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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第一部 東京 秋 第六話 ハニーちゃん☆Happy スタンプ BY アオイ
2016.10.21

猯詭撻▲イ瓩判颪い織┘鵐肇蝓璽掘璽箸虜埜紊琉賈腓鮟个圭えたときにすでに心は決まっていた。
十病院目の北海道の小さな病院の話を聞き終えたあと、つばきを探した。
 つばきは、会場の隅っこの無人のブースの前に白いビニール袋を両手にぶら下げて突っ立っていた。その顔は、いつもの無垢な何も考えてないような淡泊なものでなかった。明らかに、悩んでいた。眉間にしわを寄せていた。
「どうしたの、つばき。ヤス君に告白でもされたか」
 いつもの妄想ネタでの反応がない。どうやらマジのようだ。
「アオイちゃん、どうしよう」
 菜々さんも戻ってきた。
三人はがらんとした上五島病院のブースの椅子に腰かけた。つばきは、テーブルの隅にある赤い椿の一輪挿しをみながら、ことの顛末を話した。それは、ワイドショーに顔モザイクで登場する結婚詐欺の被害者のようだった。ハンカチを握り涙目のつばき。でも、悪いけど、聞いている方は、大爆笑してしまった。
「笑えるわー。ほんま、七坂先生って、おもろい」
「DVD二本とプレイヤー残して去る。返却しに上五島まで来い、っていうわけ。なんか、新種の詐欺みたい」
「ほんま。ナイスアイディア。この際、行ってみたら? 上五島までの旅費の一部補助があるみたいよ」
「えーっ、旅費がでる?」
 私は、食いつく。
「あれっ、アオイちゃんも興味あるん?」
「あります、あります、めっちゃ、あります」
 私の医大は、たぶん全国の医大は、おおきくカリュキュラムをここ数年で大きく変えた。実習の時間が大幅に増えた。なんかよくわからないが、アメリカの外圧のようだ。アメリカ並みに医学部の実習数を増やさないと国際的に医学部と認められないようになるらしい。
「それは、二〇二三年問題とかいわれているやつやね」
「なんですか、それ」
 つばきが聞く。
「七十二週以上実習しないと、医学部の国際認証がとれない」
菜々さんはよく知っている。その影響で、関東医科大も私たちの代から、五年の一月から実習が始まったのだ。
「つばき、知らないの? 一月に実習説明会で言ってたよ」
「そうだっけ」
 ポリクリという実習で、二週間から一か月間、外科とか内科とかいろんな診療科を指定された順番にまわってゆく。これが、約一年とちょっと続く。さらに、最後の三か月間は、自分で選べる。もちろん、大学病院の診療科から選んでもいいし、指定された大学の関連病院でもいい。だけど、自分で探して選んでもいいのだ。関東医科では、その制度をクリニカルクラークシップと呼んでいる。
「俊介は、カナダの大学で研修するらしいよ」
「そんなこと、できるの?」
 学年で、キャリアアップを目指す上昇系の人たちは、海外の病院にアプライしている。おそらく五名程度は行くだろう。沖縄や北海道の有名病院でクリクラする人も一〇名以上いるという噂だ。
「そんなん、いまどきどの医大でもめずらしくないわなあー。一般の大学は、もう十年くらい前からやってるし。今日来た学生さんの中にも、クリクラの行先を探しに来た人も少なからずいると思うわー」

 菜々さんは、七坂先生から聞いた上五島病院のクリクラ実習のやり方を話してくれた。
私は、スマホでホームページのチェックもしてみた。
「なかなか、意外と良さそうですね」
「ホンマ、ここエエよ」
 実は、私は心に決めたのは、こうだった。
 たぶん私は関東から出ない。
理由は、関東外に見学に行く時間的余裕がない。国対委員長という立場ではこれから山のような仕事が待っている。責任がある。やり遂げたい。もし関東から出るとしたら、クリクラで一カ月実習する病院が候補となるだろう、それしか関東外へ行く機会がない。
つまり私のマッチング作戦は、関東圏から二〜三病院+クリクラ病院を候補とする。関東は、いつも情報が入ってきて、行こうと思えばいつでも見学にいけるので、今日は、クリクラ先を決めたい。北海道もよかったが、菜々さんの「エエよ」に心が動かされた。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)