• このページをシェアする:
ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第三部 出会いと別れ 春 第五話 広瀬すず
2017.02.03

 全国で五本の指に入る人気研修病院の関東敬愛病院。
医学生なら誰でも憧れる。私は思い切って見学にいったものの、やらかしてしまった。初日から遅刻するし、カンファでは突拍子もないことを発言してしまい…、大失態と落ち込むところだったが、
「いいねー、君、合格! うちで、お笑い担当やって。アハハアー」
と、総合診療科のロマンスグレーの安西部長からそう言われた。
褒められたのかいじられたのかわからないが、朝のカンファの後に安西部長について回ることになった。
「君、聴診器の使い方がイマイチだね」
 病棟回診で、患者さんの胸に私が聴診器をあてると、私の指を移動させ位置を訂正する。「ここはもっと軽く。群擦聞こえるから」と、聴診器の押さえ方を教えてくれた。
 周りの若いスタッフドクターが「なんで安西部長、今日張り切ってるの?」と小声で話していた。もちろん、私は緊張していたけど、気分が良かった。
 回診の後に、研修医や若いスタッフドクターが、ナースステーションで話しかけてくれた。
「ねえねえ、鈴木さん、広瀬すずに似てない? 見ようによっては」
 そうきたら、こう出るしかない。
「はい、よく芸やらされます」
「えー、やってやって!」
 もちろん、やったことはない。
私はそういうキャラではないが、もう、恥も外聞もない。こんな優秀な人たちの中では、お笑いでも担当するしか生きる道はない。
「では、広瀬すずの『シーブリーズ』のCMより」
 若干、白衣の集団は引いているのがわかったが、失うものはない。私は、ポケットから汗を拭きとるシートである『シーブリーズ』の代わりにティシュをとり出して、首の汗をぬぐうシーンを真似した。
 額から頬、うなじを拭いてゆく。時には、目を大きくして、広瀬すずの驚いた表情を真似たりする。

 ただ拭くだけの芸。それだけだが、なぜだかウケた。男性の研修医が、手を叩いて笑ってくれた。私も調子に乗って、ティシュを脇に持ってゆきゴシゴシやると、みんなが声を出して笑ってくれた。なんだ、この頭良い人たち、意外と単純なんだ。
「面白いねー、君、絶対、うちに来てね」
 安西部長から再度そう言われて午前中の実習は終わった。

バックナンバー

著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)