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ハッピー♡マッチ
崎長 ライト  編集:杜 美樹  挿絵:羽野 ねねこ
第一部 東京 秋 第二話 ラブゲーム…ですか? (BY アオイ)
2016.09.23

 鈴木アオイ 関東医科大 五年生
私は、ネームタグに油性マジックで大きく書いて、ビニールのフォルダーに入れて、首にかけた。

ここは、東京ドームに併設されたプリズムホール。リクルートスーツ姿の医大生で埋め尽くされている就職説明会会場。医大生の場合は、就職=初期研修。内定=マッチングでマッチ。内定を勝ち取るためのノウハウを教えるマッチング説明会がいまからはじまる。同級生の佐藤つばきも列に並ぶ。
「ね、ね、アオイちゃん、お腹すかない」
「誰かさんが、遅れたからカフェできなかったのよ」
「ごめんなさい。あたし、何か買ってこようか?」
「じゃあ、すき家のマーボナス牛丼のなすび抜き」
「わかった。なすび抜きね」
「大盛りで」
「大盛りね」
 佐藤つばきは、出口に向かって走り出した。
―マジか。
あわてて追いかけて、「冗談だよ」と、連れ戻し列に並ばせる。
沢山の病院がブースを構えて学生を待ち構えている大きな会場を通り抜けて奥の小会議室に向けて列がつながっている。途中、目当てとしている関東敬愛病院と東日本赤十字病院のブースがあった。すでに学生でブースがあふれている。前に並ぶつばきは、通路に並ぶ病院の勧誘部隊から次々にパンフレットを受け取っている。ときどき引き込まれそうになるが、私が引き戻す。
「つばき、ダメ」
「あそこの病院、『カステラあります』だって、おなかすいたし」
 壁に花の写真が飾ってある変てこな病院を彼女は気にしてる。でも、時間はない。
「いいから、説明会を聞くのが先」
ガーナのミルクチョコレートの箱から一粒をつばきの口に入れてやり、自分も一粒ゆっくりと口の中で溶かす。

それにしても世話が焼けるよ、つばき。トロいし、すぐに騙される…。
「コンピューターのシステムが壊れてCBTが中止になる」とか、「解剖の教授がドラマの主人公になるので忙しいから解剖の試験が中止になる」とか、医学部特有の試験前のガス抜きのような冗談を本気にしたり。

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著者プロフィール

崎長 ライト
崎長 ライト
長崎大学病院 医療教育開発センター長 浜田久之(内科医)
長崎県生まれ。

医者になりたかったのに、なぜか高校時代は文科系で、読書好きのラガーマン。浪人、大学中退、放浪、バーテンダー…、予備校講師を経てやっと医大生。

医学生時代は、学習塾経営。学生結婚しました〜。学習塾は大繁盛しバブル時代を謳歌しましたが、自分の成績は悪く、最後の模試は105人中100番(汗)。いい仲間のおかげで助けられて、何とか卒業しました(涙)。
初期研修は大学病院で、その後様々な地域の病院で一生懸命働きました、勉強もしました。引っ越し回数20回以上!市中病院の総合診療科病棟の立ち上げ後、トロント大学に家庭医学と医学教育を2年間学びました。これが、人生の転機となりました。 研修医教育(≒マッチング業界)歴は、15年くらいです。ほぼ毎日、1年次研修医の外来研修を熱血指導(半分嫌がられてますが…)しています!

資格:博士(医学)、博士(教育)、消化器病専門医、プライマリケア学会専門医など
趣味:思案橋でハイボールを飲みながら、世間話。特に、ジャニーズや芸能ネタは好きです(笑)。
小説:『小さな世界平和』 (※長崎新聞社新春小説大賞佳作)
   『フルマッチ』

著者より一言:アクセスしてくれて、本当にありがとうございます!超〜、感謝です。
       ハッピーの積み重ねを感じる力が大事(長崎大学病院 医療教育開発センターWEBサイトより)