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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第二部 実家 冬 第一話 「神奈川県」町田市 (BY アオイ)
2016.10.28

 十月のEレジが終わった後、真剣に将来を考えるようになった。たぶん。
「自分が何をやりたいか、どうなりたいか考えること」
それが、就職先の病院、つまり、マッチングを成功させる一番の秘訣だと、コンシェルジュの菜々さんの言葉を思い出す。
 菜々さんとは、あれから、たまに会っている。
 私が国家試験対策委員長(通称、国対)で、マッチング関連の情報を学年に流す役目なので、菜々さんが情報を持ってきてくれる。県単位の病院説明会やマッチング関連セミナーなど、いろいろある。メールで済むことも多いのだが、私が「よかったら生協でお茶でもしません?」と誘ったりする。
 菜々さんとはとても話しやすい。女子バスケット部のキャプテンとか国対の委員長とかで、確かに私は、決断力のあるさばける女として見られているが、それは違う。どちらかといえば、やらされて演じているだけだ。そういうことを菜々さんは見抜いている。優柔不断な私を知っている。だから話しやすい。

「どうしたん? アオイちゃん、元気ないやん」
 彼女の関西弁は、なぜだか落ち着く。
 彼女は今や私の学年では頼りになる倖田來未似の「お姉さんコンシェルジュ」として若干有名である。
「そこ大事。『おばさん』って言うたら二度と来んで―」
 冗談をいいながら、菜々さんは、生協の食堂に入る。プラスチックの茶碗にお茶をなみなみと注いで窓際のテーブルに置く。白衣姿の私は飲みかけの爽健美茶をバックから出して、椅子を引いた。
「どうしたん? 元気ないやん」
 私は何もいえず、爽健美茶を口にした。
同級生に「バスケで燃え尽きた?」なんて、いわれることもある。
確かに、八月の東医体(東日本医科学生総合体育大会)が終わってから自分でもすこし変わったと思う。目の前から、スーッと何かが消えた。
「最後の試合が越谷市の体育館であったんですけど」
「うん」
「結局、負けたんです。ベストを尽くしたからいいんですけど。なんていうか」
「なんていうか?」
 試合のあと、体育館の裏の階段にひとり座り外を眺めていた。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)