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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第二部 実家 冬 第七話 クリスマス・イブ(BY つばき)
2016.12.09

 2016年のクリスマス・イブは、3連休の真ん中。
「まいったなあー。あたし、実家に3日間かー。関ジャニのコンサートもないしなあー。アオイちゃんは、いいよなー、俊介君とどっかいくんでしょ? 去年は、ディズニーだったよね。今年は、どこ? USJとかいいんじゃない? ハリーポッターのアトラクションあるよねー。いいな、いいなあー。
 あたしたち、ど真ん中世代だよね。たくさん呪文を覚えたよね。USJのアトラクション、杖で魔法が使えるらしいよ。
 真っ暗な中で、俊介君と手をつないでさ、『ルーモス』とか呪文を唱えたら、光がパッとついたりして、そこで盛り上がってさ…。
 いい感じになって、こんな感じで肩組まれたりして。キャ、恥ずかしー。いいな、いいなー、アオイちゃん」

 ロッカーで白衣を脱いでいるアオイちゃんは、「ちっ」と、舌打ちをして、ポケットから細長い打鍵器を取り出しました。
 そして、杖のように私に向けて叫びました。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!」
 呪文です。
 ハーマイオニーが得意でした。あたしは、白衣をパタパタさせながら、背伸びをします。体が宙に浮く呪文なのです。
「やめて、やめて、ハーマイオニー、体が浮き上がる」
 ハハハー、
 ハハハー。
 アオイちゃんとあたしは誰もいないロッカールームで大笑い。
 あー、楽しい。
 大学一年生からやっているあたしたちの秘密の芸です。
「楽しいね、アオイちゃん、ハリーポッタごっこ」
「でも、二十四にもなって、これやるってどうなの」
「研修医になったら、忘年会で、芸やるらしいよ。これ使えるよ」
「つばき、それはムリ。おじさん達知らないもん」
「でも、あたしたちの親世代が、指導医だから、意外と大丈夫よ」
 アオイちゃんとわたしは、ロッカーに白衣を入れて、病院の裏の出口から外にでました。冷たい風がびゅーっと吹いてきます。
「さむー。つばき、私んち、寄ってく?」
「いいの?」
「いいよ」
なぜ、聞き返すのかと、アオイちゃんの顔が曇ります。
「俊介君は?」
「それ、聞くかー。ステューピファイ!(麻痺せよ)」
あたしは、寒さのせいもありましたが、ぶるぶると震える真似をすると、アオイちゃんはまた笑ってくれました。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)