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〜内分泌編〜 2次性高血圧

高血圧は本態性高血圧2次性高血圧とに分類される。研究は進められているものの、現時点では本態性高血圧の原因は解明されていない。従って、本態性高血圧の診断は、精査の結果、2次性高血圧が否定(除外)されて診断されることになる。また、若年者の高血圧や治療に抵抗する高血圧の場合は2次性高血圧が示唆される。代表的な2次性高血圧には腎実質性高血圧、(腎)血管性高血圧、内分泌性高血圧、薬剤誘発性高血圧などがある。国家試験でも、内分泌性高血圧を中心に高血圧を来たす疾患の病態・診断・治療に関する出題がされている。
 
本稿では、国家試験問題を踏まえた2次性高血圧の鑑別診断について述べることとする(従って、日常診療における鑑別診断とは若干趣を異にする)。
 
高血圧の基準は、「収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg」である。そして、収縮期血圧のみが上昇する1.収縮期高血圧(収縮期血圧≧140mmHgかつ拡張期血圧<90mmHg)と、それ以外の高血圧である2.拡張期高血圧とに分類することがある。

1. 上記の分類に従い、まず収縮期高血圧の鑑別診断を行う。

a. 甲状腺機能亢進症b. 大動脈弁閉鎖不全症などの高心拍出状態を呈する疾患がある。拡張期血圧はむしろ低下している場合が多い(参照問題A)。主訴、理学所見、検査所見のキーワードを列挙した。
 
a. 甲状腺機能亢進症
主訴:動悸、振戦、発汗、体重減少、易疲労感
理学所見:頻脈、眼球突出、甲状腺腫大
検査所見:TSH↓、FT4↑
 
b. 大動脈弁閉鎖不全症参照問題A参照問題B):
主訴:労作時息切れ・動悸、夜間呼吸困難、乾性咳(主訴のみでは他の心疾患、呼吸器疾患と鑑別するのは困難)
理学所見:大脈・速脈、拡張期心雑音
心臓超音波検査:カラードップラーにて大動脈弁逆流の証明

2. 次に、拡張期高血圧の鑑別診断を行う。

試験(制限時間あり)であることを考慮すると、問題文の主訴・理学所見を読んだ段階で診断がつく疾患と検査所見・画像所見を見ないと診断がつけられない疾患とに分けて鑑別診断を進めていくのがよいものと思われる。
 
2-1. 血管雑音を呈する疾患を先に除外する
 
c. 大動脈炎症候群d. 腎血管性高血圧症を念頭に置く。
 
c. 大動脈炎症候群参照問題C):
女性に多い
主訴:微熱、全身倦怠感
理学所見:血圧の左右差、血管雑音
検査所見:炎症所見を呈するのが特徴的
 
d. 腎血管性高血圧症参照問題D):
理学所見:腹部血管雑音
検査所見:血清K↓、レニン↑アルドステロン↑(低K血症を伴う高血圧症の鑑別においても重要)
 
2-2. 特徴的な理学所見から、比較的簡単に診断がつく疾患
 
e. クッシング症候群参照問題E参照問題F):
主訴:四肢脱力発作(筋力低下)、腰痛
理学所見:顔面紅潮、満月様顔貌、中心性肥満、皮膚線状、多毛
検査所見:血清K↓、血糖↑、コルチゾール↑、尿中17-OHCS↑
 
2-3. 診断に検査、画像所見が必要なもの
特に低K血症を伴う高血圧性疾患の鑑別は重要
 
f .腎実質性高血圧症
現病歴:基礎疾患として(慢性)腎炎・腎症
検査所見:血清BUN↑、血清Cr↑、尿蛋白、尿潜血陽性
 
g. 褐色細胞腫参照問題G):
主訴:頭痛、動悸、多汗、体重減少、血圧値の動揺(変動)性
検査所見:尿中VMA↑
画像所見:腹部CT;副腎腫瘍、131I-MIBGシンチグラムの集積像

3. 低K血症を呈する高血圧性疾患(低K血症+高血圧)の鑑別

* なお、Bartter症候群は血圧正常であることに注意(病態理解のため取り上げた)
 
3-1. 代表的な疾患
腎血管性高血圧
レニン産生腫瘍
Bartter症候群 *
原発性アルドステロン症
17α水酸化酵素欠損症
偽性アルドステロン症
Liddle症候群
クッシング症候群
 
3-2. 主訴は低K血症に拠るものが多い
筋脱力、全身倦怠感
口渇、多飲、多尿
耐糖能異常(糖尿病)、代謝性アルカローシス
 
3-3. まず、レニン値の高低で鑑別する
 
. 高レニン性
 
d. 腎血管性高血圧症:既出
動脈硬化、線維筋性異形成などによる腎動脈狭窄が存在。
腎血流量低下によりレニン産生が亢進
 
下記2つは腫瘍性産生と考えて差し支えない
h. レニン産生腫瘍:レニン↑、アルドステロン↑
i. Bartter症候群参照問題H-1〜H-3):血圧正常であることに注意
レニン↑、アルドステロン↑、傍糸球体装置過形成(腎生検)
 
. 低レニン性 → アルドステロン値の高低で鑑別
 
1) アルドステロン高値
 
j. 原発性アルドステロン症参照問題 I):
検査所見:レニン↓、アルドステロン↑
画像所見:腹部CT;副腎腫瘍、131I-アドステロールシンチにて集積像
 
k. 17α水酸化酵素欠損症
理学所見:男性仮性半陰陽、原発性無月経
検査所見:レニン↓、DOC↑、アルドステロン↑
 
2) アルドステロン低値
 
l. 偽性アルドステロン症参照問題J):グリチルリチン製剤使用
検査所見:レニン↓、アルドステロン↓
 
m. Liddle症候群参照問題K):遺伝性尿細管疾患
検査所見:レニン↓、アルドステロン↓

まとめ:
以上、2次性高血圧の鑑別診断について述べた。国家試験の場合、主訴・理学所見・検査所見が問題文として全て記載されている。従って、血圧値をみて、収縮期高血圧を除外し、身体所見から、クッシング症候群のような特徴的な身体所見のある疾患か否かを確認する。身体所見のみでは診断の付けられない疾患は、記載した検査値・画像所見で絞り込む。選択肢に診断名が載っている場合があるので、問題文を一読しただけで診断できる場合が多い。得点しやすい分野の一つである。確実にマスターしていただきたい。

参照問題 A

50歳の男性。夜間の呼吸困難で来院した。
20年前に心雑音を指摘され、心電図で心肥大を認めた。
血圧152/34mmHg。胸骨左縁第3肋間に駆出性収縮期雑音と拡張期雑音を聴取する。
この疾患でみられるのはどれか。
【解答群】
 
(1) 速 脈
 
(2) 奇 脈
 
(3) 恐司裂
 
(4) 僧帽弁開放音
 
(5) Austin Flint雑音
【解答選択】
 
a (1)、(2)
 
b (1)、(5)
 
c (2)、(3)
 
d (3)、(4)
 
e (4)、(5)

参照問題 B

56歳の男性。中学生の頃から近医を受診するたびに心雑音を指摘され、精査を勧められていたが、自覚症状がないので放置していた。
3か月前から階段や坂道を昇るときに息切れと動悸とを自覚するようになった。2日前から就寝時に、乾性咳と呼吸困難とが生じたので来院した。
心エコー図で左心室腔の拡大と収縮力低下とを認めた。カラーDopplerの記録を別に示す。
 
診断はどれか。
 
【解答群】
 
a 肺高血圧を伴った心房中隔欠損症
 
b 僧帽弁閉鎖不全症
 
c Valsalva洞動脈瘤破裂
 
d 心不全を伴った大動脈弁閉鎖不全症
 
e 心不全を伴った大動脈弁狭窄症

参照問題 C

35歳の女性。左手のしびれと全身倦怠感を主訴に来院した。数ヶ月前から微熱と全身倦怠感があった。
おにぎりを握ると左手がしびれ、冷たくなることを自覚している。意識清明。左橈骨動脈の拍動微弱、左鎖骨下動脈下に血管雑音を聴取する。
血液所見:赤沈96mm/1時間、赤血球360万、Hb10.2g/dl、白血球9,600、血小板46万。血清生化学所見:CRP5.6mg/dl(基準0.3以下)。抗核抗体(-)、CH50 54単位(基準30~40)。
 
この疾患について考えられるのはどれか。
 
【解答群】
 
(1) 失神発作
 
(2) 気管支喘息
 
(3) 回盲部潰瘍
 
(4) 腎性高血圧
 
(5) 腹部大動脈瘤
【解答選択】
 
a (1)、(2)、(3)
 
b (1)、(2)、(5)
 
c (1)、(4)、(5)
 
d (2)、(3)、(4)
 
e (3)、(4)、(5)
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