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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第一部 東京 秋 第五話 TSUBAKI瓠(BY つばき)
2016.10.14

 上五島病院のブースは、他の病院とまるで違います。
ナニコレっという感じです。
壁には、きれいな写真がずらりと飾ってあります。海、島、山、教会、サンゴ礁、お祭り、人の顔、ネコ、花々。テーブルには、カステラなどのお菓子や塩やうどんの麺がおいてあります。おそらく名産なのでしょう。
菜々さんは、ブースに座っている男の人と知り合いのようです。
「おひさしぶりです」
 うわっ、イケメンです。
うふっ。

だいぶ年上ですが、好みです。浅黒い肌と茶髪のロングヘア。細マッチョの腕をTシャツから出してます。サーファーショップのかっこいいおじさんのよう。
「おう、菜々ちゃん、元気やった?」
「はい、なんとか。どうですか、入りは? 七坂先生」
えっ、ドクター?この格好で? ダメージデニムに、ビーチサンダルはいてるよ?でも、わるくない、全ー然わるくない。素敵。
「ひま、ひますぎて、帰ろうかと思ってたとこ」
 先生は、大きなレンズのカメラを磨きながら、苦笑いしてます。
「ちょっと、やりすぎじゃないですか、これ」
菜々さんは、ブースの回りを指さしました。
「準備が間に合わなくてさ、役場の物産展係からまるごと借りてきたんだよ」
「なるほど。うわっー、これ、こないだ撮ってくれた写真ですか」
「そうそう」
「上五島のソフトコーラル、最高ですねー」
 その写真は、水中写真でした。
カラフルなサンゴ礁の中に魚が泳いでいて、遠くでダイバーが手をふってます。菜々さんは、うれしそうに、その写真を指さして、自分だと自慢してます。
「えー、ダイビングするんですね、菜々さん」
「ちょっとね」
菜々さんは、わたしを椅子にすわらせます。
「こちら、佐藤さん。関東医大の五年生」
あたしは、ぺこりと頭を下げて、若干緊張です。テーブルを挟んで七坂先生の目の前に座ります。
先生は、白い歯をむき出しにして微笑んでいます。なんか、かわいい、キュンって感じです。エントリーシートを渡すと同時に、あたしの小さな手は、がっしりと握られて、三回くらい上下にゆさぶられました。力強い〜。
「よろしく」
「あっ、こちらこそ、よろしくお願いします」
ああ海の男だぜーって感じ、カッコイイ!
ぜったい気のせいだとおもうんですが、ほんのりと磯のかおりがしました。そして、変な妄想が浮かびます。
遠い昔の若き日のイケメン七坂先生が、ケーシーを着て往診カバンをもって、砂浜を歩いています。いつのまにか、七坂先生がヤス君に入れ替わって…。あたしは、もちろん、その後ろを歩くのです。名指導医のヤス先生を頼って、あたしは島で研修しているのです。熱心に指導するヤス先生とあたしは、いつのまにか禁断の…。
あたしは妄想のプロです。ふけっている間にも、ちゃんと耳を働かせています。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)