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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第三部 出会いと別れ 春 第二話 私のキャラって?
2016.01.13

 二月のある金曜日の朝、八時五分前。
 私は、かなり焦っていた。
「別館三階の教育センターってどこですか?」
 ここで、この人に聞くのは二度目だ。
関東敬愛病院の正面玄関の総合案内。スカーフを巻いたお姉さんは若干苦笑したような表情をみせたが、さすが患者満足度日本一の敬愛病院、教育が行き届いている。
「申し訳ありません、私の説明の仕方が悪くて。まずは、廊下の青い線にそって進まれて、CT室の脇の階段から二階へ上ります。左に進み突き当たりを右に進んだら職員専用の渡り廊下があります。ここで、インターホンで327を押して…」
無理。方向音痴の自分をもっと認識すべきだった。
この病院は、建て増し、建て増しで造られているので構造はかなり複雑だ。迷路そのもの。ネットで手に入れた医学生の案内パンフには「遅刻厳禁」と朱記されていた。
もう、ダメだな…。
 スカーフのお姉さんは満面の笑みを浮かべてとどめを刺す。
「大丈夫ですよ、ここで座ってお待ちください。教育センターの者が見学生を順番に実習する病棟に連れて行った後、ここで遅れた学生さんを拾うことになってますから」
見学する前から「遅れた学生」になってしまったか…。


 実は、一時間前に到着していた。
言い訳にならないが。すこし早すぎると思い、待合室の隅っこの方で爽健美茶を飲みながらスマホをいじったのが悪かった。
 母から「ご飯、ちゃんと食べている? 父さんが検診を受けるから明日はクリニックを休むので、帰ってらっしゃい。ご所望の消防士のお写真もあります」
(写真? 勘弁してよー)
 秀兄ちゃんから「小児クリニック改築の仕事が舞い込んだ。壁のデザイン担当になった。いい感じの壁のある小児科知らない?」。
(壁? 知らないよー)
 国対のレイちゃんから「マッチングの試験で、同級生からの推薦状があった方が有利らしくって、アオイちゃん書いてくれるよね」。
(推薦状? 嘘はつきたくないよー)
 つばきから、「ちょっと相談があります、バレンタインデーのことで」。
(バレンタインデー? 友チョコ? 義理チョコ?)
昨年、ハローワークで出会ったユリさんから「実は、敬愛病院辞めたんです。ごめんなさいね、力になれなくて」。
(ああー、残念。昼休みに会おうと思ったのに)
 俊介からのメールは相変わらず来ない。
気になるが、「距離を置く」ことを決めてしまうと、確かに時間と共に徐々に距離ができてゆく。日々彼を思う時間も少なくなってゆく気がする。自分にとっても、それくらいの存在だったのかもしれない。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)