◆ 釧路協立病院の後期研修プログラムの特徴を教えてください。
山崎:まず、症例が豊富であることです。地方の中規模病院でありながら、内科、外科ともにスタッフが揃っているので、通常なら大規模病院に転院させるような重い症例の内科の患者さんでも、ここであれば外科のバックアップがあるので、しっかりと診ることができます。結果として多くの症例を経験することができますので、同じ1年間、同規模の病院で研修したとしても、症例の数や重さで負けることはないと思います。
次に、地域に密着している点です。訪問診療もありますので、患者さんの視点で診ることができるようになります。希望があれば関連の診療所での診察を担当し、総合的に内科を診られるよう勉強することもできます。外来で診ていた患者さんが入院し、退院した後、またその患者さんが外来で来た場合もずっと主治医として診ていけるというのも地域に密着している当院ならではのことではないでしょうか。
3つ目は、カンファレンスに状況に応じてコメディカルも入るなど、全人的な治療を目指していることです。チーム医療を行っているので、チームリーダーとなれるような医師としての力量も自然とついてきます。
最後に、「道東勤医協友の会」からの依頼で、糖尿病や認知症の講演会での講師をするなど、まだ病院にかかってない人たちに健康教育を行っていることですね。(指導医)
◆ 釧路協立病院での後期研修で、どのようなキャリアアップが可能でしょうか。

山崎:当院での研修は総合医を目指すには絶好の環境であるにもかかわらず、日本家庭医療学会の認定施設になっていなかったので、初期研修を終え、家庭医を目指す医師は他の研修施設へ出ていかざるをえなかったんですね。そのような状況は非常にもったいないですから、現在、認定の準備をしているところです。また、病院としての「売り」にしているわけではありませんが、内視鏡学会の認定施設になっているので、そちらの資格を取ることもできます。したがって、当院の研修医は皆、内視鏡を扱うことができます。(指導医)
◆ 指導する立場として心掛けていることをお聞かせください。
山崎:今までは患者さんが多くて忙しすぎたので、教えるというよりも研修医の勉強時間を保証するために自ら働いて、研修医になるべく負担をかけないようにしながらやってきました。その分、研修医にはしっかり勉強してもらっていましたが、それでは良くないと思い、最近では指導に力を入れています。研修医は勉強をしたい人がほとんどですので、研修医が集まる病院にするにはやはり研修を充実させなければなりません。そのために自ら働くというよりもしっかりと指導する時間を作り、指導していくために私自身も勉強をしています。
今、来ている研修医には「当院に来てもらって非常に有難い」という気持ちを常に持っています。これから来る研修医にも同様です。当院の研修医は忙しいのを分かったうえで来ているので、やる気もあるし、力もある人ばかりです。それゆえに来てもらった以上は後悔させない研修をしてもらうことを心掛けています。
最近の研修医は以前と比べ優秀な人が多く、感心しています。昔はバーバリズムというか、「現場で覚えろ」的なことが多かったのですが、それではせっかくのいい素材を逃してしまうことがあったのではないでしょうか。いい素材をいかにいい医師に育てられるかは指導医の腕にかかっていると思います。(指導医)
◆ 研修医に言いたいことはどんなことでしょうか。
山崎:まずは「人の痛みを分からない医師になるな」ということです。人の病気は治すけれども、癒さない医師もいます。どんな人に対しても優しい医者になってほしいですね。
次に「専門バカになるな」ということです。確かに高度な専門性は必要で、そのような診療を行う医師も必要です。しかし大部分の患者さんは何でも診てくれる医師の方がいいと考えています。将来、専門の勉強をする場合でも、その前に1年でも2年でも総合的に内科を診られる力をつけておいた方がいいでしょう。(指導医)
◆ これまでに忘れられないような研修医はいましたか。
山崎:「医学的にすごい」という人はあまりいませんが、患者さんを生活の中で診る機会を多くとっていますので、忘れられない場面は豊富ですね。研修医が酸素を担いで、ボランティアで末期がんの患者さんをマラソン大会や運動会に連れていったこともありますし、当院のホールで牧師さんまで呼んで、結婚式をしたこともありますよ。(指導医)
◆ 臨床研修制度の改革が取り沙汰されていますが、ご意見をお願いします。
山崎:初期研修期間が2年から1年に短縮されるというのは、当院のような医師不足の病院からすると、医師が早く来てくれるというメリットがあります。しかし、2年間しっかりと基礎研修を行ってきた研修医の方が研修制度が始まる前に来ていた後期研修医よりも優秀な人が随分と多いんですね。以前は熱心な指導医についていた研修医とそうでない研修医との間で当たり外れが大きかったのですが、2年間の研修プログラムに沿って研修を受けると、皆いきなり当院での診療業務を担当できますので、2年という期間は妥当でしょう。
1年で初期研修を終えて、後期研修に入っても、結局は後期研修先で再度教えられるようなことも増えてくるでしょうし、早ければよいということは必ずしもないでしょう。当院としては、臨床研修制度がどのような形になったとしても、研修医に選ばれる病院であるために常にグレードアップしていく必要があると思います。(指導医)
◆ 医師を目指したきっかけをお聞かせください。
西岡:立派なきっかけはありませんが、薬害エイズの問題があったときに、本来は人を助けるべき医師が人を害することをしているということに、小さいながら衝撃を受けたということでしょうか。そこから「人の命を助ける医師になりたい」と思うようになりました。(シニアレジデント)
◆ 学生生活の思い出をお聞かせください。
西岡:山岳部に所属していたので、山登り中心の学生生活でした。卒業後は医学中心の生活になるので、大学時代は空いている時間を医学以外のことに使おうと思い、海外旅行にも行っていました。(シニアレジデント)
◆ 初期研修の病院を選んだプロセスをご紹介くださいますか。
西岡:勤医協中央病院は研修医・医学生を多く受け入れている病院なので、比較的、気軽に見学に行けました。また、大学の実習等を利用していくつかの病院を見学しましたが、最終的に勤医協中央病院で初期研修をすることに決めました。(シニアレジデント)
◆ その理由をお聞かせください。

西岡:大学医局に入らなかった理由は第一戦に立った臨床をやりたかったからです。皆が抱えているような健康問題に取り組んでいきたいと思っていました。大学病院だと専門性が高いので、よくある病気というより比較的稀だけれども治すのが難しい病気が集まってくる傾向があります。それよりも一般的な症例が多く集まる病院をと考え、症例が豊富であり、かつ患者さんの健康問題を総合的に捉える研修ができることを基準としました。また、当院も同様なのですが、勤医協中央病院も看護師や検査技師などのコメディカルとの垣根が低く、連携した医療ができる点にも惹かれました。(シニアレジデント)
◆ それでは後期研修先を選んだ理由はどんなことなのでしょうか。
西岡:釧路協立病院を後期研修先に選んだ理由は内科の力をつけたいと思ったからです。初期研修では内科の研修を受ける期間が短く、私の場合だと10カ月か11カ月ほどで、全部合わせても1年に満たない期間しかありませんでした。初期研修である程度の土台はできたのでしょうが、初期研修中は指導医が常にバックについている状態ですので、自分が責任を持って判断する場面がありません。そこで、自分が責任を持って判断できる「実践的な」内科の力をつけたいと考えました。また、「医療過疎」と言われる北海道の地方の現状を見てみたい気持ちもありましたね。札幌の病院と比べると指導体制はやはり薄くなりますが、その分実践的な力がついてきたことを感じています。(シニアレジデント)
◆ 後期研修プログラムの特徴はどういった点にありますか。
西岡:2010年4月からは家庭医コースが新たにできますが、これまでは総合内科としての研修で、期間は1年でも2年でもよいという内容でした。当院の内科は専門分化しておらず、総合内科としてあらゆる疾患に対応しています。加えて、外科、整形外科もありますので対応できる疾患の幅がとても広いです。
また、指導医との間や各科間、コメディカルとの間に壁がないことが大きな魅力で、幅広い症例に対し、基本的には自分で判断して治療を進めつつも、困ったときにはすぐコンサルトできたり、協力を求めたりすることができます。中規模病院ならではのフットワークの軽さもあると思います。その結果、スタッフ全員でチーム医療に取り組め、その患者さんのためにはどうするのが一番良いかを考え、それを目指す医療ができます。
また、医師不足の裏返しではありますが、例えば外来、病棟、内視鏡、透析、訪問診療など本当にありとあらゆることに携われることも挙げられますね。外来から入院、退院と1人の患者さんをずっと一連の流れの中で診ることができるというのも特徴の一つです。(シニアレジデント)
◆ 今後のキャリアアップについて、お聞かせください。
西岡:もともと産婦人科に興味があるので、こちらでの研修が終わったら、産婦人科に行きたいと考えています。産婦人科を専攻するにしても、内科の知識は基本です。数年かかったとしても、内科の知識を増やすための勉強をするのは無駄ではないと思っています。(シニアレジデント)
◆ 現在の臨床研修制度について、どのようなご意見をお持ちですか。
西岡:学生や研修医にとっては良かったのではないでしょうか。今までは大学病院の医局に入るのが主流だったので、勤医協の上の先生からは「大学病院に入らず、勤医協の病院に入るということは世の主流から外れることだった」という話を聞いたことがあります。その点では選択の幅が広がることは良いことでしょう。
初期研修を行うにあたっては大学病院より市中病院の方が向いている人も多いでしょうから、その自由を制度として設けたことは本当に良いことだと思います。しかし、一方で大学医局の人数が減り、地方の病院へ医師を派遣できなくなったという問題もあります。どちらにせよ医局人事で地方の医師を回す制度は機能しなくなっていたように思います。(シニアレジデント)
◆ 研修病院を選ぶにあたってのアドバイスをお願いします。
西岡:最終的に総合内科医になりたいという人ではなくても、内科の知識は必要です。また、地域で働くことで疾患のみではなく患者さんの社会背景、さらには地域の状況についても考えられるようになり医師としての幅が広がります。将来進む科に関わらず、診療の幅、医師としての幅を広げたい人、総合内科に興味のある人には一度地方の病院で働いてみることをお勧めします。その数年間は無駄にはならないでしょう。(シニアレジデント)
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