• このページをシェアする:
ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第三部 出会いと別れ 春 第六話 ジャスコ
2017.02.10

 ベイビー、ワン、決められたデイ、チューズデイ&フライデイ、ベイビー、ツー、決められたタイム、二〇時に、ベイビー、スリー、決められたもの、マイラブ、 マイラブ、ベイビー、フォー、決められた方法、僕の歌声で、ベイビー、ファイブ、決められた場所、このステーションで、僕の愛を届けよう!

 大地君のラップは…なんともいえない感じですが、毎週火曜と金曜日にガーベジ・ステーションで会うようになりました。
セブンに行ったのが二回目の出会いだったのですが、その後六回も会いました。今日は七回目のデート…ではなく、作業です。分別作業です。まあ、作業でもなんでも、男の人とふたりっきりで七回もあったのは、人生初です。
 そして、会わない時も、いつも彼のことを考えていました。
 妄想?
 それとはちょっと違います。妄想は勝手に未来のストーリーを作るのですが、今回は、ストーリーが浮かびません。大地君のにこりとする笑顔や、不思議なラップのリズムや言葉を思い、リピートするのです。
「つばきちゃんの仕事もオレの仕事も命をつなぐ仕事」
 この言葉には、ぐっときました。循環型の環境を創造しようと夢見ている大地君、人の命を救う仕事がしたいと夢見るあたし。
同じ方向をみているんだ、あたし達。
そう思うと、熱い気持ちになり涙が出てきそうです。
「つばきちゃん、偉いね、頑張り屋さんだね」
 大地君は、そう言って、恥ずかしそうにあたしとたまに、ホントにたまにですけど視線を合わせてくれます。浅黒い肌に白い八重歯が似合います。一度だけ、手を握られたことがあります。
 割れたペットボトルの破片が、グローブの上から突き刺さり「痛い!」と、叫んでしまったら、大地君が慌てて、あたしのグローブを取り、あたしの右手を覗き込みました。幸い、出血しておらず、皮膚が少し赤くなっていただけでした。
「大丈夫、痛くない? 大丈夫、病院行く?」
 大地君は、とても心配してくれて、あたしの右手を彼の両手で握ってくれました。二重まぶたの彼の視線があたしの手のひらに注がれ、暖かく大きな両手があたしを包み込みました。思わず、涙ぐんでしまい、言葉をうしなったのです。
「痛いの? 大丈夫、ごめんね、オレが気づいてやれなくて」
「………」
 そのシーンをあたしは、何度もリピートしました。
リアル恋の思いは、本当のストーリーの反復なのです、当たり前ですが。二十四にしてはじめて妄想との違いを知りました。

バックナンバー

著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)