院にない呼吸器内科や血液内科を回ってきました。来年は当院で腎臓内科を中心に、内科の研修をする予定です。

専攻医研修で特に勉強になっていることを教えてください。

上の先生方がある程度、任せてくださいますので、初診時の身体所見や病歴を一人で全部まとめたり、ソーシャルワーカーさんやコメディカルスタッフの方々とも連携を取って退院調整をするなど、初期研修では任せていただけないようなところに踏み込み、自分で組み立ててできることです。患者さんやご家族との関わりを大事にしていこうということも実感しています。

当直の体制について、お聞かせください。

回数は月に3回ぐらいです。当院は二次救急の病院なので、埼玉県で決まっている輪番日があり、それによって体制が変わります。輪番日に内科の当番をするときには1人でしますが、外科に1人と初期研修医が1人いますので、その3人で救急車とウォークインを全部診ます。輪番日でない日は内科と外科で合わせて1人です。これに初期研修医1人がいることもあります。内科医として1人で入りますので、カバーしきれないところはオンコールの先生に相談しながら進めています。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

腎臓内科の先生方はとても優しく、「とにかく経験することがいいだろう」とパンク寸前まで任せてくださっています(笑)。私としては有り難いですね。内科に限らず、外科などの他科の先生方も私が初期研修から当院にいたこともあり、とてもよく指導してくださいます。病棟で外科の先生と一緒になって手技をすることもありますし、外科の先生方とも距離が近く、皆さんに手厚くご指導いただいています。

病院に改善を望みたいことはありますか。

当院は北里大学病院の関連病院であり、どうしても連携先が北里大学病院になってしまいます。今後、当院で専攻医研修プログラムを取る人が増えてくれば、埼玉県内の市中病院とも連携できるといいと思います。

初期研修医の指導にあたって、気を付けていることはありますか。

初期研修医の中には内科に行くか、外科に行くかも決まっていない人もいます。腎臓内科は患者さんの病歴が長かったり、考えないといけないプロブレムの数が多かったりと、初期研修医に一気に負荷をかけると大変になってしまうので、どの科に行っても使えるような知識を中心に教えています。例えば、内科での患者さんの点滴やお薬の管理などですね。一方で、内科を志望している初期研修医にはもう少し詳しく教えようと思いながら指導にあたっています。

カンファレンスはいかがですか。

毎朝、透析室に集合し、腎臓内科のスタッフ3人と初期研修医で同じPCの画面を見て、上から順番に病棟の患者さんを把握していきます。それから透析のカンファレンスが週に1回、回診が週に1回あります。回診は部長の長場泰先生を中心に患者さんのもとを巡り、受け持ちの患者さんについてはプレゼンテーションするという形です。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

私が当院を好きなのはこの点が一番大きいです。初期研修のときもコメディカルの方々に育てていただいたと言ってもいいぐらいです。看護師さんも細かく教えてくださるし、臨床放射線技師さん、薬剤師さんにも助けていただいています。土地柄、高齢化が非常に進んでおり、家に帰れない患者さんや転院が必要な患者さんも多いので、リハビリのスタッフの方々や医療福祉支援センターのソーシャルワーカーさん、退院支援の看護師さんと相談しながらやっています。お互いに情報を共有でき、とても働きやすい関係性になっていると思います。

江原先生の写真

何か失敗談はありますか。

初期研修の頃は救急外来での動き方が分からず、立っているだけになってしまったことがありました。そのときは救急外来のベテランの看護師さんから「早くやりなさいよ」とお尻を叩くような感じで教えていただきました(笑)。専攻医になってからはミスが怖くて、必要なさそうなところまで上の先生に聞いてしまうので、失敗を未然に防げているような気がします。

専攻医研修と初期研修の違いはどんなところにありますか。

責任感ですね。患者さんとご家族からしたら主治医の先生よりも顔を合わせる機会が多いので、検査の組み立てや処方の内容などに間違いがないよう、また患者さんやご家族との話し方に失礼がないよう、気をつけています。それから、初期研修ではほかの科の先生方から相談されることはないので、専攻医になって、ほかの科の先生方から透析のことで相談されたり、質問されたりすると、気を引き締めてやらないとなと思っています。

専攻医同士のコミュニケーションは活発ですか。

当院でのこのプログラムはまだ始まったばかりで、このプログラムの同期はおらず、1年下に1人います。しかし当院は大学病院の関連ということもあり、大学病院からのローテートで来る専攻医は知っている人が多いので、患者さんの相談などがしやすく、コミュニケーションの機会は多いです。

今後のご予定をお聞かせください。

内科の専門医を無事に取ることが今の目標です。私が当院を選んだのは埼玉県の病院だからということが大きいんです。埼玉県は医療体制がかなり厳しい土地柄なので、埼玉県内の病院にずっと勤務できたらと考えています。専門医を取ったあとは腎臓内科や透析の専門研修をしつつ、この病院で働けたら嬉しいです。

現在の臨床研修制度について、ご意見をお願いします。

今は私たちの頃よりも必修科目が増えています。私は最初から内科志望でしたが、外科や耳鼻咽喉科なども回ったことで、今に活きている知識も多くあるので、初期研修で決められた科を回り、学んでいくのは大事だと考えています。

専門医制度についてもご意見をお願いします。

私の指導医の先生方は「腎臓内科医である前に内科医であれ」という考えを共通してお持ちで、私も初期研修の頃からそういう思いで研修してきました。そのため、J-OSLERというくくりの中で全部の内科を勉強しましょうというシステムにはあまり抵抗がなかったのですが、実際に始めてみると綺麗にいかない症例も少なくないので、PC上でのサマリー提出には苦労しています。しかし、全ての内科をクリアするというのは重要なのだと認識しています。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

当院は大学病院の分院という形をとっていますので、アカデミックな部分を大事にしつつ、地域の役割としては市中病院ですので、内科の専攻医研修では幅広く、多くの患者さんを自分で診られるのがいいところです。私は初期研修のときから当院にいますが、他科の先生方やコメディカルスタッフの皆さんとの関わりがとにかく居心地良く、皆さんに優しく教えていただいています。初期研修でも専攻医研修でもアットホームな雰囲気で、自分のやりたいことをさせていただきつつ、指導もしっかりしていただけるので、非常にいい環境です。是非、見学にいらしてください。

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