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感染症学Learning

ここでの感染症の問題は、国家試験や定期試験等としては、出題頻度の低い問題を取り上げました。試験対策としては、創医舎のネット配信講義でふれたオーソドックスな感染症が大切で、up to dateなものは、未知な部分も多いため出題される可能性は低いのではないかと思います。しかし、ひとたび外来に出ると、新聞等で騒がれている病気のことを患者さんから聞かれることが多いものです。雑学も兼ねて感染症の考え方のアウトラインをつかむつもりで読んでください。
 
感染症例題
正しいのはどれか?2つ選べ。
 a. SARSは新型コロナウイルスが原因となる。
 b. 炭疽菌は、人から人へ飛沫感染する。
 c. 鳥インフルエンザ感染症に対して、ノイラミダーゼ阻害剤は無効である。
 d. エボラウイルス感染症では、DICを合併する。
 e. ウエストナイル熱は、径気道感染をする。
*正解は文末に提示

1)例題選択肢解説

a.
SARSは、設問のとおり、コロナウイルスの新種と考えられています。コロナウイルスといえば、ライノウイルスと並ぶ、ごくありふれた冬の鼻かぜウイルスの代表です。ところが新型のSARSは、間質性肺炎を起こし、いまだ有効な治療もみつかっていません。狸やハクビシンの食肉が原因といわれていますが、人から人もあるようです。なんといっても、ウイルスの研究者が多く感染したことで話題になりました。致死率は高くないため、変な好奇心(ウイルスとの濃厚接触)を出さなければ、それほど怖いものではないかもしれません。
 
b.
炭疽菌は、グラム陽性嫌気性桿菌です。空気中では芽胞の状態で存在します。主に傷口から侵入して皮膚炭疽(炭のように黒い壊疽)という病変を作ります。これはたいした病気ではありません。恐ろしいのは、芽胞を大量に吸引することによる肺炭疽です。他の嫌気性菌同様、出芽する際に毒素を産生し、気道を閉塞してしまいます。直接の死因は毒素ですので、抗生剤はあまり有効でありません。ワクチン接種が必要というわけです。人体内では芽胞形態をとっていないため、人から人への感染はありません。ちなみに、最近、この毒素に対する中和剤が研究され、あと少しで実用化されそうになっています。そして、この研究成果が雑誌に紹介された途端に、炭疽菌テロがアメリカで起こりました。早めに使い切ってしまおうと考えたのでしょう。テロリストも一流のジャーナルを読んで日々勉強していることを物語っています。学生さんも見習いましょう。
 
c.
これは意外と誤解が多いのですが、新種の鳥インフルエンザにもノイラミダ-ゼ阻害剤(タミフル)は有効です。また、汎用されているインフルエンザ抗原検査キット(10分で診断可能)でも検出可能です。よく新聞でH5N1と書いてあると思いますが、Hというのは血球凝集素の型(抗原性)、Nというのはノイラミダ-ゼ(感染力に関係する酵素)の型です。N1型であれば現在の薬で問題ありません。ただし、H5型に対する免疫をほとんどの人が持たないため大流行する可能性があるのです。現在政府は、水際でウイルスを封じ込めようとすると同時に、ノイラミダ-ゼ阻害剤の大量生産を行っています。すでに、インフルエンザと診断され、治療を受けた人の中に、鳥インフルエンザも混じっているのでは?という気もしています。
 
d.
エボラウイルスは、RNAウイルスで、フィロウイルス(ひも状ウイルス)です。黄疸出血熱といわれ、多臓器障害を起こすウイルスです。その感染力の強さと、80パーセントにも及ぶ致命率の高さから、恐ろしくて研究者さえいないほどの最凶ウイルスです。自然宿主や治療法もわかっていません。そして、感染を広げる一番の要因が、設問にあるDICです。体のあちこちから出血を起こし、しかもその血液は凝固しないため長く感染源となります。飛び散った血液を処理しようとした人、患者さんの止血処置をしようとした人たちが次々に感染します。皆さんも、決して他人の血液に素手で触れるようなことはしないよう日常から訓練しておきましょう。同様の疾患である、マールブルグ熱はサル、ラッサ熱はネズミと、自然宿主が判明しているためそれらの動物を駆除、ないし接触を避ければアウトブレイクは防げます。一方、エボラの宿主もサルではないかといわれましたが、現在では否定的です。それどころか、サルの間ではどうやら空気感染をしているらしいとわかり、世界中の研究者がぞっとしました。人の間ではやり始めると大変なことになります。
 
e.
西ナイル熱は、もともとナイル川流域にはやっていた疾患が、アメリカに輸入され、脳炎患者が発生したとして話題になりました。フラビ・トガウイルスといって、蚊に刺されることで感染するウイルスです。一昔前では黄熱病(そう。野口英世)。最近では、デング熱というのもこの仲間です。流行地がニューヨークということで騒がれましたが、脳炎の発症率は高くないようです。日本には、もともと日本脳炎があるためワクチンの歴史も長いのですが、アメリカはワクチンよりも蚊の駆除に力を入れてるようです。なお、このウイルス群の自然宿主は個々に異なり、西ナイル熱は鳥、日本脳炎は豚です。蚊の発生する夏場に、頭痛、発熱、痙攣などで発症します。こういう患者さんを診たら、海外渡航歴を聴取することも大事です。
 
感染症例題の正解(a、d)
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