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〜代謝編〜 糖尿病合併症

糖尿病は、高血糖を主徴とし網膜症、神経症、腎症などの各種合併症を生じることが臨床上の問題点の一つである。これらは細小血管症と呼ばれるものである。また、虚血性心疾患、脳血管障害や閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患(大血管症)も合併しやすい。臨床上重要であると同時に、このような全身性の合併症を生じやすい疾患は試験問題としても出題されやすい。
 
本稿では、糖尿病の代表的な合併症である網膜症、神経症、腎症について述べることとする。
これらの合併症は厳格な血糖コントロールにて発症・進展を抑制することが可能であることが報告されている。従って、合併症といえども良好な血糖コントロールを維持することが基本であることは留意すべきである。
 
合併症の出現時期:糖尿病の罹病期間、血糖コントロールの状況によるので個人差はあるが、一般的には下記の通りである。
 
 神経症:6年
 網膜症:8年
 腎症 :10年

1. 糖尿病性網膜症(参照問題:参照図

糖尿病に関係する眼科領域の合併症は、網膜症のみならず白内障、緑内障などがある。網膜症は、就労年齢の失明原因の首位を占め、臨床上の大きな問題となっている。
未治療・血糖コントロール不良の糖尿病患者を診た場合は、必ず網膜症を確認するとともに、定期的な観察が必要である。
 
国家試験対策としては、下記の分類と治療法を理解・記憶しておけば十分と思われる。

網膜症の分類

1) 単純(非増殖性)網膜症:
病変は網膜内に限局。
毛細血管瘤、点状・斑状出血、硬性白斑
 
⇒ 良好な血糖コントロールで自然消退することがある。
 
2) 前増殖網膜症:
病変は網膜内に限局。
軟性白斑の多発、網膜毛細血管閉塞
⇒神経組織の壊死、新生血管の出現につながる
(=増殖網膜症)
 
⇒ 光凝固療法
 
3) 増殖網膜症:
病変は網膜外に及ぶ。
網膜血管閉塞が広範囲
⇒ 新生血管病変破綻により網膜前出血・硝子体出血新生血管の増殖は線維組織の増殖を伴い、組織の収縮により牽引性網膜剥離をきたす
⇒ 失明の原因に
 
⇒ 硝子体手術
 
a. 血糖コントロール上の注意点
確かに、糖尿病性網膜症があっても血糖コントロールの重要性は変らない。 しかし、未治療例、コントロール不良例での急激な血糖降下や極端な運動療法(負荷)施行は網膜症の出現ないし増悪を招くので、慎重に行う必要がある。このような症例では緩徐に血糖を低下させることが肝要である。
 
b. 網膜症の診断
眼底検査で上記所見あれば診断は可能
蛍光眼底造影検査:蛍光色素を静注して行い、特に通常の眼底検査ではっきりしない早期の増殖変化をとらえる。
 
c. 網膜症の治療
光(レーザー)凝固療法:前増殖網膜症の時期に、蛍光造影で血管閉塞が生じている部位に光凝固をする。新生血管出現の予防を図る。
硝子体手術:光凝固療法で増殖性変化を阻止出来ない症例硝子体出血や網膜剥離を伴う増殖網膜症に対して行う。

2. 糖尿病性神経症:国試では代謝領域だけでなく神経領域でも問われるので整理しておきたい

糖尿病性神経症は、運動、感覚、自律神経障害とに分類される。
神経症の出現・進展予防は血糖コントロールが重要で、HbA1cで6.5〜7%以下を目指す。
 
1) 運動障害:
外眼筋麻痺、顔面神経麻痺
 
2) 感覚障害:
globe & stocking型のポリニューロパチー手根管症候群、尺骨神経障害、腓骨神経障害など自覚症状としては、しびれ、感覚鈍麻、疼痛振動覚、腱反射の低下、神経伝導速度低下を認める。
治療は疼痛に対してカルバマゼピン、メキシレチンなど。
 
3) 律神経障害:
起立性低血圧
縮瞳、対光反射などの異常(Argyll Robertson徴候
便秘、下痢
頻尿、尿閉(神経因性膀胱
陰萎、発汗異常など

3. 糖尿病性腎症

糖尿病性腎症による腎不全のため、透析療法が必要となる患者数は年々増加し、維持透析導入原因疾患の第1位となっている。
従って、糖尿病患者では十分な血糖コントロールに加え早期の腎症発見・進展予防が必要となる。

糖尿病性腎症の病期分類

病期分類は尿中微量アルブミン量、GFRに基づく
微量アルブミンの診断基準(太字部分が重要)
24時間蓄尿(mg/24時間)
正常:<30
微量アルブミン:30〜300
顕性蛋白尿:>300
病期 臨床的特徴
尿蛋白(アルブミン) GFR(Ccr)
第1期(腎症前期) 正常 正常時に高値
第2期(早期腎症) 微量アルブミン尿 正常時に高値
第3期A(顕性腎症前期)
第3期B(顕性腎症後期)
持続性蛋白尿 ほぼ正常
持続性蛋白尿 低下
第4期(腎不全期) 持続性蛋白尿 著明低下
(血清クレアチニン上昇)
第5期(透析療法期) 透析療法
特に、第2期では糸球体濾過率の亢進(hyperfiltration)が特徴
早期腎症や顕性腎症前期を見逃すことなく、この時期において適確な治療をし、進行を食い止める必要がある。


早期腎症における治療

(1)血糖コントロール、(2)血圧の正常化、(3)低蛋白食が中心となる。
そして、尿中微量アルブミンを減少させることが目標となる。
 
(1)血糖コントロール
厳格な血糖管理が望ましい
HbA1c:6.5%以下
 
(2)血圧コントロール
降圧を図ると尿中微量アルブミンを減少させるだけでなく、顕性蛋白尿への進行が抑制される。
特に、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の有効性が証明されている。
降圧目標:130/85mmHg以下
 
(3) 低蛋白食
腎症進行阻止の上で有効。
早期腎症では、1g/kg/日の蛋白制限
顕性腎症期では、0.7〜0.8g/kg/日の蛋白制限

以上、糖尿病の合併症(細小血管症)に関して述べた。上記の知識で国家試験に十分対応できると思われる。また、糖尿病の患者数が増加の一途にある現在、臨床医には必要な知識と考えられるので、身につけておきたい知識である。

参照問題

32歳の男性。視力低下を主訴に来院した。18歳の大学入学時の健康診断で尿糖陽性を指摘されたが、自覚症状がないため放置していた。
最近、視力低下が出現したため、眼科を受診し、前増殖性糖尿病網膜症と診断され、内科受診も勧められた。父親も糖尿病を指摘されている。
身長168cm、体重82kg、脈拍84/分、整。血圧186/94mmHg。尿所見:蛋白3+、糖2+。
血清生化学所見:空腹時血糖:180mg/dl、総蛋白6.5g/dl、アルブミン4.0g/dl。尿素窒素42mg/dl、クレアチニン1.6mg/dl。HbA1c8.8%。
心エコー図で左心室腔の拡大と収縮力低下とを認めた。カラーDopplerの記録を別に示す。
正しいのはどれか。
【解答群
 
(1) 若年発症の2型糖尿病と考える
 
(2) 早期腎症の糖尿病性腎症である
 
(3) 直ちに運動療法を行う
 
(4) インスリン強化療法を行う
 
(5) レーザー光凝固の適応がある
【解答選択】
 
a (1)、(2)
 
b (1)、(5)
 
c (2)、(3)
 
d (3)、(4)
 
e (4)、(5)
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