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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第一部 東京 秋 第四話 すばらすぃ〜とですぅ〜 BY つばき
2016.10.07

 倖田來未のファンクラブ倖田組の組員、渡辺菜々さんは、あたしとアオイちゃんに声をかけてきました。東京ドームの近くの就職説明会=マッチング説明会&初期研修病院説明会のEレジ会場で。
彼女は見た目と違い、実は凄腕のコンシェルジュでした。
 でも、格好が…。
小麦色の肌に脱色したような茶髪で、体格は倖田來未の妹の…、名前なんだっけ…、あの人みたいに、若干ぽっちゃり系です。黒のスーツは締まって見えません。白のブラウスのボタンがボリューミーな胸で引きちぎれそう。腰で履いてるパンツは、たぶんアジャスターいっぱいいっぱいです。アラサー? でも、どうみても関西のおばちゃんが入っている感じがします。
菜々さんは微笑みます。

「塩飴。これスカーっとするんよ、よかったらどうぞ」
 やっぱ、飴を配るんだ! アオイちゃんは目をまるくしてあたしを見つめます。 うふっ。
あたしも笑いをこらえ塩飴を口にいれました。すっぱー。
くらっと頭を打たれるようなパンチの効いた味。
「『情熱』って味とおもわへん?」
 菜々さんは鼻歌を歌います。知らない曲。
「倖田來未? 関ジャニにも『情熱Party』ってあるんです」
 あたしも負けじと鼻歌。
アオイちゃんの目が、まんまるになります。
「そこで、張り合うなよ、つばき」
 やばっ、男言葉です。そういえば組員さんも男言葉です。
「くーみんのCD貸したろか?」。
首を横に振るあたしとアオイちゃんを組員さんは、休憩スペースの小さな丸いテーブルに座らせます。
リクルートスーツの医学生の群れが、病院のブースを物色しています。病院の先生たちは、「どうぞ話を聞いてください、いい研修ができますよ!」と、必死で誘っています。まさに、『情熱Party』。

 菜々さんが、私たちが回った病院ブースの感想を上手に聞き出します。こんなとき、普段のアオイちゃんは、あまり本音をいいません。賢く、用心深い女なのです。 「がんばったなー。よう回ってはるわー。すごいわー」
破顔一笑。そのあと、菜々さんは懐へ入ってきました。
「ところで、アオイちゃん、結局、どこが気に入ったん?」
「うーん、どこもいい病院とおもったけど、いまひとつピンと来ないって感じです」
びっくりです。アオイちゃんが初対面の人なのに、素直に話しています。
「それは、自分のせいちゃう?」
 おっとー、きますねー。アオイちゃん真剣なまなざし。
「私の?」
「そう。アオイちゃんが、何をやりたいか、どんな研修をしたいかはっきりしてないから、どんな話をきいてもピンとこうへんちゃう」
「そうか…」
「じぶん、将来、どんな医者になりたいん?」
 うまいなー。アオイちゃんハートつかまれたー。
「あたしですか? うーん、どんなって…。いい医者になりたい」
「いい医者ってなんやの?」
「うーん。患者さんから評判がよくて、ある程度なんでもできて」
「家庭医とか、総合医っていうこと?」
アオイちゃんは、飴をなめながら、倖田組員に告白するように語りだしました。あたしもはじめて聞く話でした。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)